「認知症」というのは、病気の名前ではありません。ものごとを記憶したり、判断したりする力が弱まり、ふだんの生活に困りごとが出てくる状態のことをいいます。そうなる原因にはいくつか種類があり、その中でも多いのが「アルツハイマー病」です。
アルツハイマー病は、認知症を引き起こす病気のひとつで、日本では認知症のある人の半分以上がこのタイプだといわれています。他にも、脳梗塞などが原因になる「血管性認知症」や、「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」など、原因となる病気はさまざまです。
アルツハイマー病では、脳の中で神経細胞が少しずつ減っていき、特に記憶をつかさどる「海馬」という部分から小さくなっていきます。最近の研究では、βアミロイドというたんぱく質が脳にたまることが関係していると考えられています。こうした変化が、記憶や認識の力をゆっくりと弱めていくのです。
アルツハイマー病の初期には、「人の名前が出てこない」「同じことを何度も聞く」などの症状があらわれます。進行すると、「今が何月何日かわからない」「今いる場所が思い出せない」など、時間や場所、人の認識が難しくなることもあります。さらに体の動きにも影響が出ることがありますが、その進み方には人それぞれ違いがあり、10年以上、自立した暮らしを続けている人もいます。
アルツハイマー病を完全に治す薬はまだありませんが、進行をゆるやかにする治療や工夫もあります。早く気づいて、理解してくれる人とつながることが、安心につながります。