体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2020年12月号(485号)

ー お便り紹介 ー

手術で状況が劇的に良くなった母東京都・Aさん 女

おととし70歳台の母が認知症と診断され、私(娘)は別居、父が介護していました。
今年の春、母の症状が一気に悪化し、転倒したり、ベッドから起き上がることができなくなり、トイレに間に合わないことも増えていました。その後、自分の名前も書けなくなり、夜中に台所で排泄をすることもあったようです。あまりにも急激な悪化に母が通うデイサービスの方にすすめられ病院を受診すると、正常圧水頭症の疑いを指摘されました。
さらに水頭症に詳しい病院で診てもらったところ、「典型的な水頭症」と診断が下りました。
その際、2年前認知症と診断した医師が「水頭症の疑いもあるがおそらく違う」と言っていたこと、また水頭症かどうかは検査でわかることも知り、当時、なぜ医師が検査の話だけでもしてくれなかったのかとショックを受けました。
手術から5ヶ月が経過し、自分の名前すら書けなくなっていた母は、家族の夕飯を作ったり、一人で出かけたりすることもできるようになったのです。母の場合、3年前水頭症の典型的な症状であるすり足歩行になり、尿失禁、認知機能の低下も見られていました。認知症と似ているため、見つかりづらい病気だそうです。母はアルツハイマー型認知症も併発しているため、いつかまた介護が必要になる日々を迎えることも覚悟していますが、手術によって状況が劇的に変わりました。何よりも母の声が明るくなり、本人も喜んでいることが嬉しいです。

農作業がライフワーク群馬県・Dさん 男

要介護2の87歳の実母は、後天性赤芽球癆(せきがきゅうろう)という血液を造れない難病を抱え、背骨の圧迫骨折が3カ所あって、痛み止めを常用していたところに、新たに認知症が加わりました。
このような体調でありながら、ライフワークともいえる農業に従事し、畑に出て野菜を出荷しています。当然動作はにぶく、畑や風呂場で意識を失い倒れることも少なくありませ
んが、それでも農作業を止めようとしません。
本人にやりたいことがあり、それを思い通りにやり通せると、認知症であっても日常生活に支障がでません。トイレ、風呂、食事もほぼ自立できています。その姿には人としての尊厳があり、神々しくもあり、他を寄せ付けない威厳に満ちています。

「絆」の大切さを実感岡山県・Eさん 女

感染症によって世界中の人がこんなに脅かされる時が来るなんて、想像もしていませんでした。人と人とのつながりを、ウイルスによって断ち切られるのは辛いですね。でも今の時代、いろいろな連絡手段があって良かったなと思うことと、「緋」の大切さを実感しています。
認知症の人にとっては、何よりも暖かいふれあいが大切なのですが残念です。皆さまのお力、頼りにしています。

ー 私の介護体験談 ー

認知症の人の家族となる栃木県支部 60歳代

ある日の受診の様子

夫は、3カ月に1回の診察を受けています。ドネベジルを内服してから1年9カ月が経ちました。薬には過剰に期待しないこととわかっているけれど、やっぱり、期待してしまいます。
先生は夫に最近の様子を聞いています。「どうですか変わりないですか。どこかに行ってきましたか」、夫は「特に変わったことはありません」と答えました。
私は「4月に二人で旅行に行きました。毎日庭をいじったり、草を刈ったりしています。最近、いじってもいない物が無くなってしまうと言うことが多くなったんです。薬を増やしたほうが良いのでしょうか」と尋ねました。
先生は、「そうですか。少しずつ進んできたのかもしれませんね。でも、薬より、いろんなところに行ったり、見たりして刺激をいろいろ受けることが重要なので、まあ薬はこのままで良いと思いますよ」 と言いました。
「おお、この先生、良い先生やん」

関わり方の大切さ

最近、認知症の治療は内服治療よりも「チャレンジングビヘイビア(理解しづらい、かかわりづらい認知症の人の行動)」の理解が大切といわれています。
本人の環境を整え、本人らしく生きられるように、できれば、生きがいを感じられるような関わりが大切なのです。認知症ケアの中でそのように学びました。
私も70歳を間近に控えています。体力を維持することとは、体の健康バランスを保ち、精神の若さを保つようにすることと捉え、日々努力をしています。

主治医との関係

皆さんは受診時にお医者さんにいろいろ聞いていますか?
たいていの医師はきちんと答えてくれますよ。ちょっとした疑問でも聞いてみましょう。そして、納得して治療費を支払ったほうが良いと思うのです。お薬代って高いですよね。
お医者さんの前では何も聞けないという方がいますが、聞きたいことを自分でメモしておいて、それを聞くようにすると聞きやすいですよ。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。