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第2回 認知症にやさしいまち大賞

概要

第2回 認知症にやさしいまち大賞

認知症になっても安心して暮らせるまちづくりに取り組む団体を表彰する「認知症にやさしいまち大賞」。
第2回の受賞団体が決定し、2018年12月11日に表彰式が行われました。会場では受賞団体の活動を映像で紹介。本賞には5団体が選ばれました。

ー アクション農園倶楽部(新潟県湯沢町) ー

新潟県湯沢町の「アクション農園倶楽部」は、認知症の人と地域住民が農作業を通して交流する取り組みです。
6年前に、認知症を地域でどう支えるかという視点で始まったプロジェクトでしたが、今はむしろ認知症の人が農作業を教える立場になっていると言います。
表彰式に出席した団長の丸山静二さんは、「一歩踏み出して何かを始めてみると、違った景色が見えてくることもあります」と話しました。(5:11)

ー HATARAKU認知症ネットワーク町田(東京都町田市) ー

第2回「認知症にやさしいまち大賞」の本賞に輝いた「HATARAKU認知症ネットワーク町田」は、認知症の人が社会貢献をしながら働くユニークな取り組み。町田市所有の竹林を整備し、得られたタケノコや竹炭を販売し、収益を分配しています。
認知症の当事者にとっては収入とともに社会の役に立てる充実感を得られるだけでなく、家族にとっては本人に生き生きと過ごしてもらえるという安心感、さらに地域住民にとっては荒れた竹林が整備され住民のボランティア活動や子どもたちの里山教育につながるなど、さまざまなメリットが生まれています。
ゆくゆくは竹林公園を作るという夢を描きながら作業に精を出すメンバーたち。表彰式に参加したメンバーの鈴木さんは「楽しい」と笑顔で話してくれました。(5:54)

ー 若年性認知症の人と家族と寄り添いつむぐ会(石川県金沢市) ー

本賞を受賞した「若年性認知症の人と家族と寄り添いつむぐ会」は、石川県金沢市で若年性認知症にフォーカスした取り組みを行っています。金沢市から委託を受けて運営する若年性認知症カフェ「もの忘れが気になるみんなのHaunt(たまり場)」を軸に活動を広げてきました。
認知症カフェは金沢を代表する「金沢21世紀美術館」のガラス張りのオープンスペースで開催。
ほかにもお寺での音楽イベントや、美術ワークショップ、山登りなど、地域の特性を生かしたいくつものイベントを企画してきました。
行政とのつながりが大きな強みで、自分たちだけでは難しくても行政の協力があれば実現できることも。行政と積極的に情報を共有しながら、ユニークな活動を続けています。(6:11)

ー Dシリーズ/富士宮市ソフトボール大会実行委員会(静岡県富士宮市) ー

スポーツを通して「認知症の人とともに生きる社会」を目指すソフトボールの全国大会、通称「Dシリーズ」。2014年から毎年3月に静岡県富士宮市で開催されています。
Dシリーズが始まったきっかけは、認知症の当事者が「ソフトボールの全国大会を開催したい」と声を挙げたこと。当事者の家族のほか、商店街、地元ラジオ局、行政や民生委員などさまざまな人が奔走して実現にこぎつけました。
現在は県外も含め200人以上が参加し、前夜祭や大会後の参加者同士の交流会も開催。市をあげてのイベントになっています。さらに大会を目指してふだんから練習に励むことで元気や生きがいを取り戻した当事者も。
Dシリーズを発端にスポーツ交流に取り組む自治体が増え、交流の輪は全国に広がりつつあります。(6:25)

ー 育育広場〜南かざし団地チーム志度谷〜(香川県綾川町) ー

香川県綾川町の「南かざし団地チーム志度谷」は、「認知症になって仕事はやめざるを得なかったけれど、地域のために役に立ちたい」という認知症当事者の志度谷利幸さんの声から生まれました。
廃園した子育て支援施設の一角を利用して、認知症の人と家族、地域の中高年が週1回集まる場がスタート。以来、子育て支援施設のペンキ塗り、保育園・幼稚園に寄贈するおもちゃや衝立づくりなど、地域の子育て支援と結びつくことで活躍の場を広げてきました。
子どもたちを地域全体で見守る「育育広場」もチーム志度谷の活動の一つで、世代を超えた交流に発展。志度谷さんの思いから始まった活動は町全体を活気づけ、綾川町の町おこしにも貢献しているのです。(6:47)

