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認知症の人と家族の会
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」2014年7月号(408号)
ー お便り紹介 ー
悲しい、くやしい思いです。新潟県・Mさん 68歳 女
認知症の老人の方が、駅構内で事故にあわれた事件の判決の新聞に高見代表の言葉がありました。
何年もかかって、認知症の本人の心を聞く事が大切という事や、徘徊も心のままに止めない方向に進んできた環境がまた、元に戻って閉じ込める方向に進んでしまうのではないか。そして、老老介護の相手に24時間の目を要求する事がどういう事なのかと、認知症の家族を身近に持つ身には、悲しい、くやしい思いです。
いろいろな所で福祉は後退していくような感じがします。何だか行政やお偉い方々には通じないもどかしさが増した判決でした。
安心な社会を望みます埼玉県・Aさん
先日、徘徊しても安心な社会を目指す地域づくりという社会の風潮に逆行するような判決が出ています。
85歳の妻に見守りの義務を果たせるでしょうか・・・。たしかに、電車をとめてしまったことは事実で事故は問題としても、国で保障はできないのでしょうか。生きている時は安心とその人らしさを守る事を保障できる世の中がくることを望みます。そんな世の中を作らないと!
徘徊による行方不明福岡県・Sさん 63歳 女
認知症の人の徘徊による行方不明者が一万人近くになるというニュースにヒヤリとした。
独居の母(要介護1)はサービスの入らない日曜日、一人でパスに乗り外出していた。何事もなく帰れたが、確かに家計簿にバス代が計上されていた。本人は「包丁の良いものが欲しいので買いに行く」と言っていた。しかし、訪問看護師さんは杖をついてやっと歩いている状態で行く事はないだろうと言っていたので安心していた。「お金が足りなくて買えなかった」と言うので母の行ったというM店に問い合わせると、その店は日曜日は休みで、母の行ったという場所に店はないと言う。調べてもらったが、母に似た人は来ていない。他に包丁を売っている店はない。母はどこへ行ったのか謎のまま。もう何年もバスに乗って買い物に行った事はなかった。バスの乗客も運転手も道行く人も、ヨロヨロと杖をつき歩く認知症の母に気付かなかった。
安心して入所できる施設を神奈川県・Kさん 64歳 男
父が末期がんで死去する3ヵ月前に仕事を辞め、認知症の母をこれまで3年見守ってきました。今年に入り、嚥下障害、ショートステイ先での3回の転倒による頭の怪我、妻の体調の不安定などから、いつまで待っていても入れそうにない特養はあきらめ、近くのグループホームにお願いしようと考えております。
それにしても、在宅介護では夫婦でのゆっくりとした時間を過ごすことは不可能です。ここならばと安心して入所させられる施設を探すのも大変なことを痛感しています。自分たちの時間がどんどん流れていってしまうことに危機感を感じているこの頃です。
ー 私の介護体験談 ー
母とともに暮らす日々広島県支部会員
サービスを利用しながら
朝、母の部屋へ行き「おはよう・・・」と声をかけカーテンを聞け、ベッド上でオムツ交換、着替えをさせ車椅子に移乗しての食事が日課です。実母(87歳)は要介護度5、半身麻揮で寝返りも打てません。少し前までは枕元のトイレまでは全介助で行っていましたが、今はそれもできなくなりました。
週3回のデイサービス、1回の訪問リハビリと訪問看護、そして4月から家庭医の往診を週1回、月に1泊くらいのショートステイを使っています。
母の病気
病気を振り返りますと、「あれ?」と思ったのは平成21年。当時通院していた病院へ毎朝「薬をもらいに行く」と言い始めました。診断の結果、認知症と判明しても20年近く続けたゲートボールに、それから2年近く通いました。
平成23年3月、家の中で転倒。腰椎圧迫骨折で3ヵ月間の入院から一気に認知症が進行しました。「金を盗られた」などの「物盗られ妄想」に加え、すさまじい周辺症状に振り回されました。興奮すると手当たり次第に食器や家具を投げ、大声で叫ぶ、殴りかかる、かみつくなどの暴力。あれだけ物静かだった母からは想像もつかない姿に変貌し、精神的、肉体的にまいってしまいました。
介護者への支援
今の介護保険制度では本人への支援はありますが、介護者のサポートは少ないため、認知症と診断された時から、認知症と介護家族の会(東広島市)へ参加し、様々な症状が出るたびに愚痴をこぼし、支えられました。午前は介護者の悩みを話し、午後からはリラックスできるよう歌って楽しい時間を過ごします。自分一人で抱え込むのではなく、あらゆる制度を使って一日にほんの数分でも自分が自分でいられる時間が介護者には必要であることを、介護を通して学びました。私の場合はオカリナとパソコンです。
最近の母は、少しずつ嚥下が難しくなり、褥瘡の心配も出ています。症状の進行とともに住み慣れた家での過ごし方は人によって違いがあるようです。
現在の母
在宅療養の良さを、5月に経験しました。来年米寿を迎える母ですが、今年のゴールデンウィークに親族15人で祝いました。母には同じ料理をミキサー食にして食べさせることができましたし、誕生ケーキのロウソクを吹き消す場面では、5歳から10ヵ月の5人のひ孫が、16本のロウソクを競って吹き消してくれ、大爆笑しました。
母は意思を言葉で言える時もありますが、それができない日も出ています。でも表情、態度で私に教えてくれます。これからも、母の温もりを感じながら一緒の時間(とき)を過ごします。