私は一応、社会福祉をテーマとして活動している。一応、とわざわざ断るのは、果たして私にその資格があるかどうか、いまひとつよくわからないのである。でもまあ、虚業の常として、あちこちから講演の依頼が舞い込む。認知症がテーマも多い。ある韜晦の中で、私はこんな風に切り出す。
「おれんじドア」が、もうひとつ、その扉を開こうとしている。NHKが、認知症の女性が名古屋市西区の専門部会の委員に任命されたことを報じた。
日本は「認知症にやさしい社会」、世界一なのだそうだ。「だそうだ」なんて言う言い回しにいささか複雑な受け止めがある。エッ、ホントかよ。まだまだ課題山積のはずだぞ。と言った感じか。
「あ、それが私の言いたかったことなんです!」丹野智文さんが、席から飛び上がるようにして言った。会場が沸いた。丹野智文さんが反応したのは、オーストラリアのケイト・スワファーさんの発言だった。
「言うは易し行うは難し」とはよく言われることである。「認知症でも安心の社会を」と言われれば、そりゃそうだと誰もがうなずく。
街に防災放送が響く。「◯◯町にお住まいの79才の高齢者の行方がわからなくなっています」文節ごとに区切ってワンワンと反響しながら郊外の住宅地にお知らせが流される。
1月16日の朝日新聞の特集に「認知症の自分を生きる」という記事が載った。このコラムでも取り上げた町田市の「認知症とともに歩む人・本人会議」や仙台での認知症の本人丹野智文さんの主宰する当事者活動の「オレンジドア」などが紹介された。
2月15日、シャンデリア輝く東京の英国大使館公邸で「日本・スコットランド認知症セミナー」が開かれた。これはスコットランド国際開発庁と東京都の間で認知症に関わる相互研究の覚書が交された事による。
今年もまた認知症をめぐる様々な動きが目立ちそうだ。4月には京都で国際アルツハイマー病協会の国際会議が開かれる。世界一の認知症社会である日本での開催だけに世界から注目されるだろう。
仙台で認知症の本人、丹野智文さんの「渡英報告会」が開かれた。世界初の当事者活動が生まれたイギリス、スコットランドから来日したジェームズ・マキロップ氏と丹野さんとでフォーラムを開いたことがきっかけとなって交流が生まれ、今度は丹野さんがスコットランドを訪問した。
友達が認知症になった。みんなの最初の集まりは、思い切り泣くことから始まった。誰もがその友達の異変には薄々気づいていたのに、もっと早くに診断できたのにと、悲しいというよりその悔恨に泣いた。…
6月にイギリスから認知症の研究者が相次いで来日した。エディンバラ大学のヘザー・ウィルキンソンさん。そしてジョゼフ・ラウントリー財団のフィリー・ヘアーさんだ。短い滞在だったが、おふたりとも大変精力的に各地の認知症当事者、関係者と交流し話し合いを重ねた。…
川崎の老人ホームでの殺人事件の衝撃は大きい。最も安心のくらしの場であるべき介護の現場になぜこんなことが起きたのか。元職員の重大犯罪にとどまらず施設の責任も当然追求されなければならない。同時にその背景にある介護の現場の構造的な課題に根本的にどう向き合うのか。...
「地域包括ケアシステム」という言葉を聞いたことがおありだろうか。一般の人にとってはなんとも馴染みない言葉である。「地域包括」ということ自体、どうにも座りの悪い日本語だ。 「ケアシステム」と言っても、自動入浴リフト装置ではないらしい。…
実はこのコラムでも5年前に「認知症の予防」について記している。今や認知症国家戦略のもと、認知症当事者の発信が続き、全国で地域包括ケアシステムが構築され、「認知症にやさしい社会」へと、世の認知症をめぐる環境は大きく変化しているのに、ドッコイ、「認知症の予防」については相変わらず赤ワインで認知症予防、なのだ。…
2017年に日本で「国際アルツハイマー病協会(ADI)国際会議」が開かれる。この国際会議は、毎年世界各地で開催され、2004年には京都で開催された。当時はまだ「痴呆」の時代だったが、ここから音立てるようにして日本の「認知症」状況は動いたのだ。…
認知症ってなんだ? といきなり問われたらどう答えるだろうか。生半可な知識がある人ほど混乱するかもしれない。「エート、まずアルツハイマーでしょ、記憶障害だな。そうそう、高齢者に多い。待て待て、若年認知症も忘れてはならないぞ」…
ベストセラーの「ペゴロスの母に会いに行く」でよく知られた漫画家の岡野雄一さんと対談した。認知症の母との日常がみずみずしいタッチの漫画で綴られ、映画化もされた。…
「認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らす」というのが、認知症の地域ケアの大きな狙いである。でもね、そのためには何をすればいいのか。地域の担当者は悩む。そりゃそうだ。地域で暮らす認知症の人には一人暮らしも目立つ。…
四国の認知症グループホームの大会で徳島に行ってきた。思うに、四国には福祉の原点があると思う。あの東京オリンピックの招致ですっかり有名になった「お・も・て・な・し」だって四国遍路でのお接待がその源流だろう。…