体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2015年11月号(424号)

ー お便り紹介 ー

逃げたい気持ちをどうしたらいいのか神奈川県・Dさん 60歳代 女

85歳の実母はまだ、自分の事は自分ででき、私は月に2~3度様子を見に行くだけなので、介護の苦しみはまだたいしたことはないだろうと思い、申し訳ないのですが、 でも、最近の母の言動は、私が未成年の頃の、指図と干渉に満ちたものに変わってきて、嫌悪感と戸惑いで、どう気持ちを整理したらよいのか、手がかりがほしいです。
弟夫婦が、2世帯住宅で住んでいるのですが、弟夫婦にはきついことを言われ、母の言っていることもどこまでが本心か信じられず、 介護はたいしたことないのに、避けたい、関わりたくない、逃げたいと思ってしまう気持ちをどう納めたらよいのか知りたいです。

義母は私の先生新潟県・Fさん 60歳代 女

義母が亡くなって10年が過ぎました。義母の様子が変だなと感じるようになった平成6年頃、私はまだ会社員だった頃で、リハビリパンツの存在すら知りませんでした。
それから時がたち、平成12年には介護の仕事を始めました。介護保険の始まった年でもあります。徐々に悪化していく義母をみていた私は、介護保険制度に助けられ、仕事を辞めずに最後まで義母をみることができました。
義母は介護する私にとって先生でした。こんなことしたら嫌がるんだな、こんなことしたら喜んでくれるんだなと身をもって教えてくれました。家族や友人たちも支えてくれての介護生活でした。
仕事を続けていく中で、「仕事を辞めないといけないかな」と悩まれている介護家族の話もよく聞きました。私は「仕事辞めないで、介護保険を使って頑張ってみませんか?」と自分自身の体験を話しながら語りかけました。
62歳で退職し、介護の仕事はもうこれで終わりだなと決めていましたが、また、縁あってパートで介護の仕事を続けています。動けることはなんて幸せなんだろうと感謝の毎日です。

相談して救われました山梨県・Gさん 50歳代 女

義母を介護して約7年が過ぎました。アルツハイマー型認知症で要介護3です。当初は認知症がよくわからず、何度も説明したり、紙に書いて貼ったりしていましたが、それでも忘れるので困っていました。
そんな時に「家族の会」を知り、相談に出かけると、作り話の天才かと思っていたことは、認知症の症状のひとつだとわかりました。普通の会話はスラスラ話せても、今の話になると、作り話が口から出てきます。
最初の1~2年、家族はうつになりそうでした。「家族の会」に参加して、否定しないで同調しながら聞き流す事を覚え、義母は時間も季節もわからなくなっていることも理解できました。
その後も40年以上前に手放した畑へ行って草取りをしたり、知人のお悔みに連れて行ったのに、1週間後に喪服を着て葬式に行くと騒いでいたこともありました。94歳を迎えますが、足と口はとても達者です。
夫が地区の集まりで、母親が認知症であることを話してお願いをしたので、地域の人が目をかけ、声をかけてくれるようになりました。デイから帰ってきて声をかけた時には、怪我をしていましたが、本人はどこでしたのか覚えていません。
夏に冷房を入れても、暖房にしてしまったり、暑い日中に出かけようとしたりしました。本人は自分の記憶がおかしいという事を受け入れられずにいます。
ひとりでの介護は精神的にも、肉体的にも、金銭的にもとても難しいと思います。「家族の会」やいろんな窓口に相談してみると、何か糸口が見えてくるのでお勧めです。くれぐれも、共倒れにならぬよう、SOSも必要です。

ー 私の介護体験談 ー

認知症の人が独居となる時京都府支部

介護の空き時間は許されない

間質性肺炎で入院していた父が急に亡くなり、認知症の母が一人、茨城県の実家に残されました。母は72歳でアルツハイマー病、要介護1です。 多くのことが少しずつ出来なくなっていますが、少しの補助で終日ほほ普段通りに過ごせます。 父の入院から死去まで約2ヵ月間、認知症の母と生活を共にして分かったことは、認知症という病気は24時間に及ぶ生活の補助及び介護が必要で、その程度は病気の重さにより比重が変わるだけではないかという事でした。 軽度の人には、広く薄い補助が必要、病状が重くなると生活全般に介護が必要になります。いずれにしても介護の空き時間は許されず、ヘルパーが1日数回入るという形での介護はあまり認知症の実情に合っていないと感じました。

何度説明をしてもきりがない

母は要介護1と言っても一人暮らしは難しいと思います。 「チャイムが鳴ってもすぐに出てはダメ」と言っても3分後には忘れていますし、掃除を頼んでもどこまで掃除機をかけたかも忘れてしまって、「全部した」と言って止めてしまいます。 洗濯機の操作法は一昨年暮れから分からなくなっていますが、本人は「出来る」と言い張ります。ガスコンロで菜箸を焦がしても記憶が無く危機感は薄いです。 お風呂に入ることも着替えも面倒くさくなると、必要無いと思うようです。またトイレの始末が適当になってきていて、トイレやお風呂場に便の塊が落ちていることが多くなりました。 自宅の鍵や通帳の仕舞い場所もすぐに忘れますし、何度説明してもきりがありません。不安がぬぐえないので同じ問いかけを繰り返します。

母のために、成年後見人制度をどう活用したらよいか

父の死去により、母に成年後見人を付ける必要があるかも知れないと気がつきました。父は銀行の名義を母に変更したり、遺言書など後々の手当をしないまま亡くなりました。 すべての財産が父の名義になっていて、名義変更だけでも現在の母の状態では無理ではないかと考えられるからです。 しかし、弁護士などが後見人になった場合、娘である私が母のためにお金を使うにも不自由が増えるし、多額の謝礼金を見知らぬ後見人に払うことになります。 母に手厚い介護を付けようとしても後見人が「母のために不必要」と判断した場合、それが実行出来ないようです。 今後、独居の人や介護を頼める親族のいない認知症患者が増えてくることを思うと、介護方法や介護場所の確保もさることながら、財産の保護や運用の仕方に関しても明確なシステムが構築されていかないと、詐欺や横領などの犯罪が増えるのではないかと不安です。 今回の父の死去により、あまりにも目まぐるしく状況が変わりましたので、今はただ困惑するばかりです。 成年後見人制度を利用するにも後見、補佐、補助のどのレベルになるか、誰がなるか、利用しないとどんな問題が起こるか、分からないことばかりで悩んでいます。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。