体験談〜本人の声、家族の声〜

認知症の人と家族の会 
会報誌「ぽ〜れぽ〜れ」

2024年1月号(522号)

ー お便り紹介 ー

おかんとの一日熊本県・Hさん 男

会社勤めを62歳で退職し、熊本でひとり暮らしのおかんを支えるために、札幌の自宅に妻と猫2匹を残しての単身介護生活を始めて4年が過ぎた。そのおかんも今年95歳、食欲もありよくしゃベり、アルツハイマー型認知症の進行以外は元気そのものだ。
昔のことは覚えているが、今日したことや言ったことがすぐ頭から消えてしまうおかん。私との会話内容の種類もだんだんと減ってきて、今では数パターンになってしまった。しかも、ついさっきおこなった「言った行為」そのものを忘れるので、聞き手からすると同じ話を何回も我慢しなければならない羽目になる。でもおかんからすればすべてが最初の会話内容なのだ。「そんなのにこにこ笑って適当にあしらっておけばいいのに」と思う方、それを4年続けられる人間は普通いませんから。もう最近は無視するか「ははは」と笑うか、または「うん」「ああ」と声を出す程度が関の山だ。うちのおかんはそれに加えて自分史の歴史年表もぐっちゃぐちゃになってしまっていて、おかんの日課の「縁側での思い出浸り」でも、死んだ人が生き返ってみたり既婚者が独身になってみたりの変幻自在、歴史の歪曲。
ただ、そんなおかんの状況を私が都合よく利用させてもらっているのもまた事実だ。私はおかんの暮す基地から自転車で8分のアパート住まいをしているのだが、タ方片付けが終わっておかんの基地を出る時には必ず「用事で出かける。明日の昼過ぎに戻る」旨の書き置きを残していく。そして次の朝5時には基地に戻って炊事や洗濯など家事を済ませたうえで7時半に仕事に出かけるのだが、おかんが起きてくる前にその書き置きを処分しておきさえすれば、何事もなく「オハヨー」と一日が始まっていくのだ。

お母ちゃん、ごめんなさい岡山県・Aさん 女

母は92歳になりました。診断を受け8年。維持もやる気も出張も多く、よく喧嘩しました。私は母の介護を理由に2年前に退職しました。それまでの仕事での経験で知識もあり、何とかやれると思っていた。
同じ家で二人、ただ居るだけで何ともうとましく息苦しく、腹立たしく常にイライラして穏やかでいる方が少なかった日々……。
最近、不安、気弱が増え少し小さくなった母「どうしたらいい?トイレ行ってもいい?ここに帰ってきていいんかなぁ……?」私に敬語を使ったりして、そんな母に対して、どうしてもっと前からやさしい思いでいなかったんだろう。私こそ、ここにいいんですか?と聞きたい気持ちです。
お母ちゃん、ごめんなさい。

1分前の記憶がありません兵庫県・Bさん 女

私が母の記憶障害に気づいてから7年、認知症との診断から6年、レビー小体型認知症との診断から5年が経ちました。当初、母と一緒に暮らしていた兄は「家事もできているしまだ全然大文夫だ」と繰り返しました。母は5分前のことを覚えていなくても、何とか家事はこなしていましたが、冷蔵庫の中は入りきらないほどの食材、戸棚の中からは大量の砂糖やパン粉、きれい好きだった母の部屋の中央にはどんどん物が積み上げられていました。それでも、仕事から帰ってきたら夕食が用意されているのを見て、兄は「全然大文夫」と繰り返しました。母と些細な会話をしない兄は、母が5分前の記憶すらないという私の話を信じませんでした。
2019年に母を我が家に引き取りました。父が母の物忘れに我慢できず、手を挙げることが何度かあったためです。母は元来とても穏やかな人なので、認知症になってもそのままの穏やかな性格で、今では1分前の記憶も消えてしまいますが、「今現在」だけはわりと普通に会話ができます。それでも一緒に暮らす家族の負担は大きいです。良かれと思って母が何かを「やってくれようとしたこと」は、必ず物の行方不明に繋がります。つきっきりで目を離さなければ大きな問題は起こらないともいえるのですが、現実問題として「つきっきりで目を離さない」ことが不可能なのです。1分前の記憶が消えるというのがどんなことなのか、体験して初めてわかりました。何もしないで座っていてくれたらよいのにと思うのですが、ずっと家族のためにきちんと家事をこなしてきた母は、家の中で何もせずに座っていられないのです。平日はショートステイ利用で、金曜の夜から月曜の朝まで自宅で過ごしていますが、私としては休日も心身休まらず、母との対応、これからのこと、疲れ切ってしまうことがあります。

精一杯、妻を支えていきます神奈川県・Dさん 男

現在、妻は忘れることが多かったり、同じ質間を繰り返したり、メモがなくては買い物ができなかったり、同じ品物を重複して購入したりすることがあります。しかし、それ以外は家事全般・日常生活はほとんど問題なくできております。毎日、新聞の「数独やクイズを解いており、パソコンで家計簿もつけております。
病院の先生の「薬を飲まないという選択肢もあり」との説明も踏まえ、今しばらくは、妻も私も一部の薬の服用を見合わせたいと思っております(かかりつけ医師もそういう選択肢もありでしょう、とおっしゃっていました)。最近、妻と会話をしながら昔飼っていた犬との散歩コースを歩き、彼女の記憶を呼び戻すようにしています。
私は右も左もわからない上、体調も万全ではありませんが、精一杯妻を支えていくつもりです。つきましては、今後アドバイスなどをたまわりたくお願い申し上げます。

※ 会員様からのお便りを原文のまま掲載しております。