ー オレンジプロジェクト〜お年寄りにやさしい街六角橋〜(神奈川県横浜市) ー

「認知症にやさしいまち大賞」では本賞5団体のほかに、時代の先駆けとしてユニークな活動をしている団体を「ニューウェーブ賞」に選出。その一つが「オレンジプロジェクト〜お年寄りにやさしい街六角橋〜」です。
横浜市にある六角橋商店街は昔ながらの商店街ですが、地元神奈川大学の学生たちが若い世代の意見や発想力、行動力を生かして、お年寄りに優しい街にしようという取り組みが行われてきました。
高齢化が進む商店街の店主の中には、当初「自分たちはやってもらう立場だから」と考えている人も多かったそうです。しかし学生たちと協働することで地域への愛着も深まったといいます。
今後、若者やより広い年齢層が当事者と共に町づくりを広げていく期待も込めて、ニューウェーブ賞が贈られました。(4:37)

ー 国府の浜サーフィンプロジェクト、志摩市(大阪府堺市、三重県志摩市) ー

「国府の浜サーフィンプロジェクト」は、大阪在住の認知症当事者の「また、サーフィンがしたい」というつぶやきから始まりました。
当事者は認知症になったことでやりたかったことを諦めてしまうことが多く、家族や周囲も「何かあったら」と心配するあまり行動を制限してしまいがちです。
しかし今回のプロジェクトでは、当事者団体や行政をはじめ、志摩市民病院、三重大学の医学生、サーフィン連盟三重支部、森ノ宮医療大学の教授、堺市認知症介護指導者など多岐にわたる人々が夢の実現に向けてすばやく連携し、翌年の夏には当事者3人が志摩市の国府の浜でサーフィンを楽しむことができました。
プロジェクトで得られた成果は、その後も「当事者にとってのやさしいまち」の実現に向けたステップアップに活用されています。(4:17)

ー 第2回 認知症にやさしいまち大賞 表彰式 ー

表彰を終え、選考委員が講評を行いました。
おれんじドア代表で認知症当事者の丹野智文さんは「表彰を受けた団体の活動は、5年前だったら『危ない』『誰が責任取るの?』と言われて実現できなかったものばかり。今は実現できるようになってきていることがうれしい」と話しました。
認知症の人と家族の会・代表の鈴木森夫さんも「ご本人はもちろん家族も『楽しくなきゃ』という活動が増えている。活動によって収益を得るなど、いろいろな可能性が見えました」と話します。
弁護士の立場で選考委員を務めた延命政之さんは「昔は成年後見でも本人の意思は置き去りでしたが、今は違う。本人の意思を引き出し実現に結び付けることが大事」と語りました。
「解放」というキーワードを挙げたのは、認知症介護研究・研修東京センター研究部長の永田久美子さん。「認知症当事者が当人を括っていた殻から解放され始めた、と感じている」と述べました。(10:12)

【2019年4月2日公開】
 

【第2回 認知症にやさしいまち大賞】
<本賞>
■アクション農園倶楽部(新潟県湯沢町)
■HATARAKU認知症ネットワーク町田(東京都町田市)
■若年性認知症の人と家族と寄り添いつむぐ会(石川県金沢市)
■Dシリーズ/富士宮市ソフトボール大会実行委員会(静岡県富士宮市)
■育育広場〜南かざし団地チーム志度谷〜(香川県綾川町)

<ニューウェーブ賞(特別賞)>
■オレンジプロジェクト〜お年寄りにやさしい街六角橋〜(神奈川県横浜市)
■国府の浜サーフィンプロジェクト、志摩市(大阪府堺市、三重県志摩市)