認知症の基礎知識
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認知症の治療法にはどのようなものがある?

薬物療法やケアで進行を遅らせることが可能です

現在のところ認知症を完全に治す方法はありませんが、薬物療法リハビリテーション、適切なケアを行うことによって進行を遅くしたり、症状を軽くしたりできる場合もあります。ある程度進行を遅らせておくことができれば、家族は病状が進行した時に備えて介護体制などについて準備を進められるなど時間や気持ちに余裕が生まれます。また、症状を抑えられれば、本人が穏やかに生活できるばかりでなく、介護者の負担も軽くなります。

薬物治療に主に使われているのは、抗認知症薬です。認知症全体の6割以上を占めるアルツハイマー型認知症は、抗認知症薬で症状の進行を遅らせることが可能です。日本では1999年に初めての抗認知症薬として塩酸ドネぺジルが発売され、この一剤のみという時代が続きましたが、2011年にガランタミンリバスチグミンメマンチンの3剤が新たに発売され、現在は4剤が使えるようになっています。塩酸ドネぺジルはレビー小体型認知症にも効果があると認められ、2014年からは健康保険適用が拡大されました。
また、興奮や徘徊などのBPSDが激しいときには、抗精神病薬や抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬などを使うこともあります。

なおリハビリテーションには、脳の各部の機能低下を抑えるための書き取りや計算、音読のほか、残された脳の機能に刺激を与えて活性化させる「回想法」や「音楽療法」、「芸術療法」など、さまざまな方法があります。

また治療と同じくらい重要な役割を果たしているのが、ふだんの生活における家族の対応です。認知症特有の行動に対して、つい本人を叱りつけてしまいがちですが、本人が不安になるばかりでなく、症状も悪化します。認知症という病気を十分に理解したうえで、適切な声かけや接し方をするようにしましょう。