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「認知症社会」の源流

コラム町永 俊雄

▲ 認知症の啓発キャンペーンのためのDVD映像が出来上がった。全国の行政などに配布されるほか、ウェブ上での配信などが予定されている。「認知症社会」は、今やまだ認知症ではない人の態度決定にかかっている。様々なキャンペーンが合流するようにして「認知症にやさしいまち大賞」が開催される。

「認知症にやさしいまち大賞」をご存知だろうか。
NHK厚生文化事業団が、去年から主催している表彰なのだが、実はこれは現在のこの社会の認知症の流れに大きな意味を持つ。

その源流は、今から14年前の2004年の「痴呆の人とともに暮らす町づくり」地域活動推進キャンペーンである。
まさにここから、「認知症」が、医療とケアの世界から大きく地域へ社会へと、巨大な扉を音軋ませて押し開かれ、押し出されたのだ。
今振り返っても、その当時の痴呆症へ向き合おうとする人々の切ないまでの熱情に、ほとんど鳥肌立つ思いがする。「認知症社会」は、確かにここを一つの源流とする。

主催は全国の認知症介護研究・研修センターで、この年、京都で最初の国際アルツハイマー病協会の国際会議ADIが開かれた。その会場でこの活動の表彰と活動報告が行われた。日本の「痴呆症」の活動を、高々と世界に向かって発信しようとした、その意気込み、気負いはいかほどだったのだろう。

参集した顔ぶれを見てみよう。実行委員長は研修センター長の長谷川和夫氏(間違いなく日本の認知症研究のパイオニアであり、最近、自身が認知症であることを公にした)。実行委員には永田久美子氏(認知症ケアの牽引者であり続ける)がいて実際の運営に、ほとんどハッチャキに(メチャ張り切るサマ。北海道方言という説も)走り回った。
選考委員長はさわやか福祉財団理事長の堀田力氏であり、自身は委員長就任に際して、このキャンペーンは市民性を主体とすることを宣言した。このあたり、灯火を掲げるような新鮮な理念が横溢していたな。
選考委員には、ボケ老人をかかえる家族の会の高見国生氏、芸能リポーターの梨元勝氏もいた。誰も彼もが、認知症を通してまっすぐに時代を据えていた。

そのほかの委員も、誰もがその後、現在の認知症活動の基礎を創り上げたメンバーばかりだし、表彰にもすでに第一回に、認知症の人とともにまちづくりを展開した大牟田の大谷るみ子氏が選ばれると言った具合に、現在、全国各地で中心的に活躍する多くの人がこのキャンペーンから次々と世に歩みだしている。
不肖私が選考委員となったのは2008年だから、その熱気は続いていた。まだまだあの頃は、認知症への偏見は大きく、認知症は地域の切実な「問題」であり、介護の負担と困難にばかり目が向けられていた。そうした状況だからこそ、誰もが、ここを変えていかなければという信念の中にいたのだと思う。

同時にこのキャンペーンの最大の貢献は、認知症社会への転換を促す視点がこの時点で、すでに確かに据えられていたことだ。選考の基準にはこう記されている。今読んでもその先駆性はいささかも色あせない。

「本キャンペーンはコンクール形式をとっていますが、活動の優劣を競い合うものではありません。痴呆の人と痴呆の人を支える人がともに安心して暮らせる町づくりの、全国で学び合うためのモデルとなる先駆的な活動を奨励する意味での賞です。
1)痴呆の人の輝く姿がいきいきと描かれているか。 
2)それぞれの役割を持った人たちの協力が見られるか。 
3)将来に向かってさらに進んでいく展望を持っているか。
4)他の地域でも展開できる広がりを備えているか。」
(痴呆の人とともに暮らす町づくり・実施要綱より*痴呆症呼称を含め、肩書きなどは2004年当時)

さて、その志をまっすぐに受け継いで、この「認知症にやさしいまち大賞」が今年も開催される。募集は、6月8日からNHK厚生文化事業団で始まる。
かつてのキャンペーンで、実行委員として中心的に運営してきた永田久美子氏が選考委員長、選考委員として丹野智文氏、家族の会の鈴木森夫氏、不肖私も加わり、そのほかの委員とともに、12月を目指して選考が始まる。
現在の大賞が、かつてのキャンペーンに加えることがあるとしたら、より明確な本人参加と共生のまなざしだろう。
優劣や、規模を競うものではない。真摯な自分たちの未来を切り開くために、あなたのまちの「認知症」を応募してほしい。

|第71回 2018.6.4|


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