高齢になってからの「もの忘れ」や「元気のなさ」を見て、「認知症かもしれない」と心配になる方も多いかもしれません。しかし、そうした変化の背景には、うつ病が関係していることもあります。うつ病も認知症も、記憶力の低下や意欲の減退など、似たような症状が見られるため、見分けが難しいことがあります。
特に近年では、60代や70代になってからうつ病を発症する人も増えており、本人も家族も気づかないまま「認知症かもしれない」と誤解してしまうことがあります。逆に、認知症の初期症状として抑うつ的になることもあり、「うつ病と思っていたら認知症だった」というケースもあるのです。
うつ病と認知症の違いのポイントは次の通りです:
うつ病では、気分の落ち込みや不眠、食欲低下、「死にたい」といった悲観的な考えが強く現れます。自分の不調に対する自覚があり、「なんとかしたい」という気持ちを持つことが多いのも特徴です。
一方、認知症では、症状が少しずつ進行し、初期には不安や落ち込みがあっても、やがて自分の状態を自覚しにくくなっていきます。「死にたい」といった強い悲観よりも、意欲の低下や生活の混乱が目立ってくる傾向があります。
また、うつ病は適切な治療によって回復が望める病気です。抗うつ薬やカウンセリングで、記憶力の低下なども改善していく場合があります。認知症と診断された場合も、症状の進行を遅らせる治療が可能です。
どちらの場合も大切なのは、早めに専門の医師に相談することです。本人だけでなく、家族やまわりの人が違いを理解し、必要な支援につなげることが、安心できる生活を支える第一歩になります。