クリップ
概要
ー クリップ 1 出演者のみなさん 認知症とのかかわり ー
心療内科医として認知症の治療に取り組んできた長友さんは、「医師になったばかりの30年前は、認知症を治療する手立てがなかった。今ある4つの薬をいかに上手に使っていくかが医療の課題」と話しました。奄美大島の龍郷町地域包括支援センター次長の満永さんは「認知症になってもできることはたくさんある。地域で心豊かに生きることができるような支援が必要」と強調。認知症になった家族を介護した経験をもつ水流さんは、病気を隠して苦しむ家族が多いことに触れ、社会全体で本人と家族を支えていくことの重要性を訴えました。(3:24)
ー クリップ 2 認知症の基礎知識 ~原因疾患とその特徴~ ー
認知症を早期発見するためには、症状を知っておくことが大切です。もの忘れも主な症状の一つですが、「年のせいによるもの忘れ」とは異なる特徴があります。認知症の人の脳で生じる変化についても、MRIの画像を示しながら説明しました。また、認知症にはさまざまな原因疾患のうち最も多いのは、アルツハイマー型認知症で、全体の半数を占めています。二番目は脳血管性の認知症ですが、最近はレビー小体型認知症や前頭側頭型認知症も増えてきています。それらの症状の特徴についても説明しました。(4:50)
ー クリップ 3 認知症の診断・治療 ~医療と介護の連携~ ー
認知症では正しく病気を診断することが、治療の第一歩になります。認知症の疑いがある場合には、問診、認知機能テスト、画像といった検査が行われますが、中でもSPECTという検査法は、脳の血流の状態を画像上で確認できるため、原因疾患まで診断することが可能です。認知症と診断された場合、治療の基本は薬物療法で、現在は4種類の薬が使えるようになりました。しかし薬で認知症を完全に治すことはできないため、早い段階から適切なケアを併用して症状を少しでも改善することが大事です。(5:01)
ー クリップ 4 認知症の症状 ~中核症状と周辺症状(BPSD)~ ー
認知症の症状は、中核症状と周辺症状に大別できます。中核症状は認知症になると誰にでも現れる症状ですが、周辺症状(BPSD)は人によって現れ方がさまざまで、家族は対応に苦慮することが少なくありません。かつては力で押さえつけることが多かったBPSDですが、近年は回想療法や音楽療法といった非薬物療法で症状を改善しようという流れに変わってきています。また、漢方薬もBPSD対策のひとつとして使われており、中でも抑肝散という薬は精神症状を抑える効果が高いと期待されています。(4:38)
ー クリップ 5 地域資源と見守りネットワーク ~認知症の人を地域で支える~ ー
鹿児島の島々では、住民同士が助け合いながら生活してきましたが、介護保険などの公的サービスが導入されたことによって「昔ながらの結びつきが希薄になる」という新たな問題が危惧されています。高齢者は公的サービスだけでは賄いきれない困りごとをたくさんかかえているため、島の生活の中で生み出された相互扶助の関係は欠かせないものなのです。奄美大島の龍郷町ではこうした問題を解決するため、「支え合いマップ」の手法を導入し、地域資源を活用する取り組みを始めています。また、離島では「認知症専門医がいない」ということも大きな問題で、医療も含めた地域ネットワークの構築が求められています。(4:28)
ー クリップ 6 パーソン・センタード・ケア ~ケーススタディ~ ー
「認知症になると何もできなくなる」と考えてしまいがちですが、実際にはできることはたくさんあり、意志や感情も残っています。近年は、本人の気持ちを想像し、希望に沿って介護する「パーソンセンタード・ケア」が導入されるようになりました。パーソンセンタード・ケアの考え方や手法は、施設などの介護職だけでなく家族も活用できるものです。会場では、「徘徊」「もの盗られ妄想」の2つの事例を挙げて、説明しました。(4:33)
ー クリップ 7 認知症 鹿児島からのメッセージ ー
「認知症になってもだれもが安心して暮らせる社会を作りたい」と水流さん。そのためには、家族が認知症を隠さないことや本人だけではなく家族も支援していくことが不可欠といいます。満永さんは「気づき」の大切さを強調。ちょっとした変化を見逃さず次につないでいくこと、一人で抱え込まずに相談できるようなネットワークを作っておくことが大事だと話しました。長友さんは「早期発見、早期治療が基本」と指摘します。そのために「周囲は認知症の正しい知識を持ちましょう」と語りかけました。(3:24)
【2011年12月20日公開】
出演者
長友 医継 (ながとも・いつぎ)さん
医療法人玉水会病院 心療内科 医師
長崎大学医学部卒業。医学博士、認知症サポート医。鹿児島大学医学部神経精神科助手、ニューヨーク州立大学、鹿児島大学医学部神経精神科助教授を経て、現職。
プロフィールを表示
満永 たまよ (みつなが・たまよ)さん
龍郷町役場 地域包括支援センター次長、保健師
看護師として活躍した後、龍郷町役場で保健師に。1999年、介護保険制度導入の立ち上げに携わり、行政・介護・地域住民との相互の基盤作りに尽くす。2006年より現職。
プロフィールを表示
水流 凉子 (つる・りょうこ)さん
認知症の人と家族の会 鹿児島県支部代表
鹿児島市社会福祉協議会に32年間勤務。認知症の義母を20年間、同時期に両親を約3年介護し、看取る。現在は、地域での認知症啓発やネットワーク構築のための活動に従事。
プロフィールを表示