
2014年度に認知症の人が当事者として死亡した鉄道事故が、少なくとも22件にのぼることが国土交通省への取材でわかった。愛知県で2007年に列車にはねられて死亡した認知症の男性(当時91歳)の遺族が、JR東海に訴えられた裁判が関心を集めており、同省は調査を続けて対策に役立てる考えだ。国交省は全国の約200の鉄道会社から、事故や輸送トラブルが起きた場合に死傷者の数、運休本数などの報告を受けている。2014年度からは当事者が認知症と把握できた場合、備考欄に記載するよう求めている。
これをまとめたところ、2014年度に認知症の人が起こした事故・輸送トラブルは28件。このうち22件は死亡事故で22人が亡くなり、ほかに3件の事故で3人がけがをしていた。
参照元:朝日新聞デジタルニュース
http://www.asahi.com/articles/ASJ2T4TH5J2TUTIL01X.html
一方で、踏切事故全体(2010年度 内閣府統計)では、314件の踏切事故があり、112人の死者が出ている。さらに、他の事故をあわせると870件の事故を数える。認知症だから、徘徊だからという論調では新たな偏見を生む可能性もある。
マスコミとは少し違った視点で考える
徘徊中に列車にはねられた認知症の男性の遺族が、鉄道会社から損害賠償を求められた裁判の行方が注目されています。一、二審では、徘徊は他人に害を及ぼす危険性がある行為との認識が示されましたが、そうなのでしょうか。
2016年3月1日、最高裁判所の判決は介護家族への賠償責任は問わないとするものでした。判断する根拠の一つには、介護家族も要介護度1という状況では介護責任を問う事は出来ないとされるものでした。しかし、マスコミの論調は事故を起こした認知症の人の遺族には賠償責任は問わないとする事だけが表に出て、認知症の人、家族は責任を問われないとする風潮となっています。少し違うような気がします。
<判決内容>
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/rinji_hanrei_280301.pdf
最高裁の判決全文を見る事が出来ます。
日本認知症ワーキンググループ(JDWG)のコメント
認知症の当事者で組織される日本認知症ワーキンググループ(JDWG)は、認知症の本人からの提案として、次のコメントを発表しています。
2016年3月1日
JR東海事故 最高裁判決に関して
日本認知症ワーキンググループ(JDWG)
共同代表 藤田 和子
佐藤 雅彦
日本認知症ワーキンググループは、認知症の本人自身の組織であり、認知症と共によりよく暮らしていける社会にむけた提案や活動を行っています。
自由に外出し、町の風景や人たちに触れて暮らすことは、人としてあたりまえのことであり、認知症があっても同じです。
「認知症だと外出は危険」という一律の考え方や、過剰な監視や制止は、私たちが生きる力や意欲を著しく蝕みます。私たちだけでなく、これから老後を迎える多くの人たちも生きにくい社会になってしまいます。
私たちはまた、家族が介護に疲れ果てることなく、家族なりの生活を保って暮らしてほしいと願っています。
今回の判決を機会に、家族だけに責任を負わせず、認知症があっても安心して外出できる地域にすべての市区町村がなっていくよう、誰が何をできるのかを私たち当事者と話し合いながら、具体的な取組みを進めていってほしいと切望します。
| 2016.4.6 |