10年ひと昔というが、日々のくらしの中に浸かっていると気が付かなくて、ある時間を区切ってみるとその変化にびっくりすることがある。例えば、まだヨチヨチ歩きの赤ちゃんだと思っていた近所の子供が、いつの間にか小学生になっていたりする、というふうに…
川崎の老人ホームでの殺人事件の衝撃は大きい。最も安心のくらしの場であるべき介護の現場になぜこんなことが起きたのか。元職員の重大犯罪にとどまらず施設の責任も当然追求されなければならない。同時にその背景にある介護の現場の構造的な課題に根本的にどう向き合うのか。...
認知症の治療薬開発のニュースは出ては消えている。開発のめどが立った、というものやら、開発の道が拓けたといったニュアンスのものがほとんどである。創薬開発の難しさと巨額のコストもあり、門外漢が期待する「成功!」という見出しはそう簡単に踊るものではないらしい。...
いささか唐突ながら、キャロル・キングのタペストリーという曲をご存じだろうか。70年代の大ヒット曲だ。世代的には、これ聴くだけでたちまち「あの時代」が彷彿とする(泣く)。いや、別に回想法の話をするわけではない。…
「地域包括ケアシステム」という言葉を聞いたことがおありだろうか。一般の人にとってはなんとも馴染みない言葉である。「地域包括」ということ自体、どうにも座りの悪い日本語だ。 「ケアシステム」と言っても、自動入浴リフト装置ではないらしい。…
実はこのコラムでも5年前に「認知症の予防」について記している。今や認知症国家戦略のもと、認知症当事者の発信が続き、全国で地域包括ケアシステムが構築され、「認知症にやさしい社会」へと、世の認知症をめぐる環境は大きく変化しているのに、ドッコイ、「認知症の予防」については相変わらず赤ワインで認知症予防、なのだ。…
2017年に日本で「国際アルツハイマー病協会(ADI)国際会議」が開かれる。この国際会議は、毎年世界各地で開催され、2004年には京都で開催された。当時はまだ「痴呆」の時代だったが、ここから音立てるようにして日本の「認知症」状況は動いたのだ。…
私達の暮らすこの社会は、世界一の「認知症社会」であり「認知症国家」であり、そして現在と近未来は「認知症時代」である。そのことは間違いない。で、だから?…
認知症ってなんだ? といきなり問われたらどう答えるだろうか。生半可な知識がある人ほど混乱するかもしれない。「エート、まずアルツハイマーでしょ、記憶障害だな。そうそう、高齢者に多い。待て待て、若年認知症も忘れてはならないぞ」…
認知症国家戦略の冒頭に今後の認知症の人の推計がある。2025年には認知症の人は約700万人。65才以上の5人に一人となる(現在は7人にひとり)。ここには誰もが認知症になる時代がくっきりと浮かび上がっている。…
この1月に認知症国家戦略が発表された。なんせ、国家戦略である。その大げさな響きもあって、どうも馴染めないところがないではない。でもね、この「戦略」をどうとらえるかは、この社会のこれからをどうするかに深く関わる。…
ベストセラーの「ペゴロスの母に会いに行く」でよく知られた漫画家の岡野雄一さんと対談した。認知症の母との日常がみずみずしいタッチの漫画で綴られ、映画化もされた。…
「あのね、とてつもなく役に立たないという本を出す、というのはどうよ」「は?」眼鏡の奥の怜悧な眼差しがキラリと光って、その女性編集者はボールペンでトントンとテーブルを叩いた。…
「認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らす」というのが、認知症の地域ケアの大きな狙いである。でもね、そのためには何をすればいいのか。地域の担当者は悩む。そりゃそうだ。地域で暮らす認知症の人には一人暮らしも目立つ。…
認知症といえばアルツハイマーを思い浮かべるだろう。確かにアルツハイマー型認知症が割合としては一番多く、認知症の原因疾患の半分を占める。最近、レビー小体型認知症が「第二の認知症」とも呼ばれて注目されている。…
四国の認知症グループホームの大会で徳島に行ってきた。思うに、四国には福祉の原点があると思う。あの東京オリンピックの招致ですっかり有名になった「お・も・て・な・し」だって四国遍路でのお接待がその源流だろう。…
沖縄で認知症フォーラムを開く。「夏のオキナワ!」「オキナワっすね」スタッフはコソコソと言い交わす。「リゾートがオレを呼ぶ」「チャポッくらいは海、入れますかね」「海水パンツ持ってこ」降り立った那覇空港は、「ザマミロ」といった感じの土砂降りだった。…
津軽はもう冬支度だった。道沿いには防雪柵が秋の深まりに追い立てられるように慌ただしく組み立てられ、その中を私は五所川原市のグループホーム「祥光苑」に向かっていた。このグループホームでは回想法を積極的に取り入れている。…
「認知症フォーラム」は全国各地で開いている。どの会場も超満員、それぞれの地域の人々の思いがぎっしり詰まっていて、こちらはその思いに励まされ力づけられる。…
目を上げればいつだってそこに噴煙を上げる桜島がある。錦江湾に浮かぶ桜島を眺めて育てば、この私だって気宇壮大なヒトカドの人物になったかもしれないではないか。「ならないならない」と隣りの運転席のヨコカワは即座につぶやくが…