クリップ
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1
出演者のみなさん 認知症とのかかわり
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2
認知症の基礎知識
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3
認知症の治療薬
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4
BPSDと漢方薬
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5
パーソンセンタードケア 本人の気持ちを読み取る
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6
ケーススタディ
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7
認知症の在宅ケア ザイタックスの取り組み
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8
医療が地方のコミュニティの中へ
概要
ー クリップ 1 出演者のみなさん 認知症とのかかわり ー
認知症対策の第一線で活躍する4人のパネリストたちが、医療や介護、家族の立場から認知症とのかかわりについて語りました。認知症専門医で、ケアネット研究会の事務局長を務める内山剛さんは、診断技術や薬物治療が進歩している現状を報告。健康保険佐久間病院・院長の三枝智宏さんは、佐久間町で地域医療に取り組んできた経験から「高齢化率が50%を超え、高齢者世帯が増えている。認知症になった人を地域でどう支えるかが課題」と話しました。介護の立場からは、施設を運営する池谷千尋さんが参加。「2000年に施設を立ち上げたときは、症状と格闘していましたが、12年経った今、症状もメッセージのひとつなんだと思えるようになりました」と振り返りました。アルツハイマー型認知症の母親を在宅で3年間介護している小林ふじ子さんは「几帳面な母が認知症だとわかった時には大変なショックでした」と話してくれました。(3:06)
ー クリップ 2 認知症の基礎知識 ー
認知症を早い段階で発見するためには、症状を知っておくことが大切です。最も気づきやすい症状のひとつが「もの忘れ」ですが、認知症のもの忘れは、記憶の帯自体が抜け落ちて日常生活にも支障が出るなど、年のせいによる自然なもの忘れとは違った特徴があります。認知症の人の脳で生じる変化をMRIの画像を示しながら説明。さらに、認知症には最も多いとされるアルツハイマー型以外にも、レビー小体型や脳血管性認知症などさまざまな原因疾患があること、原因疾患によってはもの忘れ以外の症状が目立つこともあることなど、早期発見に役立つ情報がたくさん盛り込まれました。(4:04)
ー クリップ 3 認知症の治療薬 ー
認知症の治療は抗認知症薬を使う薬物療法が中心になります。2011年からは新薬も含めた4種類の薬が使えるようになり、治療の選択肢が広がりました。ただし副作用が生じることもあるため、経過を見ながら適切な薬を使用していくことが大事です。薬で認知症を完全に治すことはできませんが、早い段階から適切な治療やケアを開始することで病気の進行を抑えられるようになっています。さらに、「感情表現が豊かになる」「意思表示がはっきりする」「自発性や周囲への関心が高まる」といった効果が期待でき、長い期間安定した状態を保つことが可能になりました。(3:27)
ー クリップ 4 BPSDと漢方薬 ー
認知症の症状は、中核症状と周辺症状に大別できます。中核症状は認知症になれば誰にでも現れる症状ですが、周辺症状(BPSD)は人によって現れ方がさまざまで、対応も難しいことから、介護する家族には大きな負担となっています。BPSDには何らかの原因があり、それを取り除くことで、症状を改善できる場合もありますが、薬物療法を併用することも少なくありません。近年は、BPSDの有力な治療法のひとつとして漢方薬を使う機会が増えています。中でも抑肝散という薬は、イライラや不安などの精神症状を抑える効果が高いと期待されています。(5:37)
ー クリップ 5 パーソンセンタードケア 本人の気持ちを読み取る ー
「認知症の人は何もできない、何もわからない」と考えてしまいがちですが、実際にはできることはたくさんあり、意志や感情も残っています。アルツハイマー型認知症の母親を介護している小林ふじ子さんは「母はああしてほしい、こうしてほしいとは言わないので、家族など周囲の人が心の引き出しをそっと開けてあげることが必要」と話します。思いがつながったとき、お母さんはとてもいい表情をするそうです。近年は、本人の気持ちを想像し、希望に沿って介護する「パーソンセンタードケア」が導入されるようになりました。さらに、本人の人生観や今まで生きてきた軌跡を共有しようと努力することが大切なのです。(2:45)
ー クリップ 6 ケーススタディ ー
家族が対応に困るBPSDの中から「もの盗られ妄想」と「徘徊」を例に取り、対応策についてパネリストたちが意見を出し合いました。もの盗られ妄想はいつも介護をしている家族など本人にとって一番身近な人に、疑いが向けられるため、家族はとてもつらい思いをするものです。パネリストの小林ふじ子さんも、母親のもの盗られ妄想に悩まされました。「対応のコツは否定しないこと」とアドバイスします。また、徘徊を繰り返す人は「自宅にいても『ここは自分のうちではない』と思っているかもしれない」と三枝さん。安心できる本人の居場所について今一度考える、という視点も必要だと話しました。(3:58)
ー クリップ 7 認知症の在宅ケア ザイタックスの取り組み ー
認知症になった人を在宅でケアするために「ザイタックス」という新しい指標が登場しています。ザイタックスの作成にかかわってきた内山さんは「介護保険はマイナス点を評価することが多いですが、ザイタックスは本人ができることにも目を向けて評価していくもの」と説明。本人のできること(プラス)とできないこと(マイナス)を相殺してゼロになった時に在宅は可能と考えるのです。池谷さんは「家族はいろいろなことを抱え込んで、行き場をなくしてしまう。思いが強ければ強いほど周囲に弱音を吐かないので、数値化することで状態を把握できるザイタックスは、とてもいいシステムだと思います」と話しました。(2:54)
ー クリップ 8 医療が地方のコミュニティの中へ ー
認知症になると家族が一緒に暮らしていても大変ですが、独居の高齢者の場合はさらに厳しい状態になります。とりわけ地方は高齢化率が高いため、独居の高齢者が認知症になったときに、地域や医療のサポートのあり方が大きな課題になっています。浜松市佐久間町は小さな集落がたくさんあり、住民同士が支え合う会を作っていますが、佐久間さんたち医療者もその会に参加しているそうです。三枝さんは「医療が継続して根付いていくためには、よそから持ち込むよりも、中から起こってくるというプロセスがとても大事」と話しました。(1:45)
【2013年1月7日公開】
出演者
内山 剛(うちやま・つよし)さん
ケアネット研究会 事務局長
浜松医科大学卒。浜松難病ケア市民ネットワーク「ケアネット」に参加、認知症患者の支援にも取り組む。現・聖隷浜松病院神経内科部長。
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三枝 智宏(さえぐさ・ともひろ)さん
浜松市国民健康保険佐久間病院 院長
自治医科大学卒。全人的医療や地域包括ケアの実現に取り組み、地域のあり方を模索している。老年病専門医、プライマリ・ケア認定医。
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池谷 千尋(いけたに・ちひろ)さん
有限会社池ちゃん家・ドリームケア代表取締役
2000年、宅老所「池ちゃん家」を開所。現在、各所にデイサービスなどを展開中。介護は「その人をみること」が肝要だと考えている。
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小林 ふじ子(こばやし・ふじこ)さん
認知症の人と家族の会 静岡県支部・藤枝分会 ほっと会
昨年、実母が脳画像診断によってアルツハイマー病と判明。介護には家族の支え、公的支援、周囲の人々の理解が大切だと思っている。
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