私は一応、社会福祉をテーマとして活動している。一応、とわざわざ断るのは、果たして私にその資格があるかどうか、いまひとつよくわからないのである。でもまあ、虚業の常として、あちこちから講演の依頼が舞い込む。認知症がテーマも多い。ある韜晦の中で、私はこんな風に切り出す。
先日、精神科医の斎藤環さんと対談した。斎藤環さんの専門は思春期・青年期の精神病理で、斎藤さんは日本でいち早く「引きこもり」に注目し、その支援と対策に取り組んできた。
認知症の治療薬開発のニュースは出ては消えている。開発のめどが立った、というものやら、開発の道が拓けたといったニュアンスのものがほとんどである。創薬開発の難しさと巨額のコストもあり、門外漢が期待する「成功!」という見出しはそう簡単に踊るものではないらしい。...
いささか唐突ながら、キャロル・キングのタペストリーという曲をご存じだろうか。70年代の大ヒット曲だ。世代的には、これ聴くだけでたちまち「あの時代」が彷彿とする(泣く)。いや、別に回想法の話をするわけではない。…
認知症ってなんだ? といきなり問われたらどう答えるだろうか。生半可な知識がある人ほど混乱するかもしれない。「エート、まずアルツハイマーでしょ、記憶障害だな。そうそう、高齢者に多い。待て待て、若年認知症も忘れてはならないぞ」…
認知症国家戦略の冒頭に今後の認知症の人の推計がある。2025年には認知症の人は約700万人。65才以上の5人に一人となる(現在は7人にひとり)。ここには誰もが認知症になる時代がくっきりと浮かび上がっている。…
「認知症のいちばんの予防策は、認知症になる前に亡くなることです」と、ある専門医は言った。ちょっとブラックだけど真理でもある。ここには、高齢化で誰もが認知症になりうること、そして今のところ確かな予防策はない、という二つの真理が込められているからだ。…
世に「水俣学」というのがある。これは長年にわたって水俣病の被害者と関わって来た医師の原田正純さんの提唱する新しい学問だ。医学など単独の学問だけでは水俣病は解決できなかったという原田さんの痛切な思いから始まった。…