体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2015年4月号(417号)

ー お便り紹介 ー

『老い』の意味は新潟県・Oさん 61歳 女

92歳で要介護3の母を自宅で介護しています。
忘れていく記憶、家族の名前。意識障害などの「せん妄」によって不条理な行動を繰り返す母に戸惑いながらも、寄り添い自分自身の心を立て直そうとする毎日です。
自分が壊れていく毎日に恐怖や困惑する母の姿をみながら「老い」の意味を考える毎日です。寒さと切なさとやりきれなさが鼻水混じりの涙となって流れる冬です。オムツを取ってしまうのが、今の一番の悩みです。

勇気づけられました三重県・Iさん 70歳 女

四日市の「家族の会」に出席し、参加の皆様に勇気づけられて過ごしております。
約10年近く主人の介護をしていますが、3年位前から症状が進み、怒りっぽくなったり、不安で徘徊したり、私に手を出したり、怒鳴ったりすることもあってすごく悩みました。また、失禁もありましたが、今はリハビリパンツをはいてくれるようになったので、失禁の心配は解決しました。しかし、自分でする意思もあるので、失敗もあります。今は落ち着いて過ごしてくれています。

心配と不安でめまいがしそうです広島県・Sさん 56歳 女

私の実家の母は80歳で一人暮らしをしています。今年、アルツハイマー型認知症と診断されました。近所に妹がいて、昨年10月頃、母が近所の人とトラブルをおこしたと知らせてくれました。妹は話がわからず困ったようです。父は30年ほど前に亡くなっています。妹夫婦が相談して病院で検査を受けさせてくれました。私は図書館で認知症の本を借りて勉強し、それで「家族の会」のことを知りました。
主人の両親は癌で相次いで亡くなったので、私の母の介護を相談するのは少々心苦しいのですが、なんとか病気のことは話せました。最近はテレビドラマでも認知症の老人が登場するのでわかってくれたようでした。
介護の勉強は難しいし、母の介護をしているとめまいになるのではと、とても心配です。母の病気は悪くなり、寝込んでしまうのは目に見えているようで不安にもなります。

ー 私の介護体験談 ー

『介護日誌』~2014年暮れから正月へ~東京都支部会員

2014.12.3 老健入所している妻と私

持病のある私は、朝から倦怠感、足のむくみで体力・歩行力共に欠如し、週2回程の妻の施設通いも辛くなりました。時に電話で状況を尋ね、18日振りに行き、会う前にフロア責任者に様子を聞いた所、3日前突然奇声を上げて落ち着かない状態となり、今朝も頓服的に安定剤を投与したとの事。案じていた事が本物と知り、「なんの連絡もなかった!」と苦情を言いつつも、早速妻の元へ行きました。先に私の訪問を知った妻が満面の笑みを浮かべ、身を震わせるような姿でおり、「申し訳ない事をした」と滲む涙を抑えつつ、恥じらいもなく抱きしめてしまい、妻の激しい感情に手を添えて個室に連れて行った程でした。
 介護する私の健康の影響
大声で訳も分からぬ事を懸命に話す態度に、否定も出来ずにしばらくうなずきながら対応を考慮。タイミングを見て『浜辺のうた』を歌うと驚き!目を見開き・首でリズムを取り・手をたたき出して一緒に歌いひと安心。童謡、唱歌等2~3曲歌い、おやつの時間のよしで終了。別人のように明るい表情に戻ってくれ安心。帰宅後電話で様子を聞くと、笑顔を浮かべテレビを見ているとの事。介護する立場の自分が健康でないと大変な迷惑をかけてしまうと改めて認識しました。

2014.12.26 思いも付かぬ事態

クリスマスも終わり今年もあとわずか、なんとなく気忙しく感じますが、何も出来ない自分に苛立ちを覚えます。
最近妻が男を見れば、“お父さん”と呼び、夜は就寝時間になると落ち着かずに廊下をうろつき、係員を悩ませる。私が行くと半分は訳の分からぬ言葉で大きな声で話す・・・等、変化が生じています。
昨日病院での診断、医師が言うには
・環境の変化が大きな要因と考えられるので、当面外泊は控える
・頓服用として安定剤を、また寝る前に睡眠剤を付与
したがって、今年は妻不在の正月となる、思いも付かぬ事態です。

2015.1.2 二人の正月

年末年始の外泊を断念しての寂しい新年でしたが、少量ずつおせちを詰め合わせ、施設に出掛けました。元気そうで何よりでしたが、寝る時間になってもなかなか寝付けないということです。部屋で早速おせちを振る舞った。一つ一つこれは何の料理だと聞いてみたが、首をひねり、“美味しい”の連発、その身振りが愛おしい。最後に・・・、これは?首をかしげるばかり、「お母さんの名前は?」、“カズコさあ・・・ああ、カズノコ!”、自分の名前は記憶にあるようだ。どうして色々な料理を食べてもらったか分かる?今日は何日?と言い唄ってみた。「もういくつ寝ると・・・お正月」。「・・・あ、お正月だ」と、やっと分かってくれた。

○妻とのお付き合い
・微笑みながら目をみつめつつ話しかけ
・腹を立てずに根気よく叱らず怒らず
・常に穏やかな態度で接する
こんな事に気をつけ、悪化する自分の持病との闘いは気を使う。今年もこんな事の繰り返しだろうが、決して負けはしない、と改めて心に誓った。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。