体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2023年8月号(517号)

ー お便り紹介 ー

忙中“歓”あり愛知県・Aさん 男

一人暮らしの母を介護し始めて数年になる。当初は自身、まだ食事作りを少しはすることができた。今はもう包丁を持って野菜を切ることは危なくてできない。記憶力に加え視力もかなり低下してきた。それでもせめて野菜を洗ったりとかスープの味見をしてもらっている。介護はやることが一杯ある。レトルト食品宅配サービスなど楽ちんな選択肢もいろいろあるがしかし何か寂しい。一品でも手作りのものを食べてもらいたい。これは私の「こだわり」です。「一人分」作るのは案外手間である。たびたび失敗。最近少しずつコツが分ってきた。味付けに“どうみても失敗した”と思った時も、母は“おいしい、おいしい”と言って食べてくれる。一人分作るのはまさに忙中“歓”ありです。

私の場合京都府・Eさん 女

私は甲状腺ホルモンへの病気で仮性認知症になりました。その1つに電化製品の事件があります。入院中に携帯電話が通話しなくなって娘に何度も「故障してる」とせがみました。主人に電話してもつながらなく看護師さんに「私は主人に嫌われてるから電話に出てくれない」と言ってました。実は電話を使いこなせなくなってたのです。
退院後の話しですが、みごとに電化製品がつぶれていきました。
炊飯器が故障してお米が炊けない。洗濯機が動かなくて業者を呼ぶ。台所で焼きそばを焼いたらお肉が真っ黒コゲ。
主人には「台所に立つな」とおこられました。
一番戦ったのは掃除機です。普通の掃除機なのに組み立てやコード配線、ゴミ処理。一時間以上かけても使えなかったのです。
「電化製品が全部こわれた!!」と思ってました。本当は頭の中がごちゃごちゃで使えなかったのです。その時の思いは本当に戦いでした。
現在はおかげ様で薬や手術で甲状腺の病気が治まり仮性認知症は治ったつもりです。でも出来ていた事や出来なくなる悔しさは忘れられません。

感謝の気持ち福岡県・Gさん 女

主人81才、胃ろう、気管切開をしています。看護小規模多機能施設に滞在中。1ヵ月に1回2泊3日で自宅に帰っています。3ヵ月に1度病院でペグ※を交換しています。ユマニチュード入門を勉強し、ケアする人は環境の一部だと知りました。「見ること」「話すこと」「触れられること」だと思います。今は感謝の気持ちを伝えたい。ありがとうございます。
※胃ろうチューブ

夫からのプレゼント奈良県・Hさん 女

夫が亡くなってもう5ヵ月になります。これからが介護の本番だという時に、急に逝ってしまい、当時は悲しみよりとまどいの方が大きかったです。もっとしてあげられる事があったのではと思う一方で、だんだん出来なくなること、分らなくなることへの恐れや悲しさ、苦しさから解放されたのだという思いもあります。優しかった夫は、最後に自由な時間を私にプレゼントしてくれたのかも知れません。

ー 私の介護体験談 ー

「妻の介護で人生が広がる」福岡県支部 70歳代

「家族の会」へ入会

私は要介護3の妻を介護しています。妻68歳、私75歳、子どもたちは遠方に居り、二人で生活しています。介護認定を受け介護の世界が始まった時は、よくわからない、どうしたらよいのだろうかの毎日でした。たまたま新聞の見出しで、認知症の人と家族の会を知り入会し、介護中の方、介護OBの方々から、体験事例、介護の取り組み方、介護保険制度についてのアドバイスをいただき、大変参考になり、頭が軽くなっていきました。それでも、介護を進める中で、うまくいく時、うまくいかず次はどうしようと思い巡らす毎日でした。

さろーんへの参加は有益

サロンやカフェへの参加は、本人はもちろん、介護者の私にとっても本当に有益な場です。現在、「さろ〜んバスの会(県クローバープラザ)」、「さろ〜んちくし野(筑紫野市内)」、「ツクタベ(福岡市内)」、「なんぱく(福岡市内)」のサロンに参加しています。これ以外に福岡市内のカフェにも参加しています。合わせると月に10回超の参加です。これ以外にデイサービスに週2回行ってます。行ける範囲のサロンや集まりの場には、できるだけ参加するよう車で走り回っています。サロンでは、本人、介護者、支援者が皆で分担し、食事をつくり、楽しく会食や会話をして、ゆったりした時間を過ごしています。その中で介護者間の情報交換はもちろん、支援者の方々からアドバイスをもらい、翌日から「よし、がんばろう」と力が湧いてきます。更に、妻に声掛け、寄り添ってもらい、本人にとっても非常に有効な場と感じています。これらの結果と思いますが、最近妻は皆さんから、「表情がよくなったね」「笑顔がいいね」「言葉が出たよ」とよく言われます。家でも同じような感じです。

心を通わせて接するのが大切

これらのことから、認知症の人でも、心に感じる気持ち、それなりの感情をしっかり持っていると実感しています。
認知症の人は何もわからない、何を言っても通じないのではないのです。私は普通の人と接するよう、きちんと分かるように話し、お互いの心を通わせるような気持ちで接しなければと思います。家の中に閉じこもらないで、できるだけ外に出て、いろんな体験、刺激を受けることが大事だと思います。

妻とともに成長

私も妻と同行する中で、いろんな場でいろんな体験をすることで、介護への取り組みの向上だけでなく、自分の人生の世界が広くなったように感じます。
これからも、妻の介護をしながら、妻と共に私も成長していきたいと思います。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。