体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2021年4月号(489号)

ー お便り紹介 ー

サポートできるか心配群馬県・Bさん 女

80歳台の父は2年程前に軽度認知症と診断されました。父の再婚相手は右麻痺、要介護4で老健にいます。父は介護費用を払いながら、会社、賃貸アパート経営もしています。
同じことを何度も聞き、新しいことや、過去の記憶が抜け落ち、みずから会話をすることがなくなりました。下着、洋服は取り替えず、お風呂にも入りません。車の運転をしているので、免許返納をすすめていますが、本人は納得せず、会社に出勤しています。会社は甥に引き継いでもらい、仕事はしていません。賃貸アパート経営も父がひとりでやっていたため、今後のことと介護費用、生活の維持、相続に頭を悩ませています。弁護士、税理士の方と相談してみましたが、遺言書の書きかえは、父の様子から無理だと言われました。今の父の状態で、とくに、書類関係をサポートできるかが心配です。

ダブルケアは辛かった岩手県・Dさん 女

現在お姑さんはグループホームに入居しています。症状が出始めた頃は、私は乳児の育児中でした。また、同居して介護をしている時に二人目を妊娠し、上の子の育児をしながら認知症のお姑さんを介護する妊婦でした。
いわゆる「ダブルケア」です。ほんとうに辛かった。周囲に介護をしているママ友はおらず、孤独でした。そんな時に、地域包括支援センターが開催する認知症カフェに参加するようになり、少しずつ子どもとお姑さんの両方を連れて外に出られるようになりました。
また、地域包括主催の現岩手県支部代表の講演を聞きに行きました。講師は子連れで講演を聞きにきている私のことを気にかけてくださいました。その後も交流は続き、力をお借りしながら、私もダブルケアシンポジウムを開催したり、ダブルケア当事者同士の交流会を開催するようになりました。

つどいは心を癒す愛媛県・Fさん 女

認知症の父の介護を手伝うためUターンして、あっという間の2年が過ぎました。訪問看護の仕事をしながら、生活は父を中心に回っています。食欲旺盛で、よくしゃべり、よく動く父は週4回のデイサービスに送り出すまで毎回目が離せません。一日中同じ質問を繰り返す父に、頭では理想的な対応がわかっているつもりでも、感情がついていかずついつい意地悪な言葉を返してしまいます。「お前なんか早ういんで(帰って)しまえ!」 と怒らせることもしばしばあります。母と私でお互い父と煮詰まりそうになると、入れ替わりながらその場をしのいでいます。職業上認知症のことは勉強しているつもりの私でも、こんな状態なのです。職場やつどいで日々の出来事を聞いてもらい、笑ってもらうと心が軽くなります。その時は怒りで目がつり上がるような状況でも、誰かに話していると笑ってしまうような話になってしまい、子煩悩な父が私にしてくれたことをたくさん思い出すのです。つどいで私に特別なことができるわけではありませんが、話を聴くことはできます。つどいに誰か話をしに来てくれたらいいなあと思い、参加しています。

ー 私の介護体験談 ー

ただいま妻を介護中福岡県支部 80歳代

妻の認知症のはじまり

私の妻は、要介護2でアルツハイマー型認知症の診断を受けています。もう10年程度前になりますが、親戚の法事に二人で出席し、帰宅すると従弟から電話があり「奥さんは大丈夫ですか」と言われました。私たちの娘は、当時結婚をしていたのですが、妻が従弟の奥さんに「娘を早く結婚させたいので、誰か良い人がいたら紹介してほしい」と相談をしたそうです。それを聞いてショックを受けたことを覚えています。何故なら、いつも身近にいる私が気付かず他の人から指摘されたからです。
それから2〜3年した頃には、妻は家事をすることが難しい状態になってきました。家には私しかいませんので、今まで経験をしたことがなかった、食材の買い物、料理、掃除、洗濯などが一挙に私に押し寄せてきて戸惑いました。しかし、誰にも頼めないので、私なりに全力を尽くして取り組む毎日でした。どうして良いか分からず困ることもありましたが、本を読んだり、人に教えてもらったりして何とか切り抜けてきました。
私が料理を作って、妻が「今日の料理はおいしいよ」と笑顔で言ってくれると、私もやり甲斐を感じ、新しい料理にチャレンジして妻を喜ばそうと意欲が湧き、人生が前向きになりました。

誉めることの大切さ

妻の介護で気づいたことは、叱るのではなく、心から誉めることが一番効果があるということです。妻の場合は、若干オーバ一気味に誉めてあげた方が、本人も前向きになり明るくなって元気が出るようです。
例えば庭の花を妻が花瓶に生けた時、「お前はお花の先生ごたあね、上手やね」とか、歌を唄い終わった時、「あらっ、今唄いよったとはお前や?あんまり上手かったけん、ひばりかと思った」とか、洗濯物をたたんでくれた時、「クリーニング屋さんのごと、きれいにたたむね」とか、氏名、生年月日、住所、電話番号を正しく言えたら「お前は頭がよかね。本当にすごいね」などと言って心から誉めてやると妻の気持ちも良くなり生活上でも良い効果がありました。やはり、叱るのではなく誉めることが認知症には一番効果があるということを体験して強く感じました。
こう言いながら、今でも大声を出して叱ることもありますが、やはり叱ることは逆効果になり、それをグッと我慢して、耐えて心から誉めることが大切だと思います。
これからもこの方法を取り入れて妻との生活を続けて行きたいと思います。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。