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「認知症にやさしい社会」、日本は世界一!?

コラム町永 俊雄

▲ 4月27日のADI記者会見の様子。左から高見国生家族の会代表。マーク・ウォートマンADI事務局長。グレン・リース議長。前回2004年の京都ADIは認知症の当事者で発言した人は9人だったが、2017年の今回は約200人の認知症の人が参加した。

日本は「認知症にやさしい社会」、世界一なのだそうだ。
「だそうだ」なんていう言い回しにいささか複雑な受け止めがある。エッ、ホントかよ。まだまだ課題山積のはずだぞ。といった感じか。
4月27日、京都でのADI(国際アルツハイマー病協会国際会議)開会式でグレン・リース議長は「認知症は世界の重要事項であり、その中で日本は最も『認知症にやさしい社会』への取り組みが進んでいる国だ」と述べた。まったア、グレンったらお上手言ってエ、肩をド突いたろかと思ったが、そんな人間関係でもなかったので、その後の記者会見でグレン議長にどのあたりをもって「認知症にやさしい日本」なのかを質問した。答えは、「日本は世界でいち早く『認知症にやさしい社会』を打ち出し、全国各地で官民挙げて取り組んでいる」とのこと。おそらく新オレンジプランや地域包括ケアシステムでの取り組みを言っているのだろう。なるほどね。
ADIに続く大阪での講演で、クリスティーン・ブライデンさんは日本は認知症にやさしい地域づくりを世界で最初に目指した国のひとつと指摘している。彼女は今回で6回目の訪日となる知日家でもあるが、講演ではこんなふうに述べている。
「日本のさまざまな場所を訪れ、たくさんの人びとに出会い、認知症の人たち、介護職、医師、教育者、さらに行政者、メディア関係者が、社会変革を実現するために一緒に働いていることに気づきました。オーストラリアでは見られない驚くべきことでした。さまざまな糸がより合わさって、認知症の人にとってすばらしい絵柄の織物が織り上げられていました。」
こうした評価は、実は初めてではない。以前もイギリスからの研究者が来日して、日本各地のきめ細かいケアの実践や地域あげての取り組みをつぶさに視察した上で驚きをもって述べ、今回のADIでも、とりわけアジアの参加者の日本への熱い眼差しに圧倒される。
国内で認知症に関わる人々は、いつも目の前の課題に懸命に取り組むあまり、自分たちの活動を客観的に相対評価する視点を持ちにくいのかもしれない。海外の評価は正直、とても嬉しい。言うまでもなく現場の取り組みの成果だろう。が、反面こそばゆいような若干の居心地の悪さも感じないではない。
大体が世間の「評論」はとかく、「ここがダメ、あそこもダメ」という課題抽出型であり、クサしてナンボの評論家ばかりで、「ダメ」と言われれば、マ、(とりわけ私なぞ)心当たりないわけじゃないからシュンとするしかない。でもそんな風に「自己否定」からスタートしても、土台が「ダメな私」なのだからちっとも前進的ではなく、希望とも程遠い。
そこを切り替えていいのではないか。ほめられて舞い上がるわけじゃあるまいし、問題山積も十分承知。今、取り組んでいる人々は自分たち全体像の高い評価を素直に受け止め、自信を持って実績を積み上げることで、そこから見えてくる新たな課題もあるはずだ。
熱狂はたちまち停滞に落ち込むが、冷静に客観評価と自己検証をつなぎ合わせることで、「認知症の人々と歩む」は理念ではなく持続する具体的な実践となり、アジアとの交流や世界への発信にもつながるのだろう。

▲ 4月30日に大阪で開かれたNHKハートフォーラムでクリスティーン・ブライデンさんが講演。そこでのスライドの一枚。2003年から2005年の間の日本訪問で、認知症に関わる人びとが社会変革のために緊密な連携をしていることに強い印象を持ったと語った。

|第46回 2017.5.24|