動画
  • 医療

高齢者の虚弱と漢方

概要

ー part 1 フレイルと漢方 ー


東北大学病院・漢方内科准教授の髙山真先生に「高齢者の虚弱と漢方」について聞くシリーズ。

人間は加齢とともに気力や体力、食事の摂取能力などさまざまな機能が衰え、「フレイル(虚弱)」という状態に陥ります。認知症で見られる記憶力や判断力といった脳の機能の衰えも、フレイルの一つ。
そのほか免疫力の低下や生理機能の低下など、ありとあらゆるフレイルが、健康寿命(寝たきりにならずに生きられる期間)の障害になっています。

西洋医学はそれぞれの症状に対して薬を処方するため、症状が多ければ多いほど薬も増え、逆に体調を崩してしまうことも少なくありません。
一方、漢方はからだ全体のバランスをととのえる医学。複数の生薬で構成されているので、さまざまな成分が効果を発揮し、バランスのいい状態に戻してくれるのです。(6:49)

 

ー part 2 気・血・水のバランスと生薬 ー


2回目は漢方がどのような仕組みで効果を発揮するのか、作用機序を説明します。

漢方は「からだは『気』『血』『水』という3つの要素で構成されている」という独自の考え方で、不調の原因となっている3要素のバランスの乱れをととのえて、症状の改善を目指します。

治療に使われる漢方薬は、植物など自然の生薬を組み合わせたもの。もともとはこれらを煮出して飲む煎じ薬でしたが、煎じ薬を加工したエキス剤が登場しています。
「経験上」効果があるとされて普及した漢方ですが、20年ほど前からは臨床試験などを通してエビデンスが蓄積され、各診療科の診療ガイドラインにも取り上げられるようになりました。

高齢者の分野では、2015年から「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」で複数の漢方薬が推奨されています。(8:29)

 

ー (症例1)喉の違和感 胃もたれなどを訴える77歳男性 ー


高齢者に漢方薬を処方し奏功した事例を紹介します。

脳梗塞の既往がある77歳の男性は、嚥下の機能が低下して痰がたまり、胃もたれや腹部の張り、胃酸の逆流などさまざまな症状が出ていました。

この病態を漢方的に考えると、口からのど、胃、腸にかけて「気」の流れが悪い状態でした。胃までの気の流れの改善には半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)、胃から腸は六君子湯(リックンシトウ)が適していると考えられました。
そこで両者の作用を併せ持つ茯苓飲合半夏厚朴湯(ブクリョウインゴウハンゲコウボクトウ)を処方したところ、一剤でほとんどの症状が解消しました。(4:38)

 

ー (症例2)疲れやすさ 体力・気力の低下に悩む88歳女性 ー


高齢者に漢方薬を処方し奏功した事例を紹介します。

がんの治療後に体力や気力が落ちてしまった88歳の女性は、食事摂取の低下、身体への刺激が少ない、排泄機能の低下、睡眠障害などの症状が出ていました。

漢方薬を用いると、排便・排尿の調子を改善することで食事が進み、ぐっすり眠れるようになることがあります。そこで、この方には心と体のバランスをとることを目的とした、疲労倦怠を改善する人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)が適していると考えられました。
さらに、生活習慣を改善することで元気になっていきました。(3:58)

【2018年11月2日公開】

<高齢者の虚弱と漢方〜処方解説編>
https://www.ninchisho-forum.com/movie/n-096_01.html

出演者

髙山 真(タカヤマ シン)先生

1997年宮崎医科大学医学部卒業。2010年東北大学大学院卒業、医学博士。2010年から半年間、ドイツのミュンヘン大学麻酔科に留学。2011年4月から東北大学大学院医学系研究科、先進漢方治療医学講座の講師。2012年10月より東北大学大学院医学系研究科 総合地域医療研修センター 准教授、2014年4月より東北大学病院 准教授 総合地域医療教育支援部、副部長、漢方内科 副診療科長(現職)。
所属学会:日本内科学会認定内科医、総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本東洋医学会漢方専門医、指導医、日本温泉気候療法物理医学会温泉療法医、日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医

この記事の認知症キーワード