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地域カンファレンス in 高知 認知症の人の思いから始めるまちづくり

概要

ー クリップ1 基調講演 〜総合診療医から見た高齢者医療と暮らし〜 ー

認知症について地域の人たちがともに考える「地域カンファレンスin高知」が、2017年1月15日、高知県立県民文化ホールで開催されました。今回、まず始めに「総合診療医から見た高齢者医療と暮らし」をテーマに、近森病院の浅羽宏一医師が基調講演を行いました。浅羽医師は、耳慣れない「総合診療医」について、「専門医とは対極の位置付け。専門医は『臓器』を診るのに対し、総合診療医は『病人』を診ています」と説明。さらに、総合診療医は診察も治療も薬の管理も一元的にできるため、加齢とともに複数の病気にかかりやすくなる高齢者向きの医師であることや、在宅医療を支える役割を担っていること、それにもかかわらず総合診療医の数が不足しているため、現在大学と連携して総合診療医を養成していることなどをわかりやすく伝えました。
(06:18)

ー クリップ2 知っておきたい認知症の基礎知識 ー

医療や介護、行政、介護家族などさまざまな立場の人がパネリストとして意見を交わしました。認知症の母親を介護してきた掛橋さんもその一人。「近年は高齢化とともに認知症になる人は増え続け、すべての人が当事者や家族になる可能性がある。知識を持っておくことはとても大事です」と呼びかけました。一方、医師の阿波谷さんは認知症の基礎知識を解説。早期発見に役立つ、健忘(年のせいのもの忘れ)と認知症による記憶障害の違いなどについて、わかりやすく説明しました。
(07:29)

ー クリップ 3 本人の思いに寄り添う介護を ー

5年前に認知症と診断された濱渦フヂさん(90)の事例を通し、「本人の思い」について考えます。濱渦さんはもの盗られ妄想や被害妄想などが激しくなり、精神科に入院し、抗精神病薬など10種類以上の薬を服用してきました。現在は攻撃的な行動はおさまり、一日の大半を小規模多機能型施設で過ごしていますが、会話もできず、ほとんど寝ているだけ。そこで施設のケアスタッフたちは濱渦さんが意欲を失くしている原因を探り、薬の調整やスタッフがかかわる時間を増やすといった対策を講じてきました。その結果、濱渦さんは日中意識がはっきりし、周囲と意思の疎通ができるようになってきたのです。画像を通して紹介された濱渦さんの豊かな表情から、本人の思いに寄り添うことの大切さが伝わってきました。
(14:07)

ー クリップ 4 深刻化する地方の高齢化をどう支えていくか ー

社会全体で高齢化が進行していますが、「地方の高齢化」は都市部よりもさらに深刻です。事例として取り上げられた大豊町は高知県の北部県境に位置する交通が不便な山岳地帯に約4千人の町民が暮らす地域で、高齢化率は県内最高の56.6%。20年前から高齢化を見据えた対策を進めてきました。介護予防を目的に各集落で開催しているデイサービス「ミニデイ」もその一つで、会場では大砂子地区で月に一度行われているミニデイの様子を紹介。山道を1時間歩いて出かけたり、ふだん電話でしか話せない地域の人たちと顔を合わせて体操や食事を楽しんだりする高齢者の姿が映し出されました。今や地域の人の拠り所になっているミニデイですが、各地域のミニデイを取りまとめてきた民生委員が高齢化し後任が見つからないなど、今後どう存続させていくかが新たな課題となっています。
(15:38)

ー クリップ 5 高齢者の知恵や能力を引き出す ー

急速な高齢化への対応を迫られる中で、高知県内の市町村も若い世代の移住を後押しするなどの対策を実施してきました。同時に高齢者に積極的な社会参加を促すさまざまな取り組みが行われています。三原村では、高齢者が次世代に地域で受け継がれてきたどぶろくやわらじの作り方を伝えたり、高齢者によるシシトウのハウス栽培など、住民の主体的な産業振興活動を支援しています。また越知町では、30年前から薬草栽培で高齢者が通年働ける環境を設けてきました。高齢者にとってお小遣い稼ぎになるばかりでなく、作業を通して手先や頭を使い、お喋りすることが介護予防にもなっています。阿波谷医師は「お年寄りが生き生きと暮らし続けるために最も大事なのは、医療よりも生きがいです」と話しました。
(06:01)

