体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2021年6月号(491号)

ー お便り紹介 ー

参加して良かった奈良県・Bさん 女

70歳台の夫が認知症と診断されてから徐々に進行していき、将来への不安や悩みで押し潰されそうになった時、同じ介護仲間やサポートして下さる方達との交流で元気をもらい、何とか今まできました。
3月のつどいで多くの体験を聞くことができて、気持ち新たに向き合っていこうと思いました。思い切って参加してよかったです。

一筋の涙青森県・Cさん 男

先日妻の誕生日なので、一回で食べきれるほどの小さなケーキを持参し、ガラス越しではあるけれど、食べさせてもらった。身体、手、顔の動きなどはもう忘れてしまったのか、ただ食べるだけ。時々口に入れた時、眉をつり上げる仕草は意に反した味なのかとも思う。面会の間で何回も妻の名前を呼び、私が来ていることをアピールする。反応は今ひとつだが、いちるの望みをかけてがんばってみる。
今回、食べさせてもらっていたケーキが終わりかけていた時、なぜか頬を伝って一筋の涙がこぼれるのを見落とさなかった。ケアの人に拭いてもらったが、後になって気になって仕方がなかった。悲しい涙か、辛い涙か、はたまた助けての意思表示なのか分からないが、私としては嬉し涙であることを願っているが、やるせない。
帰り際、少し離れた玄関側に車椅子を回して下さって、何ヶ月ぶりかで、手の温もりと先ほどの涙の伝っていた頬を撫でてみる。数秒間のふれあいに満足な思いで「また来るね」と言い残して、施設を後にする。

このままではあかんやろう…京都府・Eさん 女

父は軽度認知障害、母は同時期にレビー小体型認知症との診断がつきました。私は実家のすぐそばに住んでおり、去年の秋から今年1月まで在宅勤務だったので、両親の食事と母の着替えや散歩、体操など、できるだけのことを手伝いました。1月下旬に母が自宅で転倒し胸椎圧迫骨折、2月初旬から入院、リハビリ治療(パーキンソン症状が悪化したため)、3月末に施設入居になりました。
その間、父は自宅で介護サービスを一切拒否、ほとんど家に立てこもっているような状態です。最初のケアマネさんとは喧嘩別れ、二人目のケアマネさんは拒絶、で、今三人目のケアマネさんをお願いしているところです。母は認知レベルがどんどん落ちて、自宅に帰るのは無理だと言われつつも、ちゃんと病院や施設のお世話になっておりますが、父は医療も介護サービスも何も受けていない状況で、このままではさすがにあかんやろうと思っています。

ー 私の介護体験談 ー

「家族の会」との出会いが私の介護を支えてくれた千葉県支部 80歳代

妻の参加で適切なアドバイスを受ける

流山市の介護家族の会「コスモスの会」での先輩介護者の発言や情報は、不安を抱えていた介護の初心者の私にとって、介護とは何かを考える上で大いに参考になった。この会に助言者として参加していた認知症の人と家族の会千葉県支部の世話人の方からさまざまなアドバイスを頂いた。その数年後から千葉県支部の「家族の会」に参加するようになったが、私の疑問や質問に対するアドバイスは、必ずしも満足のいくものではなかった。それは口頭で状況説明をしても伝わらないものがあったからである。そこで、「本人家族交流会」に妻を連れて参加した。その後、妻との参加は妻が歩行困難になるまで続いた。「聞く」と「視る」の差は歴然で、私は適切なアドバイスを受けることができた。回を重ねるにつれ感想文や体験記の作成·発表を依頼されるようになった。

身近な相談場所を探すことの大切さ

地域の家族会には、市主催の「コスモスの会」の他にも、高齢者何でも相談会主催の会がある。私は「東部 高齢者何でも相談室」の「あじさい広場〜認知症の方を支える介護者のつどい〜」にも参加している。また、ミニ講座なども地域の公民館や福祉会館で開催され、介護家族が参加しやすいようになっている。最初のころは男性介護者の参加は少なかったが、全国的に男性介護者が増えてきた頃から、時には大半が男性介護者として、今までの経験を伝えることで、お役に立てるのではないかとの思いで参加している。

孤独にならず孤立しないために

このような介護者の集まりは、地域の自治体や民間の家族会などが中心となっていくつも開催されている。参加している介護者は孤独にならず、孤立することもなく、情報も得られ、また何より介護者自身健全に介護ができる知恵が得られる。このことを多くの介護者に知っていただきたいと思っている。
最後に、東部には「認知症とともに暮らすまちづくりの会」があった。認知症に興味関心がある地域住民、介護しているご家族、民生委員やケアマネジャーなど認知症にかかわる活動をしている方々が、主宰者のO医師の人柄にひかれて参加するユニークな会であった。残念ながら、今年の1月にO医師の急逝で8年の歴史が幕引きとなった。私はスタート時より参加していた。「認知症の診断後の医師の対応は、生活の視点が欠けていて不満を感じることがある。診断後の対応は地域包括支援センターと連携し、アドバイスをしていただけると本人も安心では」と、提言をしていたことが懐かしい思い出となった。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。