認知症の人はなぜわがままを言うのでしょうか

当事者の声

わがままなんかじゃない。ただ、不安だっただけなんです 

~何をされるのか、わからなくて怖くなることもあります~

よく、「わがままだね」と言われてしまうことがあります。
たとえば、介護されるのを嫌がったり、デイサービスに行きたくないと渋ったり。
でも、それは本当に「わがまま」なのでしょうか?

自分でも、なぜそんな気持ちになるのかわからないことがあります。
でも、できていたことができなくなったり、思うように言葉が出てこなかったりすると、心の中ではとても混乱しています。
だからこそ、「何をされるんだろう」「恥をかくのではないか」と、必要以上に身構えてしまうんです。
これは、自分を守ろうとする精一杯の反応――防衛本能のようなものなんです。

たとえば、財布が見つからなくて不安でいっぱいのときに、「自分でたんすに入れたでしょう」と言われると、
「忘れていた自分が悪い」と思うよりも、「そんなふうに責めないで」と思ってしまいます。
能力が落ちていることを自覚するのは、想像以上につらいことです。

だから、介護する人がやさしく「これから着替えましょうね」「さっぱりして気持ちよくなりましょう」と、
見える位置から、短い言葉でゆっくりと話しかけてくれると、私たちは安心します。
自分が何をされるのかをあらかじめ知っていれば、不安にならずにすむからです。

わがままではなく、「不安」や「恐れ」が心の奥にあって、それが強い反応になって現れてしまう――
その気持ちをわかってもらえたら、どんなに救われることでしょう。

私たちも、できることなら「ありがとう」と笑って過ごしたいのです。
ただその日によって、心の余裕が持てないだけ。だからこそ、そっと寄り添っていただけると嬉しいです。