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地域カンファレンス in 群馬 認知症の人の思いから始めるまちづくり

概要

ー クリップ 1 地域の支え合いと見守り ー

「認知症の人の思いから始めるまちづくり」をテーマに、地域カンファレンス in 群馬が開催されました。ゲストは2年前にアルツハイマー型認知症と診断された高橋行男さん(74)と施設で生活支援をしている目崎智恵子さん。高橋さんは住み慣れた高崎市内の団地で暮らし続けながら、日中は近所の地域支え合いセンターを利用。隣接する介護施設に入所している妻、愛子さんの顔を見に行くのを楽しみにしています。少しずつ症状が進み、出かけると自宅に帰れなくなることも増えていますが、近所や施設の人たちがさりげなく見守っています。地域の清掃など、生き生きと役割をこなす高橋さん。高橋さんを支えてきた目崎さんは「地域の中にごく自然に溶け込んでいます」と話しました。(14:48)

ー クリップ 2 認知症専門医山口晴保さんによる認知症医療の解説 ー

「群馬大学教授で認知症専門医の山口晴保さんが、認知症の医療についてわかりやすく説明しました。「認知症になると、時間、場所、人とのつながりがそれぞれ分断されてしまう」と山口さん。たとえば時間のつながりが分断されることで起こるのは、記憶の障害です。年を取るとよくもの忘れをすることがありますが、認知症の場合はごく一部が思い出せないわけでなく、体験したこと自体を忘れてしまうのです。一方、高崎市で長年認知症の人の訪問診療をしている医師の大澤誠さんは、「イライラや不安といった心の症状は体の不調が原因であることも多い」と話し、抗認知症薬や漢方薬の上手な使い方について説明しました。また日々をここちよく過ごすために、リハビリテーションが効果を発揮することなども紹介されました。(13:13)

ー クリップ 3 群馬県の地域包括ケア(沼田市・前橋市) ー

現在群馬県では、認知症の人や家族を、医療、介護、行政、地域などが一丸となって支える地域包括ケアが進められています。医療が地域と関わろうと努力している事例として、沼田市の内田病院に開設された「いきいきラウンジ」を紹介。病院の入院・通院患者にかぎらず地域住民なら誰でも参加でき、笑いヨガや書道教室などさまざまなプログラムを通して住民同士が交流を深めています。一方、前橋市内で認知症の人の診療を続けてきた内科医の小中和子さんは、NPO法人を設立し、診療所に併設する老人保健施設内に認知症カフェを開設するなどの活動をしてきました。認知症の人や高齢者の居場所をもっと増やしたいと考え、空き家を利用したサロンを作ることを自治会などに提案。実現に向けて連携する様子が紹介されました。(15:29)

ー クリップ 4 認知症の人や高齢者の居場所づくり ー

住民が主体となって認知症の人や高齢者の居場所づくりを進めている事例を紹介します。高崎市金井淵区では、昨年5月、地域住民の要望で介護施設が作られました。介護施設には、地域支え合いセンターを併設。認知症の人の居場所としての機能だけでなく、住民同士が交流し、互いに支え合う拠点になっています。一方、玉村町では3年ほど前から公民館や農業ハウスなど既設の地域資源を活用し、住民の居場所となるサロンを開催してきました。企画や運営には住民が自発的に参加しています。現在こうした「居場所」は、13カ所に増えました。行政主導ではなく、「誰もが暮らしやすい町を自分たちの手で作っていこう」という前向きな活動が広がっています。(15:03)

ー クリップ 5 パネリストの皆さんからのメッセージ ー

みどり市東町では過疎化が進み、バスの運行が激減。車が運転できない高齢者が診療所や買い物に行けるように、東町と隣接する黒保根町の住民が有償ボランティアで送迎をしています。高齢者が住み慣れた自宅で生活を続けるために不可欠な活動になっていますが、支える側の住民も高齢化し、存続が危ぶまれています。会場ではこうした様子を動画で紹介。パネリストたちがそれぞれの立場から感想を述べ、前向きな発信をし、地域カンファレンスin群馬は閉幕しました。年をとっても認知症になっても、住み慣れた地域で生活を続けるには何が必要なのか、自分が地域にどう貢献できるか。ひとりひとりが自分自身の問題として考え、みんなで知恵を出し合っていくことが求められているのです。(13:47)

