体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2019年5月号(466号)

ー お便り紹介 ー

人の心を推し量ることはできる愛知県・Cさん 女

老人保健施設で介護職員と施設ケアマネを兼任しており、キャラバンメイトの活動もしておりますが、実家の父母のサポートをするのと仕事では、随分勝手が違います。施設での研修をする時にも、実生活での経験を踏まえた話もするよう心掛け、ご家族の気持ちを代弁するようにしています。
先日、ご近所の方に、「いつもあなたのお母さんに愚痴を聞いてもらっているの。すぐに忘れちゃうから話が外に漏れないし、安心して話せる」と言われました。言われることの主旨は理解できるので、いちいち腹を立てても仕方ありません。でも母は、認知症になる前から口外してもよいことといけないことの分別はしていました。今でも、人の心を推し量ることのできる優しい母です。そのような話もしながら、一人でも多くの方に認知症の人の尊厳について考えてもらえるといいと思っています。
現在、アルツハイマー型認知症の母を父がサポートし、ご近所の方の助けをいただきながら二人で何とか暮らしている状況です。最近になって父にも物忘れが出現し、認知症ではないかと感じています。

唯一の家族を待つ義母茨城県・Dさん 女

長年、義父母を遠距離介護してきました。その後引き取り、義父を看取り、義母は自宅近くの特養に入居しました。しかし、「介護家族」は続いています。特養からは、週1回以上お呼び出しがきます。義母も私の訪問を心待ちにしています。義母にとっては、誰だかわからないけれど、唯一の「家族」です。いつも待っています。

介護離職しました東京都・Eさん 男

アルツハイマー型認知症と診断された80歳代の実母は現在、介護度区分変更申請中です。身体症状はほとんどなく、精神症状(妄想、帰宅・外出願望、徘徊)が強く出ています。
母は2014年ごろ、MCIと診断されたようですが、家族は知りませんでした。2017年より、私が一人で介護しています。介護離職し、現在パート勤務ですが、症状により、辞める可能性があります。介護のストレスが大きく、メンタルに負担を感じています。

ほっとできました奈良県・Fさん 女

義母のことで悩み、いろいろ検索している中で、貴Webにたどり着きました。見せていただいていると、なんだかほっとできました。今まで自分で考えていたこと以外のことが見えるような感じです。
義母が2月15日に自宅で倒れ、救急車で病院に搬送されました。一夜にして、歩けず、自分で食べられず、話せなくなりました。腎盂炎と脱水で27日間の入院後、グループホームに入居。担当の医師から、入居4日目に栄養不足を指摘され、胃ろうを勧められました。先週、別の病院で胃ろうの手術を受けました。あたふたした1ヵ月を過ごしました。
それに伴い、介護認定の変更を行政に申請しましたが、今後がとても不安です。私たち夫婦の想定外の状態ですし、どうしたらいいのか、ネットや図書館の本では、答えのヒントになるものがありませんでした。認知症についてもっと学んだり、他の人との情報交換をしたり、相談をしたいと思っています。

ー 私の介護体験談 ー

たくさんの思い出を残して〜17年間の介護を振り返って〜岡山県支部 60歳代

 

夫は52歳の時、「意味性認知症」と診断をうけました。病名を告げられた時これから夫がどんなふうになっていくのか、頭の中が真っ白になったことを思い出します。夫はどんな気持ちで話を聞いていたのかと、今でも思います。夫が認知症であることが分かってから、息子、娘、兄弟で見守り続けることにしました。

自転車で「徘徊」の日々

59歳ころから症状も少しずつ進み、そのたびに介護の方法を考えて見守ってきました。60歳のころから自転車に乗って、毎日出かけるようになりました。そのコースは3コースあり、毎日どこへ行くのか分からないので、ズボンのポケットにGPSを縫い付けました。自転車で出掛けて交通事故にあった時は辛く、悲しかったですが、夫がうれしそうな顔をして出かける姿を思い出すと、今は自由に自転車に乗せてあげて良かったと思っています。
夫がよく言っていた言葉が、「頑張ってね、頑張ってね」でした。夫を介護している中で、よくこの言葉を私に言っていました。この言葉を励みに介護していました。
その後、施設に入居して穏やかに過ごしていましたが、「誤嚥性肺炎」になり、入退院を繰り返しました。3回目の入院の時、主治医から早急に「胃ろう」を造ることを勧められました。私も娘も選択に苦しみ、悩みました。なかなか答えが見つからず、いろいろな人に尋ねたり、話を聞いたり、本で調べたりしました。それでも答えは出ず、悩んだ期間がとても長く感じたように思います。出した結論は、「胃ろう」を造ることでした。「この答えが正しい、間違っていない」と何度も思ったことを思い出します。夫は、「胃ろう」をして3ヵ月後に亡くなりました。

「家族の会」との出会い

夫が亡くなったことは辛いし、寂しかったです。でも、今は夫に感謝しています。夫が私に認知症の様々な症状、出来事を身をもって体験させてくれたからです。大変なこと、辛いことがたくさんありましたが、「家族の会」のつどいで同じ悩みや思いを持つ方々と出会えて、自分自身、勉強することができました。時には泣きながら悩みを聴いてもらい、帰る時には「困ったことがあったら、いつでもいいから電話をかけてきてね」、「一人で悩まないで、またつどいに来てね」と言ってくれた言葉は、今でも忘れることができません。
「認知症の人と家族の会」に出会えたことに感謝しています。ありがとうございました。

夫が亡くなった後、小学校2年生の孫が手紙を書いてくれました。

〜じいちゃんの夢を見たよ〜
じいちゃんがなくなったと知って、私はかなしくなりました。私はじいちゃんがなくなってから、いろんなゆめを見ました。じいちゃんと絵をかいたり、いっしょにみ
かんを食べたゆめを見ました。じいちゃんとの思い出が一つできました。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。