認知症の中には、原因となる病気を治療することで、症状が改善したり、元の生活に戻れるケースもあります。たとえば、頭を打った後に起こる「慢性硬膜下血腫」は、たまった血を取り除く手術をすれば、症状がよくなることがあります。また「正常圧水頭症」や「甲状腺機能の低下」「脳腫瘍」などが原因の場合も、適切な治療によって改善が期待できます。
こうしたタイプの認知症はごく一部ではありますが、「治る可能性がある」ため、症状に気づいたときはできるだけ早く医療機関を受診することが大切です。早く気づくことで、治療の効果も高まりやすくなります。
一方で、もっとも多い「アルツハイマー病」や「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」などは、現時点では完全に治す方法は見つかっていません。ただし、進行をゆるやかにする薬があり、症状を軽くしたり、できることを長く続けられるよう支えることは可能です。
たとえばアルツハイマー病では、いくつかの抗認知症薬(塩酸ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、塩酸メマンチンなど)が使われており、症状の進行を半年から1年ほど抑えることができると言われています。また、脳梗塞が原因の「血管性認知症」も、再発を防ぐことで悪化を防ぐことができます。
「治る/治らない」という視点だけでなく、「その人が自分らしく暮らし続けられること」を大切にすることが、私たちにできる支え方です。認知症と診断されたあとも、安心して暮らしていく方法はたくさんあります。