体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2024年6月号(527号)

ー お便り紹介 ー

だんだん進行しています京都府・Cさん 女

現在86才の主人の事です。8才まで自営業でした。年を取ってからは注文を聞き、配達だけの仕事でした。83才で好きだった車の運転も止めました。この時、神経内科に受診したらアルツハイマー型認知症と診断されました。
今は食べる事と云うか食べた事を忘れてしまい冷蔵庫に行き食べ物を探します。
持病の糖尿病があるので注意するのですが、その動作が異常で、お鍋の中を覗き込み食べたりします。
だんだんと認知症も進み、朝、昼、タの区別がつかず尋ねてばかりいます。
要介護2でデイサービスに週4回行って居ります。本人は行きたくないみたいですが、運動をしに行くということで行っております。
日に日に認知症は進み衣類もどれをどのように着るのか解らないようです。デイサービスに行って居る間は自分の事、家の事が出来ています。

脳梗塞の父の介護沖縄県・Dさん 女

脳梗塞介護認定4の父の介護をしている44才の長女です。父が日に日に弱っていくところを見るのが辛いので、毎日父にくっ付いて辛くなったら肩代わりしてあげています。食事介護、トイレ介護など、さまざまな障害がある。膝などの関節痛がきついらしく、夜から呼ばれてマッサージさせられます。だけど後どれだけ命が残っているのかと思うと、のんびり出来ません。父のために、毎日を安全に安心して暮らせるようにしたい。

在宅介護11年目です福岡県・Fさん 女

姉がアルツハイマー型と診断され、介護者(妹の私)との二人三脚生活の始まりは、2013年11月。「本人の症状に合った適切な対応を」と努めているうちに、いつの間にか10年経っていました。今や在宅介護11年目の出発点。
最近の本人の口癖は「何が何だかわからない」自らの状態をズバリ表出したものと思われ、まことに明言にして名言。
一日指示待ちの暮らし。万事に「うながし」が必要。終日ベッドでの横臥。起床しても着替え無しでTV画像に釘付け。
衣食住すべてに、自発な意志がみられず。例えば、衣服の着脱では、何を着脱すべきか、着脱のポロ溢れ落とす。列記すればキリなし。10年経過し介護者自身の体力の減退を痛く感じるこの頃。体力UPの運動を始めようと思い立っているところです。

ー 私の介護体験談 ー

母の意志「胃ろうをしなかった決断」福井県支部

 

母が施設に入所したのはコロナ感染症が始まった直後でした。面会できない日が続き、やっと面会ができるようになったと思ってもまたクラスターで中止。難聴の母との、ガラス越しの面会は、話が伝わらなくて会話になりませんでした。
コロナの規制も緩和し、施設での面会も予約制ですが直接ふれあえるようになりました。
母も93歳になりました。この4年間で、ずいぶん認知症も進行し、娘の私も孫のこともすべて同じ名前で呼ぶようになっていました。
コロナで会えなかった時間を取り戻そうと、2週間に1度、孫やひ孫を連れて施設に足を運びました。
私の名前を呼んでくれる日もありますが、発語も少なくなってきました。病院の先生が以前、母が大声を出していた時に、「大声を出すのは周りは困るけど、声を出すことは嚥下機能を保つために大事な事です」と言われていたのを思い出しました。そういえば、食事が減ってきていると施設の方も言われており、痩せてきていました。なんか嫌な予感がしました。
元旦の朝、施設から電話が入りました。「40度近い発熱があります。コロナもインフルエンザも陰性でした」と、発熱の原因がわからず、総合病院を受診することになりました。
総合病院で血液検査やレントゲンをとって、結果「誤嚥性肺炎」でした。入院することになりました。
「やはり、しゃべらなくなると嚥下機能は落ちると先生が言った通りだな」と思いました。
先生の説明では、嚥下機能が落ちていて、口からの食事は難しいと。
「胃ろうをしますか?」と聞かれました。
ついにこの時がきたな、と思いました。
認知症はあっても話が出来ていたころ、母に「食べれなくなったらどうする?」って聞いたことがあります。何よりも食べる事が好きな母でしたから。「胃に管を入れて流動食を流す方法もあるよ」と説明すると、「そんな、おいしもねぇのはせん」と一言。その時はたくさん食べることが母の自慢でしたし、弟とも話をしました。
その時に何気なく、かかりつけの先生にその話をすると、「だんだん意思を示すことが難しくなる。いざ胃ろうとなった時には本人の意思を聞くことはできないかもしれない。今のうちに意思を聞いて書き残しておくと家族の方も迷いませんよ」と言われました。弟と相談し、母に再度たずねました。「胃に穴はあけん」「本当にいいのね」「胃に穴はあけん」と何度も母は言いました。
弟と、紙に書き残しました。
あれから5年経ちました。
母の意思を尊重したいと弟と話をしました。
先生に「胃ろうはしません。母の意思です」とはっきり伝えることができました。
正月に入院し、2月に天国へと旅立ちました。胃ろうをしたら元気になって、話が出来るようになったかな・・と思うことがあります。でも、母の意思です。それでよかったのだと弟と話しています。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。