体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2016年6月号(431号)

ー お便り紹介 ー

楽しい思い出ばかり兵庫県・Bさん 90歳代 男

3年間、認知症の妻を老々介護しました。5年前に他界。現在一人暮らしながら、まだ妻と同居しているような気がします。大変なこともあったけど、今は楽しい思い出ばかり。

一緒に考えたい岐阜県・Cさん 50歳代 女

認知症だった母が亡くなって4年目になります。昨年、「家族の会」に行かせていただきました。こうした「会」をその時に知っていたら、相談することも癒してもらえることもできたかもしれないと感じました。今現在は介護が必要な認知症の家族はいませんが、「家族の会」の会員となり、認知症になっても安心して暮らせる社会づくりを一緒に考えさせていただきたいと思っています。

世間の目は・・・三重県・Eさん 50歳代 女

義母は88歳、3年前にアルツハイマー型認知症と診断されました。「家族の会」に参加して入会を決めました。
今、義母はとても落ち着いていて、忘れていることを指摘しない限り、いまのところ終始ご機嫌です。本人の意思が強くあるので、危険でない限り今までしてきたことはやってもらっています。スーパーでのお金の支払いなど。
一般の方に、認知症について理解してもらうことは難しいです。世間の目は長男の嫁が献身的に介護するべきと思っている方が大半です。

認知症カフェですすめられ兵庫県・Hさん 60歳代 男

現在64歳の妻は、平成22年12月頃より、若年性アルツハイマー型認知症を発症しました。現在だんだん症状が悪化しています。戸の開閉困難なため、徘徊の心配はありませんが、私のいない時は失禁の心配があります。現在デイサービス週2日、私が送迎し世話になっています。その施設の認知症カフェに行って、指導員の方にいろいろ教わり、「家族の会」への入会もすすめられました。

ー 私の介護体験談 ー

いまお母さんに話したい事富山県支部 52歳

やっと自由になれたのかな

お母さん、元気にしていた?もう4月後半で桜も散っちゃったけど、今日4月20日はお母さんの77歳の誕生日。喜寿のお祝いなのに何もしてあげられなくてゴメンね。特養の中はみんなの場所だから花も食べ物も持ち込みダメなんだ。何か記念にと古い家から持ってきたボロボロの写真、アルバムにしたよ。でもお母さんの子供時代の姿も、4年前に亡くなったお父さんも、知らない人になっちゃったんだね。娘の私がわからなくても無理ないね。いまお母さんは、誰の嫁でも、誰のお母さんでもなく、やっと自分ひとり、自由になれたのかな。

以前のお母さんと私の娘、そして今

熊本では大きな地震が来て大変なんだよ。東日本大震災のニュースを見る度にお母さんが不穏になり、あの頃は幼児番組ばかりみせていたね。認知症の人はただでさえ不安感が強いのに、今どんな気持ちでいるのだろう。
心身症の長女も元気になり、向精神薬を減薬し断薬して1年半。最近やっと薬の後遺症がなくなり、「まあいいか」と言えるようになったよ。働くことはできないけれど家の中が明るくなり、私も仕事に行けるようになったよ。
お母さんが介護度2の時、あの子が毎日「死にたい」と言うから、車に布団を引いて通っていたのにね。
先日、認知症患者への向精神薬の危険性についてテレビでやってたよ。「慎重な投与が求められる」なんて言ってたけど、医療や介護の現場でよく使われているんだって。認知症も薬を飲み続けて意識を低下させて介護しやすくする。なんだか本当に、お母さんにばかりツライ思いをさせてる罪悪感がとれないよ。

要介護5でも、心配する母は残っている

母に聞きたい事はたくさんあるけど、答えられないから逆に救われていることも多いのかもしれない。テレビで認知症患者の介護の仕方として、「見つめて 触れて 語りかけて ~認知症ケア”ユマニチュード“~」、つまり薬に頼らない治療。人手不足の今の日本ではこの治療の実践は難しく、薬の短期使用はやむを得ないのかな。リスクはどの治療にも存在するのだけど、どんな介護もどこかであきらめ妥協していかなければ、文句を言うだけで何もできなくなってしまうんでしょうね。
母の施設に行ってもものの2分で、「もう家に帰れ」と言われる。私がそばにいるのがいやなんだろうかな~とずっと寂しかったけど、よく考えたら元気な頃から、実家に行っても「そろそろ夕飯の支度しなくちゃいけないでしょ」「子供の迎えにラッシュで間に合わなくなるよ」と、早く帰れと言われたような気がする。私が誰だかわからなくなっても、やはり帰り時間を心配する母は残っているんだな~。
「お母さん、77年間お疲れ様。そして今までありがとう」。ものの2分で「帰れ」と言われる面会だけど、また来るからね。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。