認知症の人と家族の会 会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」 2014年8月号(409号)

ー お便り紹介 ー

胸ときめいた恩返しの一日香川県・Yさん 女
主人は認知症でショートステイにお世話になっています。ある日の午後4時頃、自転車に乗ってこられた88歳のおじいさんが、私、長男、次男が仕事をしている前で手帳を何度もめくっていました。近づくと、帰る道が分からなくなったと。一人住まいで子供さん達は県外に住んでいるとの事。さっそく長男が手帳を見せてもらい、民生委員さんの電話番号を見つけ、みんなひと安心。自転車で2時間の距離でした。民生委員の方と連絡しあって、次男が車に自転車を乗せておじいさんを送って行きました。長男日く「お父さんはもっとみんなに迷惑を掛けてきたのだからこの位のことへっちゃらだ・・・」「恩返し、思返し・・・」と言いながら仕事にとりかかりました。この日の長男、次男を頼もしく思い、私も久しぶりに胸がきゅんとなった一日でした。翌日、息子さんからお礼の電話がありました。

大好きな母さん、また行きます青森県・Iさん 50歳 女
認知症の母は老健に入所してから半年以上。面会に行く度にいろんな母に会えます。家にいた時と今、違うところが2つあります。1つはどっぷりと認知症になり、被害妄想がなくなって楽しそうにしている事。2つ目はそんな母は私をわからなくても、ほほえみながら話ができ、帰り道がつらくなくなった事。大好きな母さん、また行きます。

悲しそうな顔の父 (ぽーれぽーれ6月号「胃ろうのお便り」を読んで)大分県・Yさん 59歳 女
「胃ろう」のお便りを読んで涙が出ました。在宅介護中の認知症の父が誤嚥性肺炎をおこし入院しましたが、バタバタと状態が悪化し、寝たきりとなり経口摂取が不可能となりました。「延命処置は希望しません」と誓約書にサインしましたが、鼻腔栄養チューブでの注入をやめる(看取り)の決心がつかず、結局胃ろうをお願いしました。最初は嚥下訓練、リハビリ等していただいていましたが、効果なしと言われ退院となりました。現在要介護5にて介護施設にお願いしています。瞳と手が少し動くだけ、20本以上白歯が残っています。父の耳元で「せっかく歯があるのに食べる事も、話す事もかなわないで何の楽しみがあるのかなあ?」と聞くと悲しそうな顔をします。こちらの言っている事は時々わかる父の顔を見ていると「これで、良かったのか?」と自問自答している自分がいます。