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地域まるごと健康フォーラム in 札幌 認知症の人の思いから始めるまちづくり

概要


ー Part 1 登壇者の紹介と最新医療情報 ー

2017年8月6日、道新ホール(札幌市)で「地域まるごと健康フォーラム in 札幌〜認知症の人の思いから始めるまちづくり〜」が開催されました。7名の登壇者が、医療や介護、行政の立場から本音を交えて語り合います。
まず認知症の医療情報について、認知症専門医の内海久美子さんが解説。
家族も含め周囲の人は「認知症の人の行動は理解できない」と決めつけてしまいがちですが、内海さんは、認知症の人なりに理由があってそのような行動をとっていることを説明し、認知症の人の思いに寄り添って適切な対応をするよう呼びかけました。
また、抗認知症薬や漢方薬など、認知症の薬物療法についてもわかりやすく説明。さらに「認知症で引きこもりがちになるとさまざまな形で社会と分断されてしまう。高齢になったからこそ、地域との結びつきが不可欠です」と語りかけました。
(10:44)

ー Part 2 地域の取り組み 認知症の人とともに ー

地域のつながりを作っていくにはどうすればいいのか。地域の人たちを診療している認知症専門医の松山稔さんが、身近な暮らしの中の事例を紹介しました。
中原光男さん(98)は心臓の手術後、デイサービスに通い始めましたが、すぐに飽きてしまいました。それを知った松山さんは、無理にデイサービスを続けるのではなく、好きな庭仕事に取り組むことを提案。中原さんは生き生きと花の世話を楽しんでいます。
心地よい暮らし方は人それぞれ。「自分の暮らし方に戻してあげることも大事」と松山さん。
松山さんが、地域で誰もが楽しみながら交流する場所の必要性を感じて立ち上げた「真駒内スポーツコミュニティクラブ」や、認知症と診断され引きこもりがちだった男性が、地域の人と農作業で交流する事例も紹介されました。
(15:17)

ー Part 3 地域の再生力・夕張に学ぶ ー

2007年に財政破たんし、高齢化率が50%を超える夕張市。10年間で人口が3割減少し、一人暮らしの人が孤独死するなど高齢者を取り巻く問題が深刻化しています。
一方で高齢者と言ってもまだまだ元気な人も多く、働く場を提供したり、地域コミュニティを再編する取り組みも始まっています。
夕張の支援を続けてきた社会福祉法人ゆうゆう理事長の大原裕介さんは「一人ひとりが小さなことであっても『自分はこんなことができる』とアイデアを出し合って、主体的にまちづくりをしていく必要がある」と話します。
夕張市と同様に高齢化率が50%を超える砂川市の病院に勤務する内海久美子さんは「砂川市では市民それぞれが『自分も何かしたい』という思いから、6年前にボランティア団体を立ちあげています」と語り、住民たちの地域に対する思いや活動を紹介しました。
(9:25)

ー Part 4 石狩・夕張 元気の源〜やさしいまちの実現へ〜 ー

石狩市の厚田地区では、社会福祉法人はるにれの里が企業に働きかけ、障がいのある人の就労の場を確保し、支援しています。
その一つが、知的障害や自閉症を持つ人たちによる、漢方薬の原料となる紫蘇の栽培や収穫作業です。職員は働くことで報酬を得て、自立した生活を送るばかりでなく、安全性が重視される薬の原料を栽培する仕事を通じ責任感も生まれました。
はるにれの里のスタッフとして障がい者の就労継続支援を行なっている東海林牧さんは、福祉と企業が結び付くのはとても難しく、「企業側の視点」が大事だと言います。「福祉施設だからこの程度でいい、ではなくて、一企業として相手の企業と向き合い、お互いにメリットになることを考える必要がある」と話しました。
(8:32)

出演者

内海 久美子(うつみ くみこ)さん

砂川市立病院副院長、認知症疾患医療センター長

北海道札幌医科大卒業。1996年より、砂川市立病院精神神経外科。2004年2月よりもの忘れ専門外来開設を機に、NPO法人中空知・地域で認知症を支える会設立、理事長。アルツハイマー認知症の専門医として、地域での暮らしを支える連携作りに取り組む。医療者も病院から出て行く時代と考えている。

松山 稔(まつやま みのる)さん

医療法人一光会幸内科クリニック院長

1991年旭川医科大学卒業。暮らしを支える医療の実践。診察室だけでは無い地域での日頃の交流が大切とスポーツや語り合いの場を提供。いくつになっても目標を持ち、自宅で暮らせる様に元気を保つのが自身の医療の目的と考えている。

佐々木 幸子(ささき さちこ)さん

幸サポートセンター代表、北海道認知症グループホーム協会道東ブロック相談役

1970年特別養護老人ホームをスタートに介護職の専門性を追求してきた。長年の経験で培った強い思いを持って、認知症の本人の思いを知る努力を忘れない専門職の育成、認知症ケアの質の向上と地域と共にあゆむ開かれた介護施設の実現を目指し講演活動を重ねている。

大原 裕介(おおはら ゆうすけ)さん

社会福祉法人ゆうゆう理事長

北海道医療大学大学院時代から地域福祉活動を実践。NPOを立ち上げ、2013年に社会福祉法人化。現在当別町を拠点に障害者、子育て、高齢者の支援事業など展開。すべての人が住み慣れた町で暮らし続けるための地域づくりを進めている。

木村 晃子(きむら あきこ)さん

当別町地域包括支援センター 主任介護支援専門員

認知症になっても、居場所と役割がある地域づくりを意識しつつ、その人の日々の暮らしを組み立てることが大切だと考えている。支援する側、される側という殻から出て、人と人の繋がりという貴重な体験をいかに活かすかが、専門職として問われていると感じている。

東海林 牧(しょうじ ぼく)さん

社会福祉法人はるにれの里 障害者就労継続支援A主任

北星学園大学社会福祉学部福祉心理学科卒業。障害を持っているかいないかに関わらず、人は社会との繋がりの中で自身を見つめる機会を求めている。現在、手がける生薬栽培は、人の役に立っているという誇りが持て、地域での当たり前の暮らしを支えている。今年7月、「とれたってマルシェ」という地域の人との協働イベントを立ち上げた。

鈴木 隆浩(すずき たかひろ)さん

北海道保健福祉部高齢者支援局長

1983年北海道庁入庁。2008年地域医療確保推進室主幹。2013年高齢福祉課介護運営担当課長などをへて2017年現職。地域医療から福祉まで身体と心のライフラインの整備に努め、柔らかな行政のありようを模索している。

町永 俊雄(まちなが としお)さん

福祉ジャーナリスト

1971年NHK入局。「おはようジャーナル」キャスターとして教育、健康、福祉といった生活に関わる情報番組を担当。2004年からは「福祉ネットワーク」キャスターとして、うつ、認知症、自殺対策などの現代の福祉をテーマに、共生社会の在り方をめぐり各地でシンポジウムを開催。現在は、フリーの福祉ジャーナリストとして活動を続けている。

【2018年7月11日公開】