伝える内容と、その伝え方が重要。告知後のサポートも大切です。
告知することでできること
認知症と診断されたことを、本人に伝えるべきかどうか――それはご家族にとって、簡単に答えが出せる問題ではありません。「わざわざ本人を不安にさせなくてもいいのではないか」「病名を伝えることで、かえって落ち込ませてしまうのではないか」と思う方も少なくないでしょう。けれど、本人の尊厳を守るという視点から見ると、病気のことを伝えることには大きな意味があります。自分の身に起きていることを知る権利を持ち、これからの人生をどう生きるかを自ら考え、選んでいくためには、正しい情報と、それを伝える誠実な姿勢が不可欠です。
告知することでできること
認知症であることを伝えられた本人は、その時点で感じる不安や戸惑いを抱えながらも、今後の生き方について考える機会を持つことができます。まだ判断力のある段階であれば、今後どのように暮らしていきたいか、どのような支援を望むかといった希望を、周囲と共有することができます。それは本人にとっての安心につながり、ご家族にとっても、支援体制や介護の準備を落ち着いて進めるための大切な時間を得ることになります。
また、治療や介護においても、本人の理解と協力を得ることができれば、より本人らしい暮らしを支えることが可能になります。告知は「病名を告げて終わり」ではなく、これからをどう一緒に歩んでいくかを話し合う出発点になるのです。
伝え方と「その後」が大切です
もちろん、どのように伝えるか、そしてその後どのように支えていくかは非常に重要です。本人の性格や理解力、その時の体調や精神状態に配慮しながら、医師や看護師、家族、必要であれば介護職や心理士などが連携し、丁寧に向き合っていくことが求められます。
告知によって生まれる不安や悲しみにどう寄り添うか、どんな支えを提供できるかが、その後の生活の質や本人の気持ちに大きく影響します。伝えるという行為は、情報を渡すだけではなく、「あなたのことを大切に思っている」というメッセージでもあります。だからこそ、告知後に「一緒に考えていこう」「ずっとそばにいる」という安心を届けることが大切なのです。
本人抜きで進めないことも大切
治療や介護の現場では、ついご家族が中心になって物事を決めてしまう場面が見られます。しかし、本人の意見を聞かずにサービスの選択や生活の方針を決めてしまえば、本人の望まない支援になってしまうこともあります。
たとえ判断力が徐々に低下していく段階にあったとしても、できる限り本人の声に耳を傾け、意思を尊重しながら支援を整えていくことが、尊厳を守る支援の基本です。本人を一人の「生活の主体」として尊重し続けることこそが、「認知症とともに生きる」という希望を実現する第一歩となります。