体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2016年4月号(429号)

ー お便り紹介 ー

見守っています大阪府・Cさん 70歳代 男

家内がアルツハイマー型認知症と診断されたのは、2008年5月です。医師からは「火の用心」を言われ、ガスコンロは自動的に消えるものに買い替えました。当初「こんなん使いにくい」と言っていた家内も、数カ月後には使いこなせるようになりました。
お酒が好きで、「気分が悪いとか、むしゃくしゃする時に飲むんや」と言っています。医者からは、「数値が高いから飲まないほうがいい」と言われているので、飲まないように言うともっともなことを言います。「私が飲まないからわからないのだ」と言う時もあります。
近くのスーパーに買い物に行くのですが、同じ品物を毎回よく買ってきます。暫くすると自分が買ってきたのに、私が買ってきたように言います。「医者に行くのがいや」、「外出はいや」、「風呂も嫌い」とかありますが、家内の健康に気をつけています。徘徊はありません。
そんな家内ですが、家で私が見守っています。私も持病があるので、健康に気をつけて長く長く生きたいです。

わからないことだらけです東京都・Eさん 50歳代 女

62歳の夫は2年前にアルツハイマー型認知症と診断されました。悩みを誰に言ったらいいのか、これからどうなるのかなど、わからないことだらけです。
認知症は80歳くらいのお年寄りがなると思っているところがあるので、なかなか近所の人には言えません。介護保険を使おうか?認定を受けられるかもわからなくて迷っています。
まだ、自分の事ができていますが、昨年よりは少しずつ悪くなっているかなとも思っています。

笑って過ごせる日々を大切に宮城県・Iさん 50歳代 女

母の介護のため、自分の考えていた第2の人生が全く違う方向へ行く。そのことへの苛立ちが怒りとなり、悶々としていました。私の場合は、何をどうするではなく、「心のありように最大の困難がある」と気づくまで時間がかかりました。「愛する母の人生の終わりに寄り添うことも、自分の第2の人生に入っているのだ」と覚悟をしました。
認知症の人とうまく生活していく技術は、この「家族の会」でたくさん仕入れることができ、そのことは具体的な援助となりました。心のありようは自分で見つけることで、初めて納得のいくものなのでしょう。人の言葉ではなく…。
母も自分も、そして自分の家族も笑えるような日々を大切にしたいと思うのです。

ー 私の介護体験談 ー

「デイバスの 夫(つま)に投げキスを する我に 周り見渡し 受け返し行く」 ~NHK 介護百人一首富山県支部

認知症が進み、一人で出掛ける

昨年の事…当時75歳で要介護1の夫は、車の運転を止めてからますます認知症が進むのがわかります。
ある朝7時過ぎに姿が見えず、家族に聞いても分らず、私も徘徊までとは思わずにいました。お腹が空いただろうとおにぎりと漬物を持って探しに行こうとした時、「9時30分頃、お宅のお父さんが実家の方(夫はムコ殿です)に行ったみたいよ」と電話、やっぱり!実家の手前で連絡を下さった方に会い「今、実家の池の前におられるからね」と、お礼をして行ってみるともうそこにはいません。高い所から見ても姿は見えず…実家は空家状態です。仕方なく元の道を帰る途中で夫に会え、「乗る?」と優しく言葉をかけると車に乗ってくれました。

この先どうなるの…

疲れた顔で眼鏡もかけず。あの頼りがいのあった夫が…私は虚しさ、悲しさ…いつまで続くの、この先どうなるの…。家に着いても車から降りず、「俺ここで少し寝る」。暫くして温かい牛乳を持っていくと「美味しい」、そのまま笹川のつどいに向かいました。
つどいではKさんのご主人は夫が同じ事を何度も言うのに、にこにこして聞いて下さり、私もありがたく感謝。「このテーブルもけやきでいい台やねぇ、細工が細かくていい仏壇だちゃ」「こういう所、来たが俺、初めてやちゃ」と何度も来たことを忘れて…。
夜、若夫婦が早めに帰ってきて、「どこに居たけ…、やっぱりあそこか」と賑やかになったが、また姿がない。「またか!」と言いつつ外は真暗、今度はGPSを付けていたので迎えに行けましたが、車に乗ろうとしません。息子と二人どうにか車へ、家に帰ろうとしますが、納得しません。家に着いても背中を押し、手を引っ張り、ようやく中へ。息子の嫁が「お父さん、心配したよ、一緒にご飯食べよ」の言葉にバツ悪そうな顔で「ハッハッハハ」と笑ってごまかし…、食後は何もせずに炬燵で休みました。夜中恐る恐る夫が居るか覗き込むとお地蔵様のような優しい顔でスヤスヤ~。私は床に入っても眠れず。「いつまでこんな事が続くのか、頑張れるだろうか」。我が家は99歳の母も介護中なのに…私が先に具合が悪くなるのでは…どうにもならん事を…。

見守られている私

「二人みるの大変だろうけど、迎えこんにゃ行かれんがぁ」「ばあちゃんはあんたの命の素、夫は子供達の素だからね、辛かったら周りの人に助けを求めて!」と先日言われた同級生の言葉を思い出しました。
そうやわ、夫の認知症を知っているから連絡を下さり、若夫婦、孫のおかげで和やかさをもらい、近所の人の助け合い、悩みを聞いて楽しみを与えてくれる「家族の会」、デイサービスがあり…と思えば数限りなくある事に…そして、私も見守られている。
さぁ、また前向きに考えて…今日の1日はもろもろの多忙の締めくくりでした。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。