体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2016年2月号(427号)

ー お便り紹介 ー

両親への自責の念福島県・Bさん 60歳代 女

10数年前に認知症と思っていた父が倒れ、救急搬送され、悪性リンパ腫、脳腫瘍・・・余命数日と告知された時、受診をためらい続けた自分を長年責め続けました。
亡くなってから病名を母に教えても理解できず、だんだん穏やかだった母を混乱させ、認知症が進行したのでは・・・と思うこともありました。
友人たちに「貴女は頑張ったんだから・・・」と慰められても、頭では分かっているものの受け入れられず、家族の介護体験を公の場で話す事で、少しずつ心の整理がついた気がします。
当時のケアマネさんに再会し、「あの時は最善を尽くしたはず」の言葉にもう自分の人生を振り返っても仕方がないと思えるようになりました。

明日は我が身京都府・Fさん 50歳代 男

10年以上ケアマネージャーをしており、認知症の人を何人も援助してきましたが、まさか自分の母親が認知症になるとは!「明日が我が身」とはまさにこのことだと認識しました。
進行が速く、弟との二人暮らしが困難となったため、同居することとなり、家族の大変さを実感しております。

「家族の会」に支えられて秋田県・Jさん 70歳代 男

家内(アルツハイマー型認知症・要介護3)を介護して12年目になります。
苦しく、追いつめられた時期もありましたが、どうにか一つ一つ乗り越えてこれました。
これも「家族の会」の皆さんに支えられてのことであり、感謝でいっぱいです。

ー 私の介護体験談 ー

「ケアメン」は大変、それゆえの「幸せ」も福岡県支部

転機は転倒骨折

平成18年秋、変だと思っていたが知人に言われて妻の異変に気づき神経内科を受診。
アルツハイマーだと知らされショック。その年の暮れセカンドオピニオンでも認知症。
「あと10年位であなたの顔も判らなくなる」「治らない、ただ遅らせているだけ」と告げられた。それから認知症と妻への対応等の学習を始め、薬物療法がスタートした。
転機は、平成21年6月の「転倒による右脚骨折」であった。1ヵ月間の入院治療となるが、夜中に私を探して「徘徊」する妻は、3日目には「外泊」を求められた。次男の家で「在宅治療」となり、その後急激に生活力が落ちる。

「助けを求める」こと

ケアマネージャーはデイ、ショートステイ等の福祉サービスの最大限の利用、2階から居間にベッド、オール電化や介護環境を整えること等、私が仕事を続けられるように介護体制の工夫を教えてくれた。更に、家族会の方々等から負担軽減の為にいろいろな工夫を伝えてもらい、その1つがあらゆる機会で「助けを求める」ことであった。
まず家族に関わってもらう。地域の老人会、親和会等の町内会関係。福祉まつり等の社協行事。ボランティア連絡会や職場の方々、多くの方々に関わってもらった。多くの絆に助けられた。その絆は自ら求めて、つくることができたと実感する。これら一つひとつの些細な日常生活に「幸せ」を感じた。
それは「病苦」「失意」「絶望」のなかにも「幸せ」を求めることができると感じるのであった。
要介護4まで進み、フルタイムで働く私は朝食は外で軽食、8時までに妻を施設に送る。仕事後、夕食を済ませ、19時までには迎えの生活が続く。夜の会議には妻も同席していたがショートステイの利用が多くなった。しかし「お小水」はいいにしても「むらさき」(大便:かかりつけ医院での表現)の世話は大変だった。その頃は言葉では理解していても、対応に「余裕がない」「いらいら」の関わりだった。施設長は言った。「もういいんじゃないですか」と。今まで頑張ってきた夜の排泄は施設で、昼は逢いに来て手伝い、今までの逆バージョンはいかがですかと勧められ入居。

「介護」は大変。でも「幸せ」を感じる

入居して1年7ヵ月。これが最後かも、これで最後かもとハワイの旅、孫達とディズニーリゾートに家族旅行、名古屋、京都・・・と語りつくせない物語。
妻は2月26日が誕生日。娘(実は嫁だが勝手にそう思っている)からショートメールが。「今、歯医者から帰りました。お母さんの体調も良く、仮の下の入れ歯が出来ていたので合わせました!次回は来週火曜日の」、「11時半からです。では、明日誕生会で」。「明日は3時に晃一さんが施設に迎えに行きます。お父さんは、大丈夫な時間にいつでも来て下さいね」、「すいません!お父さんも迎えに行きますね」
酒好きだが仕事関係で日頃は飲酒しない。
明日は送迎付きで飲める。妻の誕生会なのに私の誕生会みたいだ。どんなに苦しく、嫌なつらい時でも私は泣かない。でも、優しさには弱い、泣き虫のこの頃の私。「介護」は大変、でもそれゆえの「幸せ」を感じるのは私だけでしょうか。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。