まだ、早い?早くない?ケアハウス入所の選択

NPO法人認知症の人とみんなのサポートセンター 沖田裕子

私は、3月末に母を亡くし、6月に母の入所していたケアハウス(軽費老人ホーム)の部屋に、入所しました。

ケアハウスとは、60歳以上で独居に不安のある人が入所できる所です。私は去年60歳になり、今まで脳梗塞で入院を2回しており、一人暮らしに不安があったところ、母が亡くなってストレスの為か、心筋梗塞にもなり入院しました。いずれも、自分で自分の異変を察知し、自分で入院し治療ができました。後遺症もなく退院できました。しかし、病院で「一人暮らしですか?」「誰か連絡できる人は?」と質問され、この質問にいつまで自分で答えられるのだろうと思いました。

脳梗塞、心筋梗塞と聞くと、倒れるとか、胸が痛くなり蹲るなどのイメージがあるかもしれませんが、私の場合、脳梗塞の時は呂律がまわらないような気がして自転車で受診しそのまま入院、心筋梗塞の時は圧迫感がいつもより長く続くので#7119に連絡して、救急車要請を勧められ、歩いて救急車に乗りました。医療的知識があったのと、体の変化に敏感だったおかげです。脳梗塞も心筋梗塞も、血栓がつまるのですから、親戚みたいな病気ですが、死因の三大疾患の2つを経験したのですから、見守りのある環境にいたいと思う気持ちに強くなりました。

母もケアハウスに自分の決断で入所しました。認知症が始まっており、苦手な調理は益々苦手となり、食事は朝「パン」昼「うどん」夜「ごはん」と炭水化物が増え、血糖値が上がっていました。入所により、毎日の規則正しい食生活で、血糖値は改善しましたし、食事作りから開放された母のケアハウスの評価は、「三食昼寝付きで満足」でした。私もミニマムな母の生活が良いなあと思っていました。母の入所までのことは改めて書くことにします。

母は予想していなかった最期で、1か月くらいの入院で亡くなりました。原因は、肝硬変による食道静脈留の破裂でした。吐血する数日前まで一緒に外食し、当日も行事食を食べていたので、まさかの吐血でした。よくケアハウスの職員さんが見つけてくれたものです。後日、部屋の掃除に行き、死んでいてもおかしくないくらいの吐血量だったと知りました。1回目の入院は、10日くらいで一旦退院でき、階下の特養にショートステイする形で施設に戻りました。ケアハウスは、介護保険では、在宅になるのです。この時は、トイレまで歩いて行けましたが、翌日、微熱と酸素の値が低下して再入院となりました。そこからは、再吐血、結紮、輸血といろいろ治療してもらいましたが、肝硬変は治るものではなく、循環しなくなった水分もお腹や肺に溜まるようになり、最期は吐血による死亡でした。

2回目の入院の1か月の間に、私の血圧は上がり降圧剤を増やしてもらっても、動くと胸の重苦しさが生じ、循環器を受診することになりましたが、心電図、心エコーも異常なしでした。この時の受診は、すぐには症状改善には役立ちませんでしたが、救急車で運んでもらう時に受診歴があったのでスムーズに搬送してもらえました。ですから異変があったら、主治医に相談し、救急対応のできる病院に紹介しておくことをおすすめします。脳梗塞も心筋梗塞も、急性期の対応が重要ですから、重症度にかかわらず、出血や異常値があれば、帰してもらえません。

そこで、急な入院に持っていくお勧め物は、おくすり手帳、水筒、携帯充電器だと思います。タオルや病衣はレンタルできます。他のものは落ち着いたら誰かに持ってきてもらうこともできますが、水筒があれば、何度も看護婦さんに水を持ってきてもらわなくてもすみますし、保温効果のある物なら冷たいものは冷たく、温かい物は温かく飲むことができます。変に入院に慣れてしまいましたが、その度に、周りの人に心配をかけますし、孤独死の問題はマンションの課題にもなっています。

「もし介護が必要になった時にどんな介護を望みますか」と介護学を履修する学生さんに、家族にインタビューしてもらうという課題をずっと出していましたが、家族からは「迷惑をかけたくない」という回答が多くありました。家族や知人をわずらわせたくないという思いなのでしょう。でも人間は生まれてからも誰かの世話にならなければ、育つことさえできません。死んでいく時も、誰かの世話にならなければいけません。そして、この高齢化社会の中で、私のような独居の者が増えると、同意が重要になる場面で、意思を代行できる家族がいないと、後見人が必要になります。でも認知症等でなかったら、それも難しい。そして、認知症になってからでは、任意後見を本人が希望しても決断できないで、数年過ぎても手続きできない人をたくさん相談で聞いてきました。 

母は生前「私はあんたがいるけど、あんたはどうするの」と心配していました。ですから、病気と母の死をきっかけに見守りのある環境に早めに、自分の身の回りを整理して入所しようと決めました。

この入所、早いかどうか、、、私は身の周りを整理するきっかけになり、もらって欲しい物を、もらってもらいたい人に渡すことができて、持ち物が少なくなり、良かったです。まだ仕事をしているので、事務所に本などは移動して必要な人に活用してもらえる環境も幸いしました。

もう一つの大きな入所の理由は、不動産の処分がなかなか大変と知ったことでした。一昨年亡くなった友人が、遺言で自分の自宅の売却金をユニセフに寄付したいと希望し、そのために私が遺贈先になったのですが、売却後も私の確定申告や所得税が明らかになる時期を待ってなかなか寄付出来ず、事務処理を依頼された弁護士さんにもかなりお手数をおかけすることがわかりました。
そんな経験から不動産を売却する手間も「迷惑をかけたくない」のひとつでした。

つづきは後日掲載予定!

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