介護者が苦慮することが多いのはBPSDです
認知症の症状には「中核症状」と呼ばれるものと、「BPSD(行動・心理症状)」と呼ばれるものがあります。かつてBPSDは、中核症状に対して「周辺症状」と言われてきましたが、近年は「BPSD(行動・心理症状)」という名称が一般的になりつつあります。
「中核症状」は脳の神経細胞が壊れることによって、直接起こる症状です。
具体的には、直前に起きたことも忘れる記憶障害、筋道を立てた思考ができなくなる判断力の障害、予想外のことに対処できなくなる問題解決能力の障害、計画的にものごとを実行できなくなる実行機能障害、いつ・どこがわからなくなる見当識障害、ボタンをはめられないなどの失行、道具の使い道がわからなくなる失認、ものの名前がわからなくなる失語などがあります。
認知症になれば誰にでも、中核症状が現れます。
一方、周囲の人との関わりのなかで起きてくる症状を「BPSD」といいます。BPSDは「認知症の行動と心理症状」を表わす英語の「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字を取ったもの。暴言や暴力、興奮、抑うつ、不眠、昼夜逆転、幻覚、妄想、せん妄、徘徊、もの取られ妄想、弄便、失禁などはいずれもBPSDで、その人の置かれている環境や、人間関係、性格などが絡み合って起きてくるため、人それぞれ表れ方が違います。
BPSDがほとんど現れない人もいる一方で、かなり激しくBPSDが出てしまうこともあり、介護者が対応に苦慮する症状の多くは、中核症状よりもBPSDと言えるでしょう。
BPSDの背景には、必ず本人なりの理由があります。行動の背景にある「なぜ」を考え、本人の気持ちに寄り添った対応をすることで、症状を改善できる場合も少なくありません。