認知症って、どんな病気ですか?

最近、もの忘れが増えてきました。
昨日のごはんを思い出せなかったり、話の途中で「あれ? 何を言おうとしてたんだっけ」となることもあります。
でも、そんなとき「年だから仕方ないよね」と言われるのは、ちょっとつらい気持ちになります。私は、認知症という病気とともに生きているのです。

認知症は、年を重ねる中で誰にでも起こりうるものです。
脳の細胞が少しずつ減ったり、うまく働かなくなることで、記憶や判断力、できることが前よりも少しずつ難しくなってきます。
でも、全部ができなくなるわけではありません。私にも、まだできることはたくさんありますし、新しく覚えられることもあるんです。

「認知症」と聞くと、すべてを忘れてしまうと思われがちですが、そうではありません。
たとえば、子どものころに聴いた歌や、昔行った場所の記憶は今でも鮮明によみがえってきます。
家族の笑顔や、大切な人の声が心に響くことも、変わりません。

私は、アルツハイマー病というタイプの認知症と診断されました。
これは日本で最も多いタイプだそうです。ほかにも「血管性認知症」や「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」などがあると聞きました。
なかには、治療やお薬で改善するタイプの認知症もあります。そう知るだけでも、少し安心しました。

今の医学では、認知症を完全に治すことは難しいかもしれません。
でも、進行をゆるやかにしたり、暮らしやすく工夫したりすることはできます。
なにより、周りの人が理解し、温かく見守ってくれることで、私の日々はもっと穏やかで前向きなものになるんです。

大切なのは、できなくなったことばかりを数えるのではなく、できることや楽しめることを見つけていくこと。
家族や仲間と笑い合いながら、自分らしく暮らし続けること。それが、今の私の目標です。

認知症になっても、私は私です。
これまでの人生の積み重ねが消えるわけではありません。
これからも、誰かと手を取り合いながら、少しずつ、でも確かに、生きていきたい――そう願っています。