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高齢者の虚弱と漢方〜処方解説編

概要

ー かゆみ・冷え・お腹の調子に悩む 76歳男性【当帰飲子】 ー

東北大学漢方内科の髙山真准教授による漢方講座。
高齢者の虚弱と漢方について解説します。   

1つ目の処方は当帰飲子。
76歳の男性は寒い時期になると体中のかゆみ、冷え、便通の悪化に悩まされていました。
近所の皮膚科で老人性皮膚掻痒症と診断され、かゆみ止めの抗ヒスタミン内服薬と軟膏を処方されましたが、症状はおさまりません。
「高齢者のかゆみは寒い時期、乾燥する時期に悪化する傾向があります」と髙山准教授。
漢方では皮膚に、潤い成分の「水」や栄養成分の「血」が足りないと捉え、水と血を補い、全身に巡らせる「当帰飲子」などで治療していきます。当帰飲子は皮膚表面のかさかさ感を減らし、かゆみが改善されることが期待できます。(3:50)

 

ー 認知症の精神症状に悩む 68歳男性【抑肝散】 ー

東北大学漢方内科の髙山真准教授による高齢者の虚弱をテーマにした漢方講座。
2つ目の処方は抑肝散。

認知症の精神症状に悩む68歳の男性は、60歳の時に前頭側頭型認知症と診断されて大きなショックを受け、常に不安感や焦燥感がありすぐに怒る状態が続いてきました。
抗精神病薬の服用で怒りやすさや焦燥感は落ち着いてきたものの、元気がなくなり、活動性が低下。漢方内科で漢方薬「抑肝散」を処方したところ、症状が改善しました。
抑肝散は「肝」の働きをコントロールする漢方薬。脳内の過剰なグルタミン酸濃度を下げ、セロトニンを調節するなどさまざまな作用で興奮が抑えられると考えられています。
元々、子どもの疳の虫や夜泣きに使われ、母子ともに服用できるなど広く用いられる薬で、高齢者も安心して飲める処方です。(3:53)

 

ー 高齢者の便秘・下痢に悩む 80歳男性【桂枝加芍薬湯】 ー

東北大学漢方内科の髙山真准教授による高齢者の虚弱をテーマにした漢方講座。
3つ目の処方は桂枝加芍薬湯。

80歳の男性は5年前に脳梗塞を発症してから虚弱が進行し、硬い便やキリキリした腹痛、残便感といった便秘症状だけでなく下痢にも悩まされているといいます。
「便通のコントロールは自律神経系とかかわりがある。こうした症状に効果が期待できる処方が桂枝加芍薬散です」と髙山准教授。
通常、便秘と下痢は相反する症状ですが、桂枝加芍薬散は5つの構成生薬がバランスよく効果を発揮し、ちょうどよい状態に便通をととのえてくれるのです。
便秘の方がやや強い場合には「桂枝加芍薬大黄湯」、下痢傾向がある人には「半夏瀉心湯」など、便通の状態に合わせた処方で微調整できることも漢方薬の強みです。(3:48)

 

ー 更年期障害の症状が治らない 67歳女性【当帰芍薬散】 ー

東北大学漢方内科の髙山真准教授による高齢者の虚弱をテーマにした漢方講座。
4つ目の処方は当帰芍薬散。

更年期障害の症状が治らない67歳の女性は、50歳を過ぎた頃から更年期でむくみ、だるさ、立ちくらみ、手足の冷え、月経時の頭痛、気力の低下などさまざまな症状に悩まされてきました。
更年期障害の症状は女性ホルモンの変調が主な原因とされますが、漢方的には「気・血・水」の「血」の不足や(血虚)、滞り(瘀血)が大きな原因と捉えます。
「当帰芍薬散」は、血を補い血の巡りを改善する漢方薬。一剤で複数の症状の改善を期待できることが、漢方薬の特徴と言えるでしょう。
更年期障害には、当帰芍薬散のほかに「加味逍遙散」や「桂枝茯苓丸」が使われることが多く、これらは「女性の三大処方」と呼ばれています。(7:19)

【2019年2月25日公開】

<高齢者の虚弱と漢方>
https://www.ninchisho-forum.com/movie/n-090_01.html

出演者

髙山 真(タカヤマ シン)先生

1997年宮崎医科大学医学部卒業。2010年東北大学大学院卒業、医学博士。2010年から半年間、ドイツのミュンヘン大学麻酔科に留学。2011年4月から東北大学大学院医学系研究科、先進漢方治療医学講座の講師。2012年10月より東北大学大学院医学系研究科 総合地域医療研修センター 准教授、2014年4月より東北大学病院 准教授、総合地域医療教育支援部 副部長、漢方内科 副診療科長(現職)。
所属学会:日本内科学会認定内科医、総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本東洋医学会漢方専門医、指導医、日本温泉気候療法物理医学会温泉療法医、日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医