認知症の人に対する話し方のコツ

当事者の声

わたしたちの「聞く力」「話す力」を、やさしく支えてください

~ゆっくり、わかりやすく、心をこめて話してくれるとうれしい~

年を重ねて、認知症になってから、言葉のやりとりが少しむずかしくなったと感じることがあります。
話が早すぎたり、一度にたくさんのことを言われると、何が何だか分からなくなってしまって、返事ができなかったり、言葉に詰まってしまったりするのです。

そんな時、ゆっくりと、わかりやすく話しかけてもらえると、とても安心します。
一つひとつ、ていねいに言ってもらえるだけで、「ああ、自分のことをちゃんと考えてくれているんだな」と感じて、心がほどけていきます。

たとえば、「手を洗いましょう」とだけ言ってもらえると、すんなり行動に移せます。
でも、「外から帰ってきたし、手が汚れているから、洗いましょうね」とたくさんの情報がいっぺんに来ると、頭の中が混乱して、結局どうすればいいのかわからなくなってしまうんです。

昔ながらの言葉や、懐かしい言い回しで話しかけてもらえると、ふと心がほぐれます。
たとえば、「スマホ」よりも「電話」と言われたほうが、すぐにイメージできますし、地元のなまりで話しかけられると、まるでふるさとに帰ったような気持ちになります。

わたしたちは、昔の記憶のほうが今よりもはっきり残っていることが多いです。
若いころの写真や、懐かしい遊び、好きだった歌の話をされると、自然と笑顔がこぼれて、会話がはずみます。
そうしたやりとりは、わたしたちの気持ちを明るくしてくれて、脳にもよい刺激になるんです。

どうか、話しかけるときには、「何を言いたいのか伝わるかな」「わかりやすいかな」と少しだけ想像してみてください。
そして、わたしたちがことばを探しているときは、急かさずに待ってくれるとうれしいです。
そうやって、心のキャッチボールができると、わたしたちは「まだまだ大丈夫だ」と思えて、前を向いていけます。