体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2021年11月号(496号)

ー お便り紹介 ー

予期せぬアクシデント!愛知県・Aさん 男

買い物帰りのことでした。駐車場で運転席に乗り込もうとすると、左後方で「痛い!」と妻の声が…。どうも「車止め」にうっかり足をとられ、前に転んで両膝を強く打った模様。家に向かってしばらく走っていると、妻の顔がこちらにうなだれ、意識がないように見えた。慌てて車を止め妻を見ると、明らかに意識がなく、息も「ゴー、ゴー」という軽いイビキのような呼吸をしており、そのうち「オエッ」と3度ほど吐き気を催したので、あわてて119番通報しました。救急車が到着するまでの間に、妻の意識は回復しましたが、救急隊員に事情を説明して搬送してもらおうとすると、妻が「いやだ!」拒否しました。「病院で診てもらったほうがいいですよ」と説得していただいたのですが、打撲した膝もみせるのを嫌がり、血圧も測らせてくれない状態。救急隊の方より、「本人さんの搬送拒否があると、無理やり搬送できませんので、ここは一旦引き上げますが、容態が変わるようなことがあれば、また直ちに連絡ください」と話され、救急車は引き上げました。
やむなく、普段かかりつけの近くの病院まで行きましたが、整形外科の担当医が居られず、診療時間も過ぎていたので、「他の大きな病院をあたってください」と言われガックリ。家にもどり、とりあえずモーラステープを貼り様子を見ることにしました。幸いその後の意識消失はなく、なんとか家の中を歩いています。
「認知症」で、正しい判断力が働かない場合、代わりに、家族が救急搬送を要請しても「本人の意識がない場合を除いて本人の同意が得られないと無理に搬送できない」とのルールがあるのです。今後どうしたらよいか悩んで念のため、自治体消防署救急本部に電話して、こういった場合認知症である「精神障害者保健福祉手帳」を提示して家族がお願いしても同じですか?」と訪ねたところ、やはり「同じ結果」とのことで、がっかりしました。
認知症の症状の一端の「拒否」なのに、正常な神経の人の「拒否」と全く法律上一緒なのでしょうか?認知症の人の家族は、正しく意向を伝えられない本人に代わって代弁する「後見人」だと思います。「医療を受ける権利」を守っているのか、阻害しているのかとても考えさせられます。こういった場合どのように対処する方法があるのでしょうか。

心の張りが失われていく岐阜県・Cさん 男

特養に入居中の家内への食事介助が自由にできなくなって1年半以上になります。それまでは週に2回行っていました。
今まで何とか食事介助をすることで保っていた介護者としての心の安定が失われ、不安定になってきています。今の私は介護者と呼べるのか?家内の心の中の私はどんどん小さくなっていないか。家内のことを考えながら何もできない自分。昔を思い返すだけ。心の張りがどんどん失われていく。
2週間に1回のパネル越し面会は15分。私と家内の心を満たすには短かすぎる。早くワクチンがいきわたり、以前のように食事介助、直接触れ合える世話が一日も早くできるようになることを今は願うだけです。

介護少しずつ始めました北海道・Dさん 女

5年前位から両親の介護を少しずつ始めました。父が最初で、母も同じように認知症が始まっていました。3年前には、夫がレビー小体型認知症になりました。中にいると、やっぱり分からないものだと思います。
もっと初期に分かっていたら、お互いにもっと良い方法があったのに、一緒に頑張れたのにと思います。薬も大事です。認知症に関するいろんな知識がもっと広がるといいのに…、何かできないかと思います。

ー 私の介護体験談 ー

ともに歩んで京都府支部 60歳代

早め早めの対応が肝心

義母(95歳)は、認知症を発症して11年目にグループホームに入所しました。デイケア、ショートステイ、グループホームとその時々の状況に応じて利用してきました。利用前には全て下見に行って、家族が気に入った施設にお世話になっています。このことで家族は大きな安心感を得ています。それができたのは早め早めの対応を心がけて、施設を選ぶ時間的な余裕があったからです。そして、自宅で介護してきたからこそ、職員の方が笑顔でお世話をして下さっていることがとても有り難く思え、感謝の気持ちを持つことにより良好な関係が築けていると思っています。

よりよいケアを受ける為のステップアップ

在宅介護から施設入所に移行する時に、「施設に入れる」という表現を使うことが多く見受けられます。「施設に入れる」と言うと家庭では面倒が見きれなくなり、仕方なく他所にお願いするような後ろめたさが付いてくるように感じます。本来はそうではなくて、よりよいケアを受ける為のステップアップではないでしょうか。また、施設に入所しても形を変えて介護は続きます。
私はコロナ禍になるまでは、毎週一回程度、単身赴任の夫は月一回程度面会に行っていました。頻繁に行くと職員の方とも顔なじみになり、生活の様子を細かく話をしてくれます。入所当時は面会に行くと個室で過ごすことが多かったのですが、会話が成立しなくなってからはデイルームで他の入所者さんと楽しそうに話をして、笑い声を聞いたりしていると、とても機嫌が良く、そういう関わり方も有りかなと思いました。最近は2か月に一度ほどガラス越しの面会をしています。手を握って暖かみを感じながら寄り添える日が再び来ることを心待ちにしています。

穏やかな日々を願って

グループホームに入所した際に、施設の退所基準の説明を受けました。体が元気な認知症の方に特化した施設ですので身体的介護度が上がれば退所しなくてはなりません。その時に転所先がタイミング良くみつかるかどうか不安はありますが、義母の状態に一番適した環境で過ごしてほしいとの願いを優先させたいと思います。今の施設は本人も家族も大変気に入っていて一日でも長く居させて欲しいと願いつつ、「そろそろと思われたら早めに転所の相談をさせて下さい」とお願いしています。現在は車いすの生活となり、グループホームの特長である「日常生活がリハビリ」「できるお手伝いをする」ことは望めませんが、温かい雰囲気の中で老いの哀しみも忘れ去り、穏やかな日々が続くことを願っています。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。