ー クリップ 6 高齢者の居場所づくり 〜アテラーノ旭〜 ー

高知市旭町地区にある「アテラーノ旭」。アテラーノとは、「私たちの」を意味する高知弁で、住民自らが立ち上げた誰でも気軽に立ち寄ることができる「まちのお茶の間」として親しまれています。自宅で栽培した野菜や手作りの手芸品を展示販売したり、ケーキや日替わり定食を食べに来たり、お喋りを楽しんだり、利用の仕方は人それぞれ。話し相手を求めて訪れる一人暮らしのお年寄りも増えましたが、さまざまな理由で自宅に引きこもる人も少なくありません。そこで新たに配食サービスを始め、お弁当を手渡す時に話をするようにしています。高齢になっても、そして認知症になっても誰もが安心して暮らせる地域を目指して、アテラーノを中心とした地域住民の挑戦は続いています。
(17:45)

出演者

浅羽 宏一(あさば こういち)さん

社会医療法人近森会 近森病院 総合診療科 部長

1992年高知医科大学(現高知大学)を卒業。同年同大学第二内科入局。高知大学医学部附属病院総合診療部を経て、2015年より現職。患者の心身や暮らしの状態を全人的に診る“総合診療医”の立場から糖尿病や認知症など高齢者医療に携わっている。

阿波谷 敏英(あわたに としひで)さん

高知大学医学部 家庭医療学講座 教授

高知県梼原町で町立病院の医師として地域包括ケアシステムづくりに10年以上携わり、現在はその経験を活かし、大学で地域医療教育、プライマリ・ケア教育を行っている。「地域を診る」医療者を育てたいと考えている。

掛橋 培子(かけはし ますこ)さん

げらげら家族会(梼原)代表

約9年間、認知症の母を介護サービスを利用しながら、在宅介護をして看取る。認知症の本人が地域で安心して暮らすとはどういうことなのか考え続けている。

苅谷 貢(かりや みつぐ)さん

医療法人みずほ会 介護部長

南国市出身。高校卒業後、航空自衛隊員に従事し転職。ある老夫婦との出会いをきっかけに介護の世界へ入ることを決意。現在は認知症の本人の思いを汲み取ることのできる真の介護者を育成したいと力を注いでいる。

山中 雅子(やまなか のりこ)さん

NPO法人アテラーノ旭 理事長

45年前、働く父母のために保育園を設立し、地域活動に関わる。地域に銭湯がなくなり、公民館で入浴サービスを始めた事を契機にアテラーノ旭を設立。誰もが安心して暮らせるまちづくりを目指し活動中。元共同保育園園長。

村岡 節(むらおか せつ)さん

大豊町役場 住民課地域包括支援センター兼介護保険班 班長

大豊町の地域活動の主役は元気な高齢者の皆さん。人生における師匠たちと一緒に『笑顔づくりの達人』を目指し、出来る限り長く健やかに過ごしたいと願っている。保健師、健康運動指導士、主任介護支援専門員。

岡野 太郎(おかの たろう)さん

高知県産業振興推進部 計画推進課 地域支援企画員(三原村)

現在、三原村で産業振興や地域づくりに取り組んでいる。小さな村だからこそ、地域と行政が一体となったまちづくりが可能であり、また時代の変化に柔軟かつ迅速に対応できることから、日本の、そして世界のモデルになれるように、課題解決先進地を目指している。

川内 敦文(かわうち あつふみ)さん

高知県健康政策部 医療政策課 課長

高知市生まれ。1996年に東京医科歯科大学医学部卒業後、臨床医を経て厚生省、福岡県、厚生労働省で救急・災害医療、地域保健、介護保険などを担当。2007年から高知県庁で地域医療政策に従事。最近は南海トラフ地震対策や医療従事者の確保対策などに取り組んでいる。

町永 俊雄(まちなが としお)さん

福祉ジャーナリスト

1971年NHK入局。「おはようジャーナル」キャスターとして教育、健康、福祉といった生活に関わる情報番組を担当。2004年からは「福祉ネットワーク」キャスターとして、うつ、認知症、自殺対策などの現代の福祉をテーマに、共生社会の在り方をめぐり各地でシンポジウムを開催。現在はフリーの福祉ジャーナリストとして活動を続けている。