体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2015年12月号(425号)

ー お便り紹介 ー

家事を頑張っている母京都府・Dさん 60歳代 女

87歳の母を遠距離介護中です。 隔週で妹と 交代しながらの介護を始めました。 いつもは老老介護状態ですが、 家事を一手に引き受けてなんとかやっている母。よく頑張っているなあと思っています。認知症の学習を深め、今後、出来るだけ上手く介護がまわるよう努めたいです。
先日、退職互助組合主催の学習会で講師をされた「家族の会」の現役男性介護者の方の話を聞かせてもらいました。大変中身の豊かな話で、感動しました。是非私も「家族の会」に入りたいと思いました。

少しずつ認知症に近づいている母東京都・Fさん 50歳代 女

78歳の母は今年の1月にインフルエンザで 脱水症状になり、入院しました。入院中に病院内を俳個したとのことで、退院を勧められました。その後も認知症のような言動が続きましたが、少しずつ元の状態に戻り、6月には内科(脳外科)の先生に診ていただきました。CT画像と質問によって、現時点では認知症ではないという診断でした。
それから、4カ月程たちますが、私の目から見た母は、少しずつ認知症に近づいていっている気がします。平日は毎日、実家と自宅を往復して、母の食事の支度等をしています。何度か、電話相談に悩みを聞いていただきました。心が救われた思いがいたしました。

元気でいる間に新薬を奈良県・Gさん 70歳代 女

夫73歳、前頭側頭型認知症を発症して9年。グループホームに入居して4年。週2回面会に行きます。妻である私の事は判っているような、いないような…。ハグをしたり、頬ずりをした り、手を握りしめたりすると応じるので、自分にとって最も身近な人だとの思いを持っていてくれているのではないか。だから、諦めず、希望を持って日々暮らそうと努力しています。
正面切っては涙も見せられないので、夫の横顔を見ていると、涙がこみ上げてきます。「また、元気になって二人で貴方のうちで暮らそうね。待ってるからね」と会う毎に語りかけては、涙声になります。元気で生きている内に一刻も早く新薬が開発されればと、願って止みません。

ー 私の介護体験談 ー

母を介護して愛媛県支部

犯人は、身近にいる私

平成13年11月にアルツハイマー型認知症と診断された母は、現在90歳で要介護2。一人暮らしです。同地域にいる私達夫婦が見守り介護しています。発症した当初、遠方にいる弟と妹からの協力は得られませんでした。母は、物盗られ妄想がひどく「無くなった、盗られた」と言うのは日常茶飯事。多くの場合、症状は一番身近で世話をしている人に強く出るとされます。犯人は身近にいる私のようです。
毎日同じ事を繰り返し聞かされるだけでもうんざりするのに、激しい物盗られ妄想、理解しがたい認知症の症状に振り回され、精神的、肉体的に疲労困ぱいしました。

仲の良かった弟とは喧嘩

遠方の弟に協力してもらいたい。そして一緒に母を支えていきたいと今までの経過を説明しましたが、「年のせいだろう、心配のしすぎだ、あまり大げさに言ってぼけ扱いしないでよ」と取り合ってくれません。どうやら母親の認知症を認めたくないようで、精神科を受診させる事に抵抗、全く聞く耳を持ちません。弟は近所でも有名なしっかり者の母を自慢に思っています。
母と弟の電話応答は少しもおかしいところはなく、たまに帰省した時等は、「シャン」とするので母に老化で錆びついた部分があるとは思いません。私は理解してもらいたいと、弟へ頻繁に電話をかけるようになりました。通話中に電話が切られて「ツーツーツー」と一方通行、私は独り言を言っている状態となる事があり、仲良しだった弟と母の事で喧嘩するようになりました。

「ばあちゃんを頼む」

平成27年1月、母が転倒して胸骨多発性骨折となり入院はしないで、私が1カ月間ほとんどつきっきりでした。その分、母と普段はない濃厚な時間を過ごしました。
物盗られ妄想が酷く頑固さに拍車がかかり、思うようにならないとヒステリックな声を出したりします。認知症の増悪が見られ症状の進行を心配しましたが、気丈な母は以前と変わらないほどに劇的な回復を見せました。連絡で帰ってきた弟は母の手を取り「何も変わった事ないねえー」と言います。あんなに大変だったのに何にも分かってくれないと私は腹がたちました。そして今まで母の事を書き記しておいたノートを見せました。弟は、何とか分かってくれた様子で「ばあちゃんを頼む、いるものがあれば言ってくれ、こんなはずじゃなかったのに参った」と現実を受け容れられず、心の動揺がみられましたが、なんとか理解したようでした。

「家族ケア」のスタート

私は家族で介護を続けるには十分な情報交換や役割分担が必要だと話し合って、家族でのチームケア体制をつくり、弟に毎晩電話して母の一日の様子を聞くよう頼みました。そうして徐々に受け容れてくれるようになって弟の遠距離介護が始まりました。”家族だからこそ”の思いを大切にした「家族ケア」のスタートとなりました。
少しでも長く在宅で生活できるように「家族の会」の皆さんに支えていただきながら介護の道を歩んでいきたいと思います。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。