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世界アルツハイマーデー25周年記念イベント in 和歌山「わたしはわたし」

概要

世界アルツハイマーデー25周年記念イベント in 和歌山 「わたしはわたし」

 

今年2018年9月21日の「世界アルツハイマーデー」制定25周年を記念して、認知症について理解し合うイベント「わたしはわたし〜認知症つながる心が笑顔呼ぶ〜」が9月22日、23日に和歌山県立図書館で開催されました。
会場では、絵手紙の展示や認知症に関する映画も上映されました。
(「認知症の人と家族の会 和歌山県支部」主催)

「世界アルツハイマーデー」は患者と家族を援助するために制定され、毎年、日本全国でもこの時期に啓発イベントが実施されています。

 

ー 当事者と語ろう オジンジカフェ(その1) ー

2018年9月22日、「世界アルツハイマーデー25周年記念イベント in 和歌山」で3名の中高年男性が語り合う「オジンジカフェ(オレンジカフェをもじったもの)」が開催されました。
認知症当事者の渡辺康平さん(76)と西川孝司さん(70)の体験談を福祉ジャーナリストの町永俊夫さんが聞くというスタイルで進行。
渡辺さんは認知症と診断された当時は絶望し、うつになって体重が激減しました。病状が落ち着いてきたころ、思い切って以前から通っていた碁会所へ。「みんなが以前と変わらない態度で迎えてくれたことが、何より嬉しかった」と話します。
一方、西川さんは59歳の時に若年性認知症を発症。渡邊さんと同様に落ち込む日々が続きましたが、当事者の集い「ピアサロン」に参加したことが転機になり、前向きに生きられるようになったと語ってくれました。(9:05)

ー 当事者と語ろう オジンジカフェ(その2) ー

4年前に認知症と診断された渡辺さんは、地元のオレンジカフェで相談員を務めていますが、相談に来る当事者のほとんどが、最初は言葉が出てこないそうです。
「私自身、同じような時期を経験しているので、まず自分が苦しかったことを話すと少しずつ話をしてくれるようになります」と渡辺さん。
西川さんも「当事者同士が語り合うピアサロンではさまざまなことが言いやすい」と、体験者だからこそできるサポートについて語り合いました。
さらに地域の人と積極的に交流することや、認知症当事者が発信することの大切さにも触れた渡辺さんと西川さん。人とのかかわりが認知症の理解や心地よく生きることにつながることを伝えました。(8:50)

ー トークセッション 映画が教えてくれた認知症(その1) ー

「世界アルツハイマーデー25周年記念イベント in 和歌山」では、認知症の人と家族の葛藤を実話に基づいて描いた映画「折り梅」を上映。
上映後、原作者の小菅もと子さん、「認知症の人と家族の会」代表理事の鈴木森夫さん、同会和歌山支部の梅本靖子さんが参加し、「映画が教えてくれた認知症」をテーマにしたトークセッションが開催されました。
小菅さんは「介護が始まったのは20年以上前のことですが、当時は認知症に関する情報が少なく戸惑うばかりでした」と振り返ります。しかし義母自身も不安で苦しんでいることに気づいてから、見方や関係が変わってきたという小菅さん。
「子どもたちだけでなくヘルパーやボランティアの方、家族の会などさまざまな方に支えていただいた。一人で頑張るのではなく人の助けを借りることはとても大事です」と話しました。(9:09)

ー トークセッション 映画が教えてくれた認知症(その2) ー

会場で上映された映画「折り梅」で介護の中心的な役割を果たし苦労したのは「お嫁さん」でしたが、近年は実の息子や娘が介護するケースも増えています。
鑑賞後のトークセッションで「認知症の人と家族の会」代表理事の鈴木森夫さんは、「実子の立場になると突き放すこともできず、苦しむ人が少なくない」と指摘。
原作者の小菅もと子さんも「自分を育ててくれた母だからこそ、受け入れがたいところもあるはず。実の息子である夫の苦悩をわかっていなかった」と振り返ります。
さらに小菅さんは職場や地域の人に助けられたことにも触れ、「周囲の支えがあれば、認知症の人も家族も安心して心地よく生きられます」と語りかけました。
急速に高齢化が進む中で、少しでも多くの人が認知症を正しく理解することが求められています。(8:57)

出演者

渡辺 康平(わたなべ やすひら)さん

当事者

香川県観音寺市在住。49歳でNTTから観音寺民主商工会に転職し、会長だった2015年4月、脳血管性認知症と診断。17年6月、西香川病院の非常勤職員に。認知症の診断でつらい思いをした人の力になりたいと、地域の認知症カフェで働き、相談活動に取り組んでいる。また、認知症に関する講演も行っている。

西川 孝司(にしかわ こうじ)さん

当事者

59歳で「若年性アルツハイマー型認知症」と診断される。診断前は、うつ症状や場所がわからなくなるなどの見当識障害に悩まされ、大きな不安を抱えていたが、「認知症は病気ではない。サポートさえあれば何でもできる」という医師の言葉に背中を押され、地域で自分らしく暮らすために「認知症」であることを地域に開示。10年経った今も地域のサポートを受けながら、認知症と前向きに向き合い続けている。

鈴木 森夫(すずき もりお)さん

公益社団法人認知症の人と家族の会 代表理事

1952年愛知県大府市生まれ、福井県敦賀市在住。1974年愛知県立大学卒業後、愛知県や石川県内の病院でソーシャルワーカーとして、また介護保険施行後はケアマネジャーとして働く。精神保健福祉士。 1984年「呆け老人をかかえる家族の会」石川県支部結成に参画し、以後事務局⻑、世話人として活動に参加。 2015年「認知症の人と家族の会」理事となり、2017年6月から代表理事に就任。

梅本 靖子(うめもと やすこ)さん

公益社団法人認知症の人と家族の会 和歌山県支部代表

小菅 もと子(こすが もとこ)さん

映画「折り梅」原作者

愛知県豊明市在住。パート勤めの傍ら、認知症の義母の介護に携わる。1997年、義母の初個展を開く。1998年『忘れても、しあわせ』(日本評論社)出版。2002年、松井久子監督により『折り梅』として映画化される。講演活動を通じて、認知症の啓蒙に努める。

町永 俊雄(まちなが としお)さん

福祉ジャーナリスト

1971年NHK入局。「おはようジャーナル」キャスターとして教育、健康、福祉といった生活に関わる情報番組を担当。2004年からは「福祉ネットワーク」キャスターとして、うつ、認知症、自殺対策などの現代の福祉をテーマに、共生社会の在り方をめぐり各地でシンポジウムを開催。現在は、フリーの福祉ジャーナリストとして活動を続けている。

【2018年11月29日公開】