

人間は誰でも、歳をとると体力が落ちていきます。それと同じように、人間の知的能力は、40歳から50歳あたりをピークに徐々に下降線をたどるようになります。歳をとることによって新しいことが覚えにくくなったり、うっかり物忘れをしたりするようになるのは、多かれ少なかれ誰にでも起こることです。しかし、認知症は脳の機能の病的な障害によって起こる体の病気。自然な老化現象とは、はっきりと違うものです。
例えば、ふつう私たちは、朝食に何を食べたかを忘れてしまっても、朝食を食べたこと自体を忘れることはありません。しかし、認知症の場合は「食べた」という体験自体がまるごと記憶から抜け落ちてしまいます。初期のうちはそうした物忘れを自覚して不安になる人もいますが、症状が進むにつれて、忘れたことに対する自覚がなくなり、「まだ食べていない」「食べさせてくれない」などと言い張るようになるのも特徴です。