年齢を重ねると、「名前がすぐに出てこない」「何をしようとしていたのか一瞬忘れる」といった“もの忘れ”は、誰にでもある自然なことです。身体と同じように、脳も少しずつ年をとっていきます。こうした変化は、加齢によるごく普通の現象です。
一方、認知症は脳の働きに病的な変化が起こり、記憶や判断などに障害があらわれてくる状態です。加齢による“うっかり”とは異なり、「できていたことができなくなる」「経験そのものを忘れてしまう」といった違いがあります。
たとえば、加齢によるもの忘れでは「昼ごはんに何を食べたか思い出せない」ことはあっても、「昼ごはんを食べたこと自体を忘れる」ことはあまりありません。ところが、認知症では、その体験全体が記憶から抜け落ちてしまうことがあります。そして、本人としては「まだ食べていない」と感じているため、それが自然な反応になるのです。
このように、認知症のもの忘れは、日常生活に影響を及ぼすようになります。鍵や財布の置き場所を忘れるだけでなく、それを探すことや対応することが難しくなったり、手順の多い家事や仕事がうまくできなくなったりするなど、生活そのものに支障が出てくるのが特徴です。
もし、いつもと様子が違うと感じたり、「これまでと違うかも」と思うことがあれば、早めに専門の医師に相談してみることをおすすめします。早い段階で気づき、理解してもらうことで、自分らしい暮らしを続ける手立てを見つけやすくなります。