体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2015年8月号(421号)

ー お便り紹介 ー

優しい祖母の笑顔に高知県・Aさん 30歳代 女

今年で92歳になる祖母はアルツハイマー型認知症と診断され、約10年。
現在は特別養護老人ホームでお世話になっています。
要介護5で会話も成立しない事がほとんどですが、保育園児の子供たちを連れて面会に行くと、嬉しそうに私の弟や従兄の名前で呼びます。
子供たちは「名前違うよ」と不満気味ですが、祖母はニコニコ笑顔で語りかけます。
その姿は私が子供の頃に見ていた優しい祖母の笑顔そのもので、胸がいっぱいになります。認知症になっても心は生きていると思える瞬間です。

小さな幸せを感じて兵庫県・Bさん 60歳代 女

母が認知症になったおかげで「人は自分が必要とされていると思う時、幸福になる」という言葉を実感する毎日です。
おかげで主人との会話が増えました。大変なこともある忙しい日々ですが、「小さな幸せ」の大きさを知る毎日です。

国は在宅介護と言うけれど福井県・Eさん 60歳代 女

現在要介護5の母親を在宅で一人で介護しています。国は在宅介護ヘシフトする方針を打ち出しています。
しかし、実際の利用については不便があります。具体的には、土・日・祝日、早朝・夜間の営業をしている事業所が私の周りでは見当たりません。
事前の予約も必要です。緊急の事を考えると不安でたまりません。実際に1月に高熱を出して、救急車を呼ぶほどでもない時、時間外外来受診をしたくても車椅子なので、移動手段が見つかりませんでした。
3連休だったこともあり、4日目に主治医の往診になりました。また、急用で留守にしたくても、介護タクシー業者の営業時間外で困ることも多々あります。
こんな状態ですと、やはり施設へとなってしまいます。そこら辺りの谷間の事について、国はしっかりと施策を出していってほしいと願います。
介護保険事業者の営業が成り立つようにしてもらわないと、結局、利用者が困ってしまい、在宅介護を断念せざるを得ないことになるのではありませんか

ー 私の介護体験談 ー

「介護体験から得たもの『悲泣から感謝』」長野県支部

なぜ、自分ばかりがこんな苦労を…自殺すれば楽に

私は体調不良のため早期退職し、待っていたかのように父が心臓病で入退院を繰り返し自宅介護。終末期には軽度の認知症も発症、家族の介護も実らず9年前に父(93歳)を見送りました。 介護疲れからホッとした5ヵ月後位から、母の認知症(アルツハイマー)も進み始め、入退院・自宅介護(2年6ヵ月)が始まりました。 デイサービス、ショートステイ、ヘルパ一等の利用最中に転倒骨折し、数ヵ月入院し退院後は車椅子生活(要介護5)になりました。 家族が働いているため私一人が介護し、一日中母の部屋で過ごし閉じこもり状態、介護によるストレス、腰・膝の痛みも出て、「なぜ、自分がこんな苦労をしなければいけないのだ!」と自問自答した事が何回もあり、 母と共に自殺すれば、楽になれるだろう…と何回も思いましたが、母の笑顔を見るとどうしても出来ませんでした。 友人が電話で「今、死んでしまったらお母さんはどうなるの!?死んでも何もならないよ、皆が応援しているから!」の一言で我に返り、母にすまない、母のために頑張ろうと勇気をもらい、今でも友人に感謝しています。

近所の方々に感謝

へルパーの仕事をみて介護の参考にし、認知症について多少は知っていたが、県内の講演会・セミナー等で知識を得て、県市の審議会で協議したり、色々な資格も取得しました。 今はボランティアをして恩返しのつもりで色々活動しています。前から母が認知症だと近所に話しておいたためか、食事の差し入れ、話し相手等助けて頂き、大変感謝しています。

母を施設入所させて思うこと

今、後悔している事は究極の選択として母を施設入所(5年目)させた事です。 自分を取るか、年老いた母(97歳)を取るか悩みに悩みましたが、一晩に4~5回起こされる事が続き、これ以上続いたら家庭が崩壊してしまう、また自分の身体が限界で入所をやむなく決断しました。 母には「さみしい」思いをさせ、今でも「すまない」と思う気持ちで、いっぱいです。分かってくれているのでしょうか?

家族の願いと感謝

自分達の顔が判らなくなって2年半たちますが、今大声でさけびたい!産んでくれて、育ててくれてありがとう!もう一度生まれるなら母さんの子供でいたい!!ありがとう…と。 これは私達家族の心からの願いです!一日でも一時間でも、一分でも一秒でも長く生きてください!!可愛い曾孫も出来ました。 そして、今日もまた母の笑顔を見るため、施設に車を走らせる毎日です。

介護する人に一言

最後に、「心の切なさ・悲しみ・苦しみ」をはっきり口に出してさけぼう!! そして私は想う「運命は変えられるが、宿命は変えられない…」。そして「認知症でも心は生きている!!」と。 介護の苦しさ、辛さは介護を体験した者でなければ決して理解できないと思う毎日です・・・。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。