体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2015年5月号(418号)

ー お便り紹介 ー

『つどい』は知恵がいっぱい大分県・Nさん 67歳 男

現在65歳の妻が5年程前、若年性認知症と診断された時は衝撃を受けました。
医者と薬のみが頼りの生活となり、介護の本や認知症の本を見ても、苦しむだけでした。
昨年、医者の勧めで、オレンジカフェ由布に参加してみて、同じ立場の人との出会いで、本人にも介護者にも違った世界を見つけることが出来ました。
『つどい』は知恵の宝庫とはすばらしい。いろんな知恵がもっとほしくて、入会を決めました。

ぽーれぽーれ4月号「心配と不安でめまいがしそうです」を読んで 『不安』は今では『穏やか』に山形県・Yさん

母は認知症があっても何とか歩ける状況でしたが、転倒して歩行が全くできなくなった時にSさんの精神状況と同じような気持ちになりました。
くらくらとめまいがしそうな「不安」です。母は不安で、私も不安、認知症はあっても母娘なので娘の気持ちを見ていて一層混乱の状況でした。
2年ほど経過した今、その時を振り返ると、母の心身の状況は進み、息をしていることにほっとするような日常ではありますが、母も私も気持ちの上では穏やかに暮らせています。
親身なケアマネさん、頼れる在宅サービス、夫の理解と環境が整ったからです。 Sさんも専門職の方々を引き寄せて、一緒にお母さんのこれからの暮らしを考え始めることで不安は希望や勇気に変わっていきます。
信頼できるケアマネさんを探してみましょう。健康でなければ、お母さんの事を考えるゆとりも少なくなってしまいます。ご自身の身体をご自愛くださいませ。

やり残したことがあるようで・・・埼玉県・Sさん 64歳 女

実母は昨年6月に亡くなりました。施設にお願いしておりました。遠距離介護でしたが、帰省をして母に会っていました。
やり残したことや、母にはもっといろんな思いがあったのではないかと・・・反省しております。

ー 私の介護体験談 ー

私の介護~今は穏やかに母と向き合う~福岡県支部

福岡県支部

91歳の母を在宅介護して5年目。2人兄弟の2歳下の弟は13年前58歳で死亡。私は、妻の同意を得て実家で母と生活している73歳男の介護実践中。 母はアルツハイマー型認知症で、当初は要介護3だったが、今は要介護5。幸い寝たきりや車椅子生活ではない。現在デイサービスは週6回、ショートステイは月15日前後。心身共に余裕が生まれ、趣味のキス釣り等や仲間と飲む機会も増えたが、サービス利用に対する葛藤で悩む事がある。ショートステイからの帰宅が近いと、「このままもっと施設にいてくれたら」という思いが生じる。その一方で長い利用では、「申し訳ない」という思いで心が晴れない時がある。私や妻の名前も分からなくなったが、利用途中の面会では一緒に歌や昔話等、母との会話を楽しんで帰る。こんな夜のビールも格別で至福のひと時を楽しんでいる。

手探りだった介護(2011~2012年)

私は70歳まで働き、休みに一人暮らしの母の元に帰る度、異変を感じながらも病院を拒み続けるので静観していた。ある日、冷蔵庫にトイレットペーパー、洗面器等を発見、予期していた事が現実となった。 母が信頼している医師に相談し、精神痛院に紹介状を書いて頂きなんとか受診したが、要介護3に該当すると言われショックだった。 薬の副作用か攻撃的な言動、幻覚や昼夜の室内徘徊症状等が加わった。更に、廊下や畳に尿便の失禁。リハビリパンツのポリマーでトイレを詰まらせる、便のついた物をあちこちに投げ捨てる等々異常な行動が続き、毎日が驚きと対応に追われ、私はクタクタで、点滴を打ってもらう程疲れきった。料理を作ってくれる妻にも、最初は喜ぶがすぐに険しい表情で「帰れ!」等、妻を拒否する母の症状に愕然となった。私はストレスで何をする気にもならず、昼からビールを飲む日々が続き、「これから先どうなるのか」と焦りと不安ばかりが増した。

周りから教えられ(2013~2014 年)

「家族の会」のつどいに参加し、介護体験を聞き悩みを共有する事で気が楽になっていった。リフレッシュ旅行や慣れない料理作りも楽しんだ。ケアマネやサービス事業所からのアドバイスも受け感謝。 そんな折の2013年4月、排泄の後始末に手間取る私に母が激怒、スリッパで蹴り上げたので大声で叱り太腿を思いきり叩いた。更に5月には、歯磨き途中に水を吐きかけたので、また大声になり肩を叩いたり押したりした。「これが虐待の始まりなのか」と自分が怖くなり医師に相談したが慰められアドバイスを聞いた。今年になって札幌の認知症の妻を殺害した夫の「すまん、母さん」と言う言葉に涙が止まらなかった。

今後に向けて

介護保険制度改定で今後どうなるのか心配だが、「焦らず、怒らず、笑顔を絶やさず」穏やかに、程よい距離を保って、母と向き合っていこうと思っている。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。