認知症基本法が施行されて1年、ようやく具体的な目標が語られるようになった今、期せずして認知症フォーラムドットコムのリニューアルが実現しました。20年近く前、このサイトがスタートした時期は認知症とは何か?ある小説をきっかけに、老いと共に落ちゆくアイデンティティへの恐怖ばかりが喧伝される社会でした。このサイトでは、発足当時から認知症になっても本人の本質は変わらない、むしろ周囲の意識が変わることが必要と撮影に協力してくれる人たちのおかげで前向きのメッセージを送り続けてこられたと考えています。
2006年認知症の人と家族の会は国際アルツハイマー協会主催の国際会議を京都で実施しました。その会議でのトピックは本人会議。認知症の本人たちが実名で自分が認知症であることをカミングアウトする画期的なものでした。オーストラリアから来日したクリスティンブライデンさんの「私は誰になっていくの」「私は私になっていく」と次々に上梓した本は、認知症本人の心の迷いと獲得していく希望が綴られ、私たちにとっても様々なことを考えるきっかけと示唆に富んでいました。
そして、今、日本でも認知症の本人、特に若年の当事者がさまざまな活動と発信力で社会を変えていく力になっています。また、社会も病や症状によって固定観念=偏見のある社会から、全てを受け入れ、共に考え生きていくことを肯定する方向に進み始めています。
そうした現在に足を置いて今を見つめ、語り合い、発信していこうというのがリニューアルの目標です。当事者にとっても、もちろん家族にとっても、さらに社会にとっても有益な情報=それはあくまでも本人の足元からの視点を忘れないで発信する責務を果たせるように努力することにあります。
認知症フォーラムドットコムは、国の政策やマスコミなどの動きに順応し、高みからの情報を提供するのではない、認知症の人・家族のリアルな暮らしの現場から、動画を中心に、また認知症だけでない、さまざまな偏見に晒されている多くの人、その視座からの発信を続けていこうと思います。
すこうぷ合同会社 横川清司