体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2023年4月号(513号)

ー お便り紹介 ー

別居でも世帯は一緒熊本県・Bさん 男

私は、脳梗塞(平成8年発症)の後遺症と、5年ほど前から脊柱管狭窄症の持病で、室内もクルマ付きの歩行器を利用しないと自力移動が無理になりました。また、右脚の筋力もだんだん弱り、手放しで両脚での直立不動ができなくなりました。
85歳の妻は、昨年2月に大腿骨骨折のため、病院に入院し手術を受けましたが、車椅子生活になり、グループホームでの生活は無理があって、5月から特別養護老人ホームに転住しています。そこは、2階建てで、入居者は20人くらいでしょうか、職員の方々の心の行き届いたお世話をいただき、入居者は十分満足しているのではないかと思います。私も心から感謝し、安心しています、住まいは別居ですが、世帯は一緒です。

ピアサポートに感動静岡県・Cさん 女

1年前に主人が「若年性アルツハイマー型認知症」の診断を受け→PET検査→新たな認知症→病名を聞かれたら「軽度認知障害」と答えてくださいとの事でした。空白の期間に、こんなサービスがあったらいいなぁと感じた事を聴いてくれるところを探していました。
私自身が2年前から介護の仕事に就いています。一部だと思いたいのですが、介護現場の取り組みにも疑問を持っています。介護に関わる方たちの意識改革も強く望んでいます。ピアサポートを1回受けたあとの主人の変化に驚き、感動しています。ピアサポートにも興味があります。

独り言でリセット愛知県・Hさん 女

9年前、アルツハイマーと血管性認知症と診断された義母は、急激に進行することもなく、デイサービスを楽しみに、自宅で同居が続いています。よその人から「認知症じゃないんじゃないの?」などと、私の努力や苦労は存在しないかのような声かけには、適当に言葉を返しています。
あまり進行していないということは、初期のような状態が続いているのです。①診察に出かけようと何度も促す私、行きたい義母、でも忘れて準備ができず、お昼になり「そう言っといてくれれば準備したのに!」と怒られる。②家族にコロナ陽性確認があった時、常時換気のため、窓や戸を少し開けていましたが、義母が去った後は閉めてある。③保湿ローションの残りが少なくなり、使い切ろうと逆さまにして置いたのに、気付くと元に戻してあります。
「あ〜あ、可哀想な私…」と独り言を言えば、リセットできるまでに慣れて、穏やかに暮らしています。

ー 私の介護体験談 ー

「娘の思い・母の思い 〜生きるということ」新潟県支部 60歳代

娘が認知症に

娘は34歳で認知症と診断されるまで約8ケ月かかりました。診断がつく前年に私の父が癌でもう何日ももたないと言われた時、看病の為に帰省した娘の変化に私も気がつきました。
娘は、その年に自宅の引っ越しをすることになったのですが、「何で手続きをするのにいちいち考えながらでないとできないのだろう」と疑問に思い受診したようです。
娘が腸炎で入院して在宅への退院に向けての準備が始まった頃、病院から連絡がありました。呼吸音が異常ということで検査の結果、気道が硬く狭くなっていて酸素吸入が必要で痰も30分ごとに引かなければならないので在宅は難しいと言われました。
私は、なかなか気持ちの整理がつきませんでした。今まで診て貰っていた先生に相談したり、訪問看護の看護師さんやケアマネさんにも話を聞いてみて、在宅介護は出来なくはないけれど、付きっきりになることやサービスも限られてくることを考えました。施設の看護師さんからサービスの見直しもそれとなく伝わっていたこともあったので決心がつきました。
私の母からも『病院で看てもらえれば、今まで心配していたことや不安も無くなるよ』と言われました。

娘の思いと私の思い

娘が発病してから3年目くらいの頃、唯一ひとすじの光だった新薬の治験が年齢制限で対象外になりました。その時、私や主治医に『動けなくなったり食べられなくなったら終わりにして』と言っていたのに、私にはそれが出来ませんでした。
だんだん食べられなくなり体重が30キロを割るようになっても、娘は胃ろうの話をすると泣いて首を縦に振りませんでした。言葉は出なくなっても『動く屍になるのは嫌だ』と言っていた娘の意思はそのままだったのだと思います。主治医の『おばあちゃんとお母さんのためにもう少し頑張ってみよう』の言葉にようやくうなずいてくれました。
あれからもう7年経ちます。『これ以上辛い思いをさせたくない』と思いながら毎日を過ごして来たつもりだったけれど、はたして娘にとってどうだったのでしょう。その時々の決断は本人が出来ないし本人に相談することもできない中で間違っていたかも知れないと思い悩みます。
『わたし、生きていて良いの』と目にいっぱい涙をためて問いかけた娘は、私のしてきたことを受け入れて許してくれているのだろうか。今も答えは出ません。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。