体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2022年9月号(506号)

ー お便り紹介 ー

認知症になっても堂々と暮らしていける社会に…岡山県・Aさん

母(90歳)は嗜銀顆粒(しぎんかりゅう)性認知症と診断されて約7年経ちました。薬は状態の変化とともに少しずつ増えていますが、そのおかげで進行は緩やかであるように思います。私は最近離職し、時間のゆとりができ、母の世話が充分できているとはいえ、母は窮屈かもしれません。
私が母の症状が気にならなくなったのかもしれませんが、やはり余裕が一番。母は自由がきかない身体でありながらも少しでも自分のことは自分でしたい意地があり、娘の役に立ちたいとの思いもあるようです。昔のことを思い出し、ボツボツ話す今の生活が少しでも長く続くように願っています。
当たり前のことでしたが、BPSD(※)は周りの対応で改善できると、本人の表情が穏やかになったことで実感している今日この頃です。自宅で介護し、他の人に頼らず悩んでいる男性介護者にもこの会のことを紹介しています。認知症になっても偏見を持たれず、堂々と暮らしていける社会にならないと、私も長生きが不安になります。

(※)…行動・心理症状の略称。周囲の対応の仕方や身体の不調や不快、ストレスや不安などの心理状態が原因となって現れる症状のこと。

ねぎらってもらうだけで…島根県・Bさん 女

20年余り、アルツハイマー型認知症の母を介護して、苦しい時、つらい時「家族の会」で聴いてもらい、「大変だね」とねぎらってもらうだけで頑張る「力」をもらいました。怒りの気持ちをやさしい気持ちに変えてもらって、介護を頑張ってこられました。「家族の会」に誘ってもらい、明日からも頑張ろうと思え、なんとか介護できました。その母も1月に亡くなり、寂しい毎日を過ごしています。

ズーッとこのままいくのか?青森県・Cさん 男

やるせない心境をどこにぶつけたらいいのか?一向に収まらないコロナ禍ではあるが、withコロナでこれからもズーッとこのままいくのか?
ちょうどコロナ流行の頃入院し、面会ができず、施設に移ってからも、アクリル板越しの面会。とうとう今年からはそれもできなくなり、どうしたらいいものか…。腑に落ちないのは、リモートができてガラス越しはできないこと。職員との行き来からしてみても、よっぽどガラス越しの面会の方が安全と思う。また、条件付きでの面会を再開している施設もあると聞いている。
高齢になると、直接会うのが何よりの薬になるのではないか?私と同じ意見をお持ちの方もいると思う。但し、日頃の職員の苦労と大変さは常々感謝しています。

ー 私の介護体験談 ー

「認知症の母と…」長崎県支部 50歳代

50年間新聞配達を続けてきた母が…

今、81歳の母の異変に初めて気づいたのは2年前。やかんは火にかけたまま、冷蔵庫には同じ食材が並び、探し物も多くなりました。深夜の12時前に起きて朝ご飯を作り始めたのもこの頃からです。「まだ、夜中なのに!眠れないから早く寝て!」ついきつい口調で怒り、無理やり寝かせても、すぐ起きてくる。その繰り返しでした。
家は新聞屋で、50年間続けてきた新聞配達にも少しずつ支障が出てきました。特に雨の日はパニックで、配れなくなってしまうのです。原因も分からず、日に日に変わっていく母の姿に辛い日々を過ごしていました。そんな時に同級生に親の悩みを相談されたのがきっかけで、地域包括支援センターを知り、自宅に来ていただきました。話を聞いてもらえる場所があることにホッとしたのを覚えています。診察も勧められ、アルツハイマー型認知症と診断されました。まさか母が認知症に、その日から私は認知症について調べ、周りの人にも相談をしました。『おれんじカフェ』にも母と参加しました。そこで母は、大好きな手芸や会話を楽しみ、表情もイキイキと明るく変わっていきました。介護経験のある人に「怒ったらだめよ!もっと大変になっていくだけよ。お母さんに合わせてごらん。気持ちが楽になるよ」とアドバイスをいただいたり、もっと大変な思いをしている人たちもたくさんいることを知りました。また、認知症という病気がそうさせているのだから一番不安で辛いのは母なんだ、なるべく母の側にいてあげようと思えるようになりました。

母が認知症になって気づいた大切なこと

あれから2年。現在も母の認知症は少しずつ進行していますが、いろんなアドバイスと工夫で夜はよく眠ってくれるようになり、朝の新聞配達も元気に続けています。時には、配り忘れもあります。そんな時は、お客さんが新聞を取りにきてくれて「お母さんには言わないでね」「ずっと配達は続けさせてね」と優しく声をかけていただき、皆さんのあたたかさに胸が熱くなる毎日です。
母と夕方、犬の散歩をすることも始めました。毎日の日課になったことで朝と夜が逆転していた母が、散歩=夕方と分かってくれるようになりました。散歩中の話題はいつも同じですが、楽しそうに話す母が今では微笑ましくもあります。母が認知症になったことで気づいたことは、周りの人に相談することの大切さです。なにより地域の人たちとのつながりに助けられました。私も今までの経験を伝え、誰かのお役にたてたらとの思いで『おれんじカフェ』に参加しています。
同じ悩みを抱える方々が、大切な人と笑顔で穏やかに過ごせる日が来ることを願って…。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。