認知症は予防できますか?

はっきりとした予防方法はまだ見つかっていませんが、毎日の生活の中で体と心を健康に保つことは、認知症の発症を遅らせることにつながると言われています。

たとえば、アルツハイマー型認知症は、ある日突然はじまるのではなく、長い時間をかけてゆっくりと進んでいきます。最近では、認知症の症状がはっきり出る前の「軽度認知障害(MCI)」という段階が注目されています。この時期に、生活習慣を見直したり、運動などを取り入れることで、その先の進行を遅らせることができるかもしれません。

また、血管性認知症のように、生活習慣病と関わりの深いタイプの認知症もあります。高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満などは、脳の血管にも影響しやすいため、これらを防ぐことが認知症の予防にもつながります。栄養バランスのとれた食事や、無理のない範囲での運動を続けることがすすめられています。

認知症のリスクを下げるために、いま注目されているのが「デュアルタスク(2つのことを同時に行う)」という工夫です。たとえば、「歩きながら計算をする」「しりとりをしながら体操をする」といったように、体と頭を同時に使うことが、脳にとってよい刺激になると考えられています。

食べ物では、青魚に含まれるDHAやEPAといった栄養素が、脳の健康を保つのに役立つと言われています。ほかにも、脳トレや手先を使う趣味、人との交流など、楽しく続けられることを見つけていくのも大切です。

今はまだ、認知症を完全に防ぐ方法はありませんが、「いま、自分にできることを大切にする」という気持ちで日々を過ごすことが、心の支えにもなります。年齢を重ねても、自分らしい暮らしを続けるための一歩として、ゆるやかに生活を見直していくことが、希望につながっていきます。