認知症の基礎知識
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認知症の人の自尊心を大切にするには?

事実と違っていても否定する対応をしない

認知症になってこれまでできていたことが一つ一つできなくなると、家族や周囲の人は“認知症だから何もできない”と決めつけてしまいがちです。
認知症の人は直前の記憶を失っているだけで、感情は普通どおりにあります。褒められれば嬉しいし、叱られれば悔しい。役に立たないと言われれば悲しくなります。人間なら誰でも持っているこの感情は以前とまったく変わりません。
介護する家族や周囲の人は、この点を踏まえて上手に接する必要があります。

確かにできないことは増えたかもしれませんが、認知症になってもできることはたくさんあります。「できないこと」よりも「できること」を一つでも多く見つけて褒め、応援しましょう。

また本人の記憶が曖昧で間違ったことを言った時に、ご家族は「事実をわかって欲しい」「わかるはずだ」との気持ちから、論理的に指摘したり、ストレートに訂正したりしてしまうことがあります。しかし本人は自分が何をしたのか忘れてしまっているので、なぜ叱られているのか、なぜ間違っていると言われるのか、なかなか理解することができません。「自分は悪いことをしていないのに、なぜこんなに叱られるのだろう」と、不満ばかりが膨らんでいきます。いつも叱られたり、注意されたりすると、その人に対してネガティブな感情を持ったり、本人がうつ状態になったりすることが多々あります。

本人の話が事実と違っていたとしても、まずは、否定しないで、「そうね」などと話を合わせてみてください。たいした間違いでなければ大目にみる、どうしても訂正が必要な場合だけ、にこやかに、穏やかな口調で簡潔に説明してみましょう。なお、認知症の人がやけに乱暴な言動をとるときは、「思うように言葉が出てこない」「意思が伝わらない」「バカにされている」と感じていらだっていることが多いものです。その場は優しく受け流して、どうすればいらだちがやわらぐのか、原因はどこにあるのか、本人の立場になって考えてみましょう。

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