【2016年8月17日公開】

出演者

山口 晴保(やまぐち はるやす)さん

群馬大学大学院保健学研究科 リハビリテーション学講座 教授

神経病理学、神経内科学、生活を診るリハビリテーション医学に携わる。誰もが笑顔になれる医療・リハビリ・ケアを目指している。

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大澤 誠(おおさわ まこと)さん

医療法人あづま会 大井戸診療所 理事長・院長

大井戸診療所を開業し、老年精神医学の視点から認知症の人を中心とした医療に取り組む。多職種連携を図りながら、在宅支援に力を注いでいる。

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田部井 康夫(たべい やすお)さん

認知症の人と家族の会 副代表理事・群馬県支部 代表

うつ病に認知症が加わった母を看取る。認知症について経験と知識を持ちながら、うまく出来なかった家族介護の体験が介護を考える原点であり、永遠のテーマだと思っている。

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髙橋 行男(たかはし ゆきお)さん

高崎市内に夫婦二人で暮らしていた2年前、認知症と診断。同時期に認知症と診断された妻が介護施設に入ったために離れ離れに。夫婦での暮らしを取り戻したいと考えている。

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田中 志子(たなか ゆきこ)さん

医療法人大誠会 群馬県認知症疾患医療センター 内田病院 理事長

認知症専門医として、認知症の人や家族の暮らしを立て直すことを大切にし、本人や地域住民がともにいきがいを持って暮らせる居場所づくりにも取り組んでいる。

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小中 和子(こなか かずこ)さん

医療法人健英会 こなか医院 内科医、NPO法人ながいきコンシェルジュ 理事長

町の診療所として長年地域医療に取り組んできた今、認知症の人に優しいまちづくりを目指してNPO法人を設立。住民と顔の見える関係づくりから始めている。

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目崎 智恵子(めさき ちえこ)さん

認定NPO法人じゃんけんぽん 生活支援責任者

地域の課題解決に向けて、居場所づくりをはじめ、高齢者に限らぬ生活相談にも応じる。自らも地域の一員として、住民同士が助け合えるまちづくりに力を注いでいる。

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塚越 光男(つかこし みつお)さん

元金井淵区長

区長として13年務めた経験を活かし、地域住民と行政、民間施設の橋渡し役として、急速な高齢化が進む地域の再生に尽力している。

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岩谷 孝司(いわたに たかし)さん

玉村町役場 健康福祉課 高齢政策係 係長・地域包括支援センター 職員

住民主体の地域づくりを進めようと、誰でも通える集いの場「ふれあいの居場所」設立に力を注ぐ。認知症の人も地域の一員としてふらっと立ち寄れる居場所にしたい。

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小池 康雄(こいけ やすお)さん

玉村町「ふれあいの居場所ふれんど」代表

健康・仲間づくり・社会参加をモットーに、玉村町の板井西部公民館にてサロン活動を展開。住民同士の顔なじみの関係から生まれる「共感からの支え合い」を育みたい。

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恩田 初男(おんだ はつお)さん

NPO法人お互いさまネットワーク 理事長、群馬県地域密着型サービス連絡協議会 会長

介護保険ではカバーできない暮らしの支援(通院・買い物など)を住民ボランティアが行う「生活支援サービス」を15年前に開始。誰もが笑顔で生活できる地域を目指している。

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尾池 久美子(おいけ くみこ)さん

群馬県健康福祉部 医療介護局介護高齢課 認知症対策主監

「認知症の人と家族が安心して暮らせる体制整備の推進」を目標に、認知症の人と家族に優しい地域づくりを目指し施策に取り組んでいる。

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町永 俊雄(まちなが としお)さん

福祉ジャーナリスト

1971年NHK入局。キャスターとして教育、健康、福祉といった生活に関わる情報番組を担当。現在はフリーの福祉ジャーナリストとして活動を続けている